着実な進化が心に染みる。時計ジャーナリスト篠田哲生が選ぶ【2024年新作時計ベスト5】

FEATURE2024年新作時計
2024.04.26

日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は時計ジャーナリストの篠田哲生が選出。手堅くまとまった、しかし機構やディテールをアップデートし、ますます魅力的になった新作時計をピックアップしている。


パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス」

非常に繊細で、美しく、そして機能的なゴールドブレスレットを採用。重厚感があるのに肌あたりもよく、アクセサリー的に使いたくなる別格のオーラがあった。

パテック フィリップ 新作 ゴールデン・エリプス 5738/1

パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス」Ref.5738/1
自動巻き(Cal.240)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(縦39.5×横34.5mm、厚さ5.9mm)。3気圧防水。951万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109


IWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ」

4つのカラーコードが誕生したが、お気に入りは夕暮れの空と輝く太陽をイメージしたという「デューン」。ポルトギーゼといえば端正なデザインで人気だが、そこにちょうどいい色気を加えている。

 

IWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ」Ref.IW371624
自動巻き(Cal.69355)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41mm、厚さ13mm)。3気圧防水。117万7000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868


グランドセイコー「エボリューション9 コレクション」SLGW003

ケースのプロポーションやダイアルの表現も美しいが、手巻きした際の手に伝わる感触にもこだわったというマニアックなモデル。その動きも楽しいし、コハゼもセキレイの形になっていて、細部も楽しい時計。

グランドセイコー エボリューション9

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション」Ref.SLGW003
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。3気圧防水。145万2000円(税込み)。2024年8月9日(金)発売予定。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617


ジャガー・ルクルト「デュオメトル カンティエーム・ルネール」

ダイアルのシンメトリーな配置もきれいで、サイドから見た時のドーム型のダイアル&風防も見どころ。機構自体はムーンフェイズ&カレンダーだが、ロマンティックな魅力にあふれている。

ジャガー・ルクルト デュオメトル・カンティエーム・ルネール

ジャガー・ルクルト「デュオメトル・カンティエーム・ルネール」Ref.Q604848J
手巻き(Cal.381)。42石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42.5mm、厚さ13.05mm)。5気圧防水。655万6000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833


カルティエ「パンテール ドゥ カルティエ」

パンテールといえば可憐なデザインで女性人気は抜群。そのパンテールが大型化しただけでなく、ゴールドのブレスレットも柔らかで美しい。薄型ケースなのでサイズ感も気にならないので、シェアウォッチの新たな本命になるかも。

カルティエ パンテール ドゥ カルティエ

カルティエ「パンテール ドゥ カルティエ」Ref.CRWGPN0041
クォーツ。18KYGケース(縦42mm×横31mm、厚さ6.71mm)。日常生活防水。455万4000円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00


総評

 先行き不透明な経済状況に突入し、スイス時計業界の成長は踊り場。輸出量も下がっており、これからが正念場なのかもしれない。そういう事情もあってか、新作時計は比較的手堅くまとまった印象。既存モデルのアップデート中心だった。といってもそこはW&Wに参加するブランドであるので、そのクォリティは申し分なし。機構やディテールをアップデートし、ますます魅力的になっている。

 一番印象的だったのは、パテック フィリップの「ゴールデン・エリプス」。メッシュタイプのブレスレットが加わったのだが、試着した誰もがその滑らかな肌あたりに「おぅ」と感嘆を漏らしていたのが印象的だった。IWC「ポルトギーゼ」も正常進化だが、ポイントはダイアルカラー。繊細なニュアンスカラーを表現しているが、特に「デューン」と呼ばれるカラーは、針のインデックスも同系色なので、見慣れたモデルなのにこれまでになかった色気を感じる。 今年も健在のグランドセイコーは、新型の手巻きムーブメントモデルに注目。ダイアルの白樺の表現もとてもきれいだ。メカニズムの刷新としては、ジャガー・ルクルト「デュオメトル」の、高精度追求の設計思想は相変わらず斬新であるし、カルティエ「パンテール ドゥ カルティエ」の華やかな色気にも魅せられた。

 戦略としては、どれもが手堅い。しかし時計に関してはコンサバ気質な自分にとっては、こういった着実な進化の方が心に染みるのだ。



選者のプロフィール

篠田哲生

篠田哲生

1975年生まれ。講談社『ホットドッグプレス』編集部を経て独立。時計専門誌、ファッション誌、ビジネス誌、新聞、ウェブなど、幅広い媒体で硬軟織り交ぜた時計記事を執筆している。また仕事の傍ら、時計学校「専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」のウォッチコース(キャリアスクールウォッチメーカーコース)に通い、時計の理論や構造、分解組み立ての技術なども学んでいる。クロノス日本版のTop 10 Rankingのレギュラー選考委員。2020年には『教養としての腕時計選び』(光文社新書)を上梓。


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