「モダンスケルトンRK-AV0126B」は、オリエントスターらしさにあふれるオールブラックモデル!

FEATUREインプレッション
2024.03.26

オリエントスターの人気コレクションである「モダンスケルトン」の誕生10周年にあたって発表された記念限定モデル「モダンスケルトン RK-AV0126B」をインプレッションする。オリエントスターのデザインコードを色濃く反映しており、機械式時計の魅力を手の届きやすい価格で提供されるモデルだ。そして、記念限定モデルとして用意されたオールブラックの本作は、筆者にとって特別感が感じられる1本であった。

オリエントスター モダンスケルトン

オリエントスター「モダンスケルトン」Ref.RK-AV0126B
自動巻き(Cal.F6F44)。24石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ12mm)。10気圧防水。世界限定600本。12万4300円(税込み)。
佐藤しんいち:文・写真
Text & Photographs by Shin-ichi Sato
[2024年3月26日公開記事]


モダンスケルトン誕生10周年記念モデルのインプレッション

 今回インプレッションするのは、オリエントスターの人気コレクションである「モダンスケルトン」の誕生10周年にあたって発表された新作「モダンスケルトン RK-AV0126B」である。本作は、同時に発表された3モデルのうちのひとつであり、本作のほかにステンレススティールケースにシルバーカラーダイアル、同シャンパンカラーダイアルがラインナップされている。これらの中で本作は10周年記念限定モデルに位置付けられており、オールブラックはモダンスケルトンでは初となる仕様となっている。

オリエントスター モダンスケルトン

オリエントスター「モダンスケルトン」
自動巻き(Cal.F6F44)。24石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ12mm)。10気圧防水。(左)RK-AV0124G:10万6700円(税込み)。(右)RK-AV0125S:10万3400円(税込み)。

 従来のモダンスケルトンでは、ブルーやグリーン、ブラウンといったバリエーション豊富なカラーダイアルによって、ケースとのコントラストを与えたモデルが多かった。それに対して新作3モデルは、ケースのメタリックな質感に同調するトーンが与えられている点が特徴だ。オールブラックの本作は、ケース、ブレスレットおよびダイアルに一体感があり、新作のコンセプトが色濃く表れている1本であると言えるだろう。価格は、オールブラックの本作が12万4300円(税込み)となり、機械式時計の中では手の届きやすい価格帯に属する。


オリエントスターのデザインコードについて考察

 では、モダンスケルトンも含めたオリエントスターのデザインコードについて考察しよう。オリエントは、名作ダイバーズウォッチ「オリエント マコ」のような機械式モデルのほか、ボトムラインとなるクォーツモデルやクォーツクロノグラフモデルを取りそろえる「オリエント」と、機械式モデルのみをラインナップする「オリエントスター」を展開している。

 モダンスケルトンを含むオリエントスターは、一部のレディース向けの小径モデルを除いて、ダイアル側のスケルトナイズ、パワーリザーブ表示、スモールセコンドのいずれかを採用する点が特徴だ。そのほか、直線的で力強い時分針とアワーマーカー、12時位置はローマンインデックスとなるモデルが多い点も特徴となる。これらが組み合わさることで、ファンならばひと目でオリエントスターと分かる個性を備えており、この個性こそがデザインコードであると言ってよいだろう。


オリエントスターのデザインコードを色濃く反映したデザイン

 前述した“オリエントスターのデザインコード”の観点から眺めると、本作はそのデザインコードが色濃く表れたモデルとなっていることが分かる。9時位置にテンプがのぞき見え、12時位置にパワーリザーブ、6時位置にスモールセコンドを備える。また、2時位置と、4時位置から7時位置にかけて円弧状にオープンワークが施されている。時分針は立体感のあるペンシル型、アワーマーカーは時分針と呼応する直線的なデザインで、12時位置はローマンインデックスだ。

オリエントスター モダンスケルトン

ブラックかつメタリックな質感のある外装とダイアルからテンプがのぞき見える。ポリッシュ仕上げの時分針やテンプ周りがアクセントになり、地板の梨地部ともコントラストを成している。

 本作は、モダンスケルトン初となるオールブラックモデルで、黒色メッキによるブラックのケース、ブレスレット、ブラックのダイアルを備える。このダイアルに、ポリッシュされた針とインデックスが配され、オープンワークから梨地の地板、ポリッシュされたテンプ周りと、ブラスカラーのテンプがのぞき見える。ツートンコーディネートでありながら変化のあるダイアルデザインだ。従来モデルと比べると、オールブラックによってオープンワークが引き立てられている点が印象的である。

 パワーリザーブ表示の24時間以下の領域にもオープンワークが施され、パワーリザーブ残量の警告表示の役割を果たしている。オープンワークと機能性を両立しているポイントだ。6時位置のスモールセコンドは小さく、窮屈な配置であり、時分針に隠れやすいため、視認性は期待できない。デザインバランスを考えても、ここはセンターセコンドか思い切って秒針無しでも良かったのではないか。


サイズと厚さ、ブレスレットのバランスにより良好な着用感

 ケース径は41mmに対して厚さは12mmと、ベーシックな価格帯の40mm径クラスの中では、やや薄い仕立てとなっている。手首周長18cmの筆者が着用してみるとフィット感が良好であった。外装はステンレススティール製であり、ブレスレット調整後の状態で実測143gと標準的で、軽いわけではないが着用時には軽快な印象を受けた。わずかにでも薄く仕立てている点や、ケースバックの飛び出しが小さい点、手首に沿うラグ形状、時計本体とブレスレットの重量バランスが良好である点が装着感の向上に寄与しているのだろう。なお、ラグ部のフィット感から筆者より手首の細い方でも良好な着用感を得られそうな予感があったことは付記しておこう。

オリエントスター モダンスケルトン

 視認性はそれなり。明所では時分針が光を捉えてダイアルとのコントラストが高まり、視認性を向上させるものの、光の当たり方によってはダイアルからのぞくムーブメント部の光の反射によって情報量が多くなってしまうことがあった。一方暗所では、ダイアルのブラックが時分針に反射して視認性が低下することもあった。もっともこれは、シンプルなダイアルによる視認性を追求する原理主義者の筆者見解であるし、本作では時分針に施された蓄光部によって暗所での視認性が確保されているため、必要十分と評価する人の方が多いだろう。


オールブラックという個性とファッションへの取り入れやすさの両立

 ブラックは、ファッションアイテムや革小物、文具などにおいて定番かつ重要なカラーだ。車やカメラ、ガジェット類、筆者の趣味であるギターにおいても同様である。特に、ブラックを基調としたコーディネートはフォーマルシーンの標準であり、カジュアルやモード系ファッションにおいても欠かせない。ギターでは「ブラックビューティー」などとしてアイコニックな存在になっているものもある。

 一方、ブラックは視覚的な印象が強く、さまざまなカラーコーディネートの中で取り入れようとすると目立ってしまうと筆者は考えている。言い換えると、周囲の色となじんでくれない。この「なじまない」感覚が視覚的なインパクトとつながるため、このインパクトを好む人も多くいることだろう。

 ただし、この「なじまない」感覚は「真っ黒」である場合に限られ、わずかにでも赤や青といった、ほかの色調を感じさせるものであると、途端になじみやすいものとなる。では本作はどうか?

オリエントスター モダンスケルトン

本作に合わせてダークな色調でまとめてみた。よりビジネスライクなホワイトブロードのシャツやシャンブレーシャツにも合わせやすかった。なお、ブラックの外装に皮脂やほこりが付着すると目立って見えることもあった。

 本作のケースやブレスレットは、メタリックな光の反射からかグレーっぽさが感じられるもので、筆者はその中にわずかに赤色を感じた。その具合は極わずかなのだが、その「わずか」によって印象が大きく変わっていて、オールブラックのインパクトと、各種ファッションへの取り入れやすさが両立されている印象を受けた。これは、オリエントが狙ったものであるかどうかは定かではないが、筆者にとっては高評価であった。


実用性十分なムーブメント

 デスクワークがほとんどの筆者が本作を着用すると、Cal.F6F44の自動巻きによる巻き上げ量と稼働による消費量が拮抗し、腕時計を外している時間分だけパワーリザーブが減少するようなバランスであった。巻き上げ量が足りないのは筆者が過度の運動不足である点が問題なのであって、筆者経験則からは本作は十分な巻き上げ効率を備えると評価できる。また、本作にはパワーリザーブ表示が備わっているので、巻き上り量の管理も容易だ。

オリエントスター モダンスケルトン

 巻き上り状態から平置きして停止直前まで観察したところ、20時間経過時では遅れ気味であったが36時間経過時に誤差累計-2秒程度まで巻き返し、停止直前でも大きな誤差なく稼働を続けた。実使用環境と異なるため参考値となるが、その実力を感じるには十分であった。


機械式時計の魅力が引き出された一本

 本作は10万円台前半と、機械式時計の中では手の届きやすい価格帯に属する。また、そのデザインはオリエントスターのデザインコードを色濃く反映している。特に、モデル名にもなっているスケルトナイズにより、時計が一定のリズムで作動するためのキーパーツ、かつ機械式時計にとって象徴的なテンプおよび脱進機の動きをダイアル側から鑑賞可能となっている。ムーブメントの地板ものぞき見え、精密な機械が内部に収められていることの満足感を得やすいモデルであると言える。パワーリザーブ表示は、時計の稼働と自動巻きローターの回転よって指針が増減し、その様子は魅力のひとつとなるだろう。パワーリザーブを管理する運用面でもユーザーフレンドリーだ。着用感を含めた実用性も申し分ない。

 そして何より、オールブラックはやっぱり格好良いし、どことなく特別感がある。そう感じるのは筆者だけだろうか。


Contact info:オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380


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