オリエントが生み出す腕時計を深掘り。その魅力と注目のモデルとは?

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2024.04.22

オリエントは手の届きやすい価格帯で、高品質な腕時計を展開するブランドとして人気を集めている。そこで、メーカーとしてのオリエント時計の歴史、ブランドごとの特徴を交えて、オリエントの腕時計を深掘りしていこう。各ブランドの注目モデルもピックアップする。


オリエントが歩んできた歴史

オリエントは、リーズナブルな機械式時計を展開する日本の時計ブランドだ。セイコーやシチズンに比べればその歴史は浅いが、設立からの年数は優に半世紀を超えている。

オリエントの腕時計が気になっているなら、まずはブランドの始まりと近年の変化を押さえておこう。


始まりは1950年設立の計器メーカー

オリエントブランドの誕生は、1950年に設立された前身、多摩計器株式会社がその前身である。現在の東京都日野市にあった、東洋時計製作所の工場を借りた形だ。

オリエントは、多摩計器株式会社として1950年7月13日に設立。当初は東京都南多摩郡日野町(現・日野市)にある東洋時計製作所の旧日野工場を借りて、腕時計の製造を行っていた。

同年には、さっそく量産型腕時計「ニューオリエント」を発表する。このとき搭載されたムーブメントは、メーカーの起源である吉田時計店の時代に設計されたものだ。

初代オリエント ニューオリエント

1950年に生産が開始された、オリエント初の量産型腕時計「ニューオリエント」。搭載するのは、吉田時計店時代に設計された、小ぶりの手巻きムーブメントだ。

翌51年には社名を「オリエント時計」に変更し、ブランド名にもなっている「オリエントスター」初代モデルを生み出す。

初代オリエントスター

「輝ける星」をイメージして、1951年に登場した「オリエントスター」。初代モデルに搭載するのは、「ニューオリエント」と同じ戦前型のムーブメント。翌52年には、新設計のムーブメントに置き換わる。

その後は現在リバイバルモデルも登場しているダイバーズウォッチ、個性的なデザインの「オリエントジャガーフォーカス」など、バリエーション豊かな腕時計を発表してきた。

しかし70年代に入ると、機械式時計をメインに生産していたオリエント時計はクォーツショックのあおりを受けてしまう。90年代には大きな苦難に向き合うことになる。


セイコーエプソンとの統合による進化

クォーツ時計の台頭で困難な状況に陥ったオリエント時計も、2024年現在はその地位を確立し、幅広い層から人気を集めている。オリエント時計を救ったのは、セイコーエプソンとの統合だった。

03年に上場廃止となった6年後、オリエント時計は完全にセイコーエプソンの子会社となる。さらに17年には、セイコーエプソンに統合した。

統合後は原点に立ち返りながらも、エプソンの技術力を生かした商品開発、ブランディングで方向性を定めていく。品質と個性の両面で大きく進化したといってよいだろう。


オリエントの腕時計が持つ魅力

オリエント時計の商品には、他の国産メーカーにはない強みがある。セイコーエプソンとの統合後の変化を深掘りしながら、現在のオリエント時計が作るタイムピースがどのような魅力を持つのかを紹介しよう。


オリエントらしさを前面に押し出したデザイン

セイコーエプソンと統合した翌年から、オリエント時計の本格的なリブランディングが始まった。独自性のあるテーマの追求や奇抜なカラーリングに焦点を当て、「オリエント」「オリエントスター」というふたつのブランドの方向性を定めていく。

特にベーシックラインのオリエントは、過去のモデルから着想を得て個性を表現する方向でリブランディングされた。1960年代の「オリエント万年カレンダー」に見られるような、他にはないデザインをオリエントの強みと捉えたのである。

一方のオリエントスターは、機械式時計の未来を見せていくというコンセプトの下、戦略を模索していった。


改良された高精度な「46系」ムーブメント

オリエント時計の代名詞とも言えるのが、「46(ヨンロク)系」と呼ばれる基幹ムーブメントだ。71年に登場した46系ムーブメントは、それまでの「L型自動巻き」と比べてコンパクトかつ薄型に設計されている。

頑丈で巻き上げ効率に優れていた46系ムーブメントは、長くオリエント時計の時計製造を支えてきた。しかし、2017年にセイコーエプソンと統合した時点では、時代に即した設計ではもはやなくなっていたのである。

ムーブメント製造の基準が厳しいセイコーエプソンが製造工程を見直すことで、46系ムーブメントは精度を上げ、薄型化を果たす。さらに地板のピンの位置が工夫された46系ムーブメントは、スケルトンモデルを充実させる助けにもなった。

オリエント ムーブメント

1971年に誕生した46(ヨンロク)系は、オリエントを代表する自動巻きムーブメントである。セイコーエプソンとの統合の後、仕上げや精度が改善され、現在も多くのモデルに搭載されている。


「オリエント」「オリエントスター」それぞれのブランドについて

オリエント時計は、「オリエントスター」「オリエント」の2ブランドを展開している。それぞれに立ち位置や特徴が違うので、どのモデルを選ぶか迷っているなら、ブランドごとの強みを覚えておこう。


上位ブランド「オリエントスター」

オリエントスターは、「オリエント時計」に社名変更された1951年発表の、初代オリエントスターから名付けられたブランドだ。「輝ける星」と呼ばれる時計を目指して、高品質なモデルを展開している

2023年には、メシエカタログに記されている名称を冠した「Mコレクションズ」も登場。M45(プレアデス星団)、M34(ペルセウス座)、M42(オリオン大星雲)の3種類がラインナップされた。ブランド名にふさわしいこのコレクションは、高い人気を誇っている。

オリエントスターは、オリエント時計の上位ラインだ。24年1月の価格改定で定価も上がっている。とはいえ、その品質や高級感を考えれば、依然としてリーズナブルなプライス設定といってよいだろう。メンズ時計のうち最も高いモデルでも、30万円台で購入できる。


手の届きやすい「オリエント」

オリエントは、オリエントスターよりも安価なベーシックラインだ。例えば風防の素材を見てみると、オリエントスターではドーム型サファイアガラスが採用されているのに対し、オリエントの腕時計にはドーム型無機ガラスが採用されているモデルもある。

オリエントのメンズコレクションは、次の5種類だ。

・コンテンポラリー
・クラシック
・スポーツ
・リバイバル
・iOカスタマイズ

特色ごとに分かりやすくカテゴライズされているので、好みの腕時計を見つけやすい。


オリエントスターの腕時計

高品質で個性ある腕時計を展開しているのが、上位ラインに位置するオリエントスターの特徴だ。オリエント時計らしい個性を放つスケルトンモデルとMコレクションズから、今注目したい3本を紹介しよう。


「コンテンポラリーコレクション モダンスケルトン」RK-AV0124G

24年春夏モデルとして3月に発売された「RK-AV0124G」は、裏ぶたではなく文字盤からムーブメントが見える「モダンスケルトン」の1本だ。

シャンパンカラーの文字盤は2時位置と9時位置がくり抜かれ、Cal.F6F44の機能美を鑑賞できる。ベゼルのカラーには、文字盤とよくなじむイエローゴールドカラーが採用された。

ステンレススティール製のケースは、直径41mmと存在感がある。12時位置にパワーリザーブインジケーター、6時位置にスモールセコンドが配置されており、メカニカルな時計を求めている人の好みにはまるだろう。

オリエントスター「コンテンポラリーコレクション モダンスケルトン」RK-AV0124G

オリエントスター「コンテンポラリーコレクション モダンスケルトン」RK-AV0124G
自動巻き(Cal.F6F44)。24石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ12mm)。10気圧防水。10万6700円(税込み)。


「クラシックコレクション M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」RK-AY0114A

23年10月にスタートしたMコレクションズからは、まずM45(プレアデス星団)の「RK-AY0114A」を紹介したい。ムーンフェイズを備えた幻想的なモデルだ。

RK-AY0114Aの文字盤には、秋田県の田沢湖に映る月の姿が表現されている。湖面に見立てた白蝶貝は、グリーンのグラデーションで仕上げられた。

スケルトンモデルに比べてスッキリとしたデザインにも注目したい。文字盤には針とインデックスの他、12時位置にパワーリザーブインジケーター、6時位置にムーンフェイズがあるのみだ。ブラックのワニ革で作られたストラップも相まって、月夜の静寂を感じられる仕上がりとなっている。

オリエント 「クラシックコレクション M45 F7 メカニカルムーンフェイズ」RK-AY0114A

オリエントスター「クラシックコレクション M45 F7メカニカルムーンフェイズ」RK-AY0114A
自動巻き(Cal.F7M65)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。オリエントスター公式オンラインストア限定モデル。23万6500円(税込み)。


「スポーツコレクション M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」RK-AU0701B

「Mコレクションズ」には、ダイバーズウォッチもある。「RK-AU0701B」は名前の通り、1964年のダイバーズウォッチを現代によみがえらせた復刻モデルだ。

「M42 ダイバー1964 2nd エディション」シリーズのベースとなっているのは、オリエント時計のダイバーズウォッチ2号機「カレンダーオートオリエント」である。

RK-AU0701の素材として採用されたチタンは、軽量でさびにくい。軽い着け心地とメンテナンス性を重視する人に、おすすめしたい1本である。チタンの発色を生かし、ケースとブレスレットはグレートーンで統一された。

ブラックのシンプルな文字盤は、マリンスポーツだけでなく、日常生活のシーンでも違和感なくなじむだろう。

オリエントスター「スポーツコレクション M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」RK-AU0701B

オリエントスター「スポーツコレクション M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン」RK-AU0701B
自動巻き(Cal.F6N47)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。チタンケース(直径41mm、厚さ14.3mm)。200m防水。18万7000円(税込み)。


オリエントの腕時計

ベーシックラインのオリエントには、メーカーの歴史を色濃く感じられる腕時計がある。リーズナブルながら特別感のある1本を探しているなら、記念モデルや復刻コレクションに注目してみよう。


「スポーツコレクション オリエント マコ」RN-AA0822L

スポーツコレクションにラインナップされている「オリエント マコ」は、ヴィンテージ風のダイバーズラインである。2024年4月18日、オリエント マコの誕生20周年を記念して「RN-AA0822L」が発売された。限定生産モデルで、わずか500本しか販売されていない。

RN-AA0822の特徴は、初代オリエント マコから受け継いたブルーの文字盤だ。波を表現した模様が施されている。3時位置には曜日表示と日付表示を配置し、インデックスは4カ所にだけアラビア数字を使っている。

ねじ込み式リュウズや逆回転防止ベゼルなど、ダイバーズウォッチの意匠は豊富だが、ISO規格準拠のダイバーズウォッチでないことには注意したい。

オリエント「スポーツコレクション オリエント マコ」RN-AA0822L

オリエント「リバイバルコレクション SK」RN-AA0B02R
自動巻き(Cal.F6922)。22石。パワーリザーブ約40時間。SS(直径41.7mm、厚さ12.6mm)。5気圧防水。3万6300円(税別)。国内1000本限定。


「リバイバル コレクション SK」RN-AA0B02R

リバイバルコレクションは名前の通り、過去のモデルを復刻させたコレクションだ。「SK RN-AA0B02R」は、「SK」の名で人気を博した1970年のモデルをベースとしている

ケースとブレスレットはステンレススティール製だが、輝きを抑えたマットな仕上がりだ。左右非対称なベゼルの形状、内回転ベゼルなど、オリジナルの意匠がよく再現されている。

ワインレッドとブラックのグラデーションカラーに仕上げられた文字盤デザインは、スーツスタイルやシックな装いによく似合うだろう。

オリエント「リバイバルコレクション SK」RN-AA0B02R

オリエント「リバイバルコレクション SK」RN-AA0B02R
自動巻き(Cal.F6922)。22石。パワーリザーブ約40時間。SS(直径41.7mm、厚さ12.6mm)。5気圧防水。3万6300円(税別)。国内1000本限定。


オリエントの腕時計で輝くひとときを

オリエント、オリエントスターは、70年を超える歴史を持つ国産ブランドだ。一時期はクォーツショックのあおりを受けて苦境に立たされるも、セイコーエプソンとの統合を経て独自路線の腕時計で復活を遂げている。

それぞれのラインナップを見比べて、自分に合ったオリエントを見つけてみよう。メーカーのこだわりや歴史が垣間見えるタイムピースを手に取れば、納得できる1本に出会えるはずだ。



Contact info: オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380

参考サイト:オリエント https://www.orient-watch.jp


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https://www.webchronos.net/news/113106/
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