セイコー プレザージュ Sharp Edged Seriesをレビュー。出世を祝う“麻の葉”紋様はビジネスユースにぴったり!

FEATUREインプレッション
2023.04.10

鍛え抜かれた信頼性を誇る、セイコーの主力ムーブメントを搭載

 裏蓋はシースルーになっており、内部のムーブメントを鑑賞することができる。搭載するムーブメントは、自社製の機械式自動巻きであるキャリバー6R35だ。ローターには装飾が与えられているものの、その下に見える受けや地板の仕上げは、必要最低限にとどまっている。

カタログ上の日差は+25秒から-15秒と、可もなく不可もなくといったところだが、このムーブメントの魅力は、およそ半世紀にわたり実用機としてブラッシュアップされ続けてきた信頼性にあるだろう。

プレザージュ Sharp Edged Series

シースルーバックからのぞくのは、同社の主力ムーブメント6R系にロングパワーリザーブを与えたキャリバー6R35だ。華美な仕上げは施されていないが、その裏には実用機としてブラッシュアップされてきた歴史がある。

 6R系ムーブメントは、1970年代にセイコーが開発した70系ムーブメントを祖に持つ。耐久性とメンテナンス性に優れた70系は、当時の「セイコーファイブ」をはじめとする普及機に搭載された。

 やがて1990年代には、70系をベースとした7S系が登場し、これも当時のセイコーファイブなどに搭載され、電池の供給が限られる国や地域で重宝された。

 同じく1990年代。機械式時計の復権と共に、セイコーは再び機械式時計に注力するようになる。当初は薄型高級機の68系や、かつてキングセイコーに搭載された52系をベースとした4S系などを展開していたが、2000年代に入ると、7S系をベースに手巻きや秒針停止機構を加えブラッシュアップした6R系が登場。その後、その普及機として4R系が登場する。

 6R/4R系は以降、レトログラードやパワーリザーブインジケーターなどを備えたバリエーションや、クロノグラフモジュールを追加した8R系に発展し、セイコーの主力ムーブメントとして多くのモデルに採用されてきた。

 さらにはエボーシュとして外販もされ、多くのブランドからも信頼を寄せられている。比喩ではなく、世界中で愛されているムーブメントなのだ。

 本作に搭載されているキャリバー6R35は、そんな6R系の最新ムーブメントにあたる。機能自体はスタンダードな3針デイトだが、パワーリザーブは従来のキャリバー6R15の約50時間から大幅に延長され、約70時間を備えている。

6R35

 これによって、金曜日の夜に十分巻き上げておけば、月曜の朝まで動き続けるのだ。高級ムーブメントではないが、ストイックに磨きこまれてきた信頼性は、何物にも代えがたい魅力を持つ。

 耐震装置「ダイヤショック」、強靭な合金「スプロン」製の主ゼンマイとヒゲゼンマイ、ラチェット式自動巻き機構「マジックレバー」と、同社がトライマチックと呼ぶ技術は、その信頼性を下支えするものだ。

 リュウズ操作は単純明快だ。リュウズはねじ込み式ではないため、そのまま1段引き出せば日付調整、もう1段引けば時刻調整が可能だ。リュウズは高さを抑えつつも径が大きいため、爪がかかりやすく引き出しやすい。時刻調整や日付調整の感触もしっかりとしており、ストレスを感じるようなことはないだろう。


オールラウンダーとして活躍する汎用性の高さ

 実際に腕に着用してみると、意外にもコンパクトな印象を受けた。39mmのケース径は、現代のメンズモデルとしては一般的と言えるサイズだが、サテン仕上げが施された太めのラグが存在感を出しているため、机に平置きしたときと腕上に乗せたときでは、ギャップが生まれるのだろう。

プレザージュ Sharp Edged Series

日陰や屋内では、また違った表情を見せる。シンプルさが際立ち、ダイアルに配された各要素の質実剛健さが、セイコーの時計作りに対する真摯な姿勢を感じさせる。

 ケースの縦の長さは47.2mmであり、腕周り16.5cmの筆者の腕にもきっちりと収まる。平均的な日本人成人男性にとっては、しっくりくるサイズ感ではないだろうか。

 加えて、厚さも11.1mmと同系統のムーブメントを採用したモデルと比較すると、薄めに仕上がっている。裏蓋も出っ張ることはなく、時計の重心が低く設計されている。これによって、着用時に腕を振って歩いても振り回されるような感覚がなく、快適に長時間着け続けることができる。

 ブレスレットのコマは、小さめのいわゆる“半コマ”がいくつか含まれているため、手首周りに合わせて細かく調整することが可能だ。角が落とされ肌あたりも良いため、着用時のストレスはない。

 着用していて改めて気付くのは、ダイアルがもたらす控えめな輝きだろう。決してぎらつくようなことはない。しかしながら、腕を傾けたりする度に浮かび上がる麻の葉紋様は、自然と視線を吸い寄せる不思議な力を持つ。

プレザージュ Sharp Edged Series

ラグ上面のサテン仕上げが力強さを表現し、ケースサイドの鏡面は上品さを感じさせる。ケースも比較的薄く、着用感も優れている。

 もちろん、先述した通りに凝ったインデックスと針がもたらす視認性と判読性は、腕上でも変わらない。インデックスのスーパールミノバは多少控えめだが、ほとんどのシーンにおいて、不自由なく正確に時刻を読み取ることが可能だ。

 防水性は10気圧を備えているため、湿気の多い夏や雨の日でも気兼ねなく着用できる。ちなみに、同社の公式ホームページでは、10気圧の日常生活用強化防水は、“空気ボンベを使用しないスキンダイビングに使用できます。”との記載がある。本作をスキンダイビングに使用する人はいないと思うが、少なくとも日常生活で想定される範囲であれば問題なく使えると考えて間違いなさそうだ。

 外装にはセイコー独自の表面加工技術である“ダイヤシールド”が施されており、耐傷性が高められている。長年使い続けるにふさわしい、非常に心強い仕様だ。


最初の1本として、もしくは2本目以降のデイリーウォッチとしても

 嫌味の無いシンプルなデザインながら、持ち主の個性を表す本作は、まさに現代のビジネスウォッチにぴったりではないだろうか。成長と出世を願う麻の葉紋様は、縁起も良い。

 藍鉄色のダイアルの他にも、日本の伝統色を取り入れたカラーバリエーションが展開され、GMT機能を搭載したモデルも用意されている。きっと、自分の好みや求める機能に合わせた1本を見つけることができるはずだ。限定モデルも発表され続けており、本作が多くの人に支持されていることが分かる。

 そんな懐の深いSharp Edged Seriesの評価を盤石なものとしているのは、腕時計としてしっかりと作りこまれた実用性の高さではないだろうか。プレザージュには、本作のような型打ちダイアルの他、漆や七宝、琺瑯といった日本の伝統的な技法が用いられているものがある。

 それらは一見個性を追求したもののように見えるが、腕時計としての実用性はおろそかにされていない。本作のインデックスや針に見られる視認性と判読性への配慮からもそれを感じることができる。

 本作は、最初の腕時計としてはもちろん、2本目以降のデイリーウォッチとしても大いに活躍してくれるはずだ。新しい環境で活躍されている、あるいは新年度を機に気持ちも新たにしようと考えている皆さん。Sharp Edged Seriesを着けて、麻の葉のようにグングンと成長してみませんか。


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