クライネ・グロスマンの愉悦

2018.06.15

Cal.102.1
初代テフヌート用と同じ小径薄型で、より堅牢にアレンジされた2代目ムーブメント。審美性を重視した変形オフセット輪列をオーソドックスなスタイルに戻したことで、小径機ながらも十分な堅牢さを確保。香箱の大径化、ガンギ車先端の形状変更、可動ヒゲ持ちの搭載など、全体的なブラッシュアップが図られている。

 ベゼル幅を極力絞り込んでダイアル開口部を大きく取りながら、ケースバックに向けて緩やかな拡がりを設けたケースの造形は、ベヌーやアトゥムのイメージをスライドさせたもの。しかしその直径は37㎜にまで絞り込まれている。筆者は日常的に、直径36㎜の初代テフヌートと、
直径41㎜のベヌーSSを使い分けているのだが、腕に乗せた際のバランスは、どちらかと言えばベヌーのほうに近い印象だ。41㎜のベヌーを大きいと感じたことはないが、この37㎜というサイズ感は、(悔しいことに)細腕の日本人にはベストバランスかも知れない。

 一方ダイアルの印象は、これまでのどのグロスマンとも異なっている。ベヌー37はアラビア数字を踏襲するものの、その書体はいわゆる〝ブレゲ風〞に改められている。アトゥム37はアプライドのバーインデックスから、やや柔らかな書体のローマンインデックスとなった。従来の作風がドイツ時計らしい〝重々しさ〞を持っていたとすれば、37㎜の表情には〝洒脱さ〞が加味されたと言えるだろう。

 実を言えばこの37㎜は、日本からのリクエストで企画が進められた〝ジャパンリミテッド〞となるはずだった。急遽ワールドワイドでの発表へと企画変更された経緯は、実際の完成度を見れば納得だろう。しかし朗報もある。今年の9月末までは、日本からのオーダーに限って、時分針の形状を選べることになったのだ。

〝日本限定仕様〞となるのは、両機ともにスケルトンハンド。ケースの素材違いで、合計8種類の表情から選べるのである。

BENU 37 Variations
ベヌー37の世界共通仕様は、オリジナル・ベヌーと同形状の“ローザンジュ針”(右側の2本)。と言っても全体が菱形なのではなく、外端部分にのみボリュームを設けたお馴染みの造形だ。手作業の焼き戻しによる、ブラウンバイオレット調の発色が美しい。すべて320万円。

ATUM 37 Variations
アトゥム37でも、日本限定仕様の“スケルトン針”(左側の2本)をオーダー可能。原型は「テフヌート・スリーピングビューティー」用だが、ダイアルの造形に合わせて、やや長めにアレンジされている。こうした細かな“煮詰め”こそ、量産品では不可能な部分だ。すべて320万円。
同じ18KWGケースを持つアトゥム2種のサイズ比較。後ろがオリジナルの直径41mm、手前が新作の直径37mmである。グラスヒュッテ懐中時計らしい重厚感も捨てがたいが、新作の洒脱な軽快感にも大きな魅力がある。
Contact info: モリッツ・グロスマン ブティック ☎03-5615-8185