アーノルド&サンの真価とその歴史

2017.12.06

アーノルド&サンの質の高さを知ることができるネジ作り。左が一般的な時計に使用されるごく普通のネジを表したイラストだが、アーノルド&サンの一部モデルは、角を斜めに落とす“スリ割り”という加工がされた右のネジを使用している。なお、ネジにここまでのコストをかけるのは、他社ではアーノルド&サンより販売価格帯が上のメーカーばかりだという。

「高級時計と超高級時計をどこで見分けるか。そのひとつのポイントはエッジです。まず、「トゥールビヨン・クロノメーターNo.36」の受けを見てみましょう。これは手作業で磨かれています。しかもアーノルド&サンは左右対象で時計のデザインを組むため、結果としてこの受けを大量に作る必要が出てきます。受けが大きな1枚もので済むならばこういった仕上げは難しくないのですが、細かく何個にも分けて作られているため、仕上げる箇所が増えてしまい手間がかかってしまいます。コストを考えるならば受けの個数は減らした方がいいのですが、アーノルド&サンは毎年この受けの数を増やしています。見分けるためのポイント、そのふたつめはネジの形です。超高級時計で使用されるネジは通常のネジと違い、角を斜めにカットするスリ割りという加工がされています。この加工をすることでドライバーを入れた時に、ネジにキズがつかないのです。アーノルド&サンもこのネジをほとんどのモデルに使用しています」

 超高級時計に取り入れられるエッジの仕上げや、ネジの加工など、緻密な時計づくりが見て取れるアーノルド&サンの腕時計。しかし、販売価格はそれだけのコストをかけていながら比較的安く設定されている。

「販売される時計の価格を考慮すればネジにここまでのコストを割くことは珍しいのですが、ここがアーノルド&サンのムーブメントがラ・ジュー・ペレで製造されている強みなのです。さきほども述べたようにラ・ジュー・ペレはアーノルド&サンだけでなく、いろいろな会社にムーブメントを供給しています。つまり他社へのムーブメント供給で採算が取れれば、グループ企業であるアーノルド&サンのムーブメントにコストがかかっても問題ない。そのため、このような凝った仕上げを施しても相対的に値段を抑えられています」

 超高級時計にも通じる仕上げを持ちながらコストパフォーマンスが高く、かつユニークな見た目のアーノルド&サン。少量生産であるが故、他人とダブることも少ない。人とは違った高級時計を探している方にはまさに最適なブランドのひとつと言えるだろう。

(上)イベント当日のトークショー後には、アーノルド&サンのコレクションに実際に触れることのできるタッチアンドトライのコーナーが設けられた。同社の腕時計はどれも少量生産ということもあり、普段手にする機会はそれほど多くない。そのため、この日来場したゲストは皆、実際に触れて、感じたことをスタッフへ投げかけていた。
(右)タッチアンドトライには前述のデービッド・セラ氏も参加。自身もスタッフとともにゲストへモデル説明を行った。



編集部のお勧めモデル

hirota

(左)「トゥールビヨン・クロノメーターNo.36」。手巻き(Cal.A&S8600)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約90時間。18KRG(直径46mm)。30m防水。世界限定28本。633万円(税別)。
(中)「DGB スケルトン」。手巻き(Cal.A&S1309)。42石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KRG(直径44mm)。30m防水。世界限定30本。423万円(税別)。
(右)「HMパーペチュアル・ムーン」。手巻き(Cal.A&S1512)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約90時間。18KRG(直径42mm)。30m防水。306万円(税別)。

Contact info: ブローバ相談室 Tel.0570-03-1390