レディースウォッチに自動巻きは必要か?

FEATURE本誌記事
2019.02.26

実用的な高性能機へとブラッシュアップした老舗の妙技

 ブレゲは、代表的な「クラシック」から優美な「クイーン・オブ・ネイプルズ」、絢爛豪華なハイジュエリーウォッチに至るまで、幅広いレディースウォッチに自動巻きムーブメントを用いている。そこには、女性用はあくまでもデザイン優先、ムーブメントにはこだわらないという安易な発想は微塵もない。フェミニンなデザインの背後で駆動するのは、伝統的な機械式を独自の技術で進化させた現代トップクラスのムーブメント。名門の名に恥じない高性能と高品質を誇る。

BREGUET

(左)クラシック ムーンフェイズ レディ 9088
小ぶりな径30mmのケースは「クラシック」のレディースモデルの定番。ブレゲ針とブレゲ数字、星をかたどった分目盛りとフランスのフルール・ド・リス(百合の花)を配したグランフー エナメルのダイアル、ムーンフェイズ表示など、すべてがブレゲの古典的意匠。自動巻き(Cal.537L)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径30mm)。3気圧防水。305万円。

(右)Cal.537L
ベースは1980年代にムーブメント専業メーカー、旧フレデリック・ピゲ(現ブランパン)が開発したCal.0815。このCal.0815は、厚さ2mmの超薄型手巻きCal.0810の上に片方向巻き上げ式の自動巻き機構を載せた高級機仕様。ブレゲのCal.537Lは、8 3/4リーニュ(19.74mm)、厚さ3.7mmで女性用の小型ケースに収まりが良い。

BASIC SPEC
●巻き上げ方式:片方向巻き上げ
●パワーリザーブ:約45時間
●ムーブメントサイズ:直径19.74mm/厚さ3.7mm
●ケースサイズ:直径30mm/厚さ9.8mm
●その他の特徴:シリコン製脱進機およびヒゲゼンマイ搭載、フリースプラング

「クラシック」は、240年以上もの歴史を背景にして、ブレゲの古典的スタイルを忠実に再現するフラッグシップコレクションだ。〝グラン フー〟エナメル仕上げのダイアルにブレゲ数字とブルースティールのブレゲ針を配した「クラシック ムーンフェイズ レディ 9088」もその代表である。

 このモデルに搭載されている自動巻きキャリバー537Lは、旧フレデリック・ピゲ製の薄型高級機キャリバー0815をベースにして、ブレゲが改良を施したもの。具体的には、ゴールド製ローターを採用して慣性を高め、片方向巻き上げ式の弱点を補って巻き上げ効率を高めていることと、最先端のシリコン製ヒゲゼンマイと脱進機を用いている点だ。

 ブレゲは、2006年という早い時期からシリコン素材の研究開発を進めていて、今や数多くのモデルに実装している。厳密な加工ができ、軽量なシリコン素材とフリースプラングテンプの相乗効果で、元のキャリバー0815の2万1600振動/時から2万5200振動/時へと向上したブレゲのキャリバー537Lは、一段と安定した高精度と信頼性を実現している。さらにまた、シリコン素材は非磁性なので、たとえば、女性用バッグの留め金に多用されているマグネットの影響で時計の心臓部が磁気帯びする危険も避けられる。

 定評のある熟成キャリバーをベースにして、巻き上げ効率や耐磁性、精度を刷新したブレゲの手堅い自動巻きムーブメントは、女性が日常的に使うには十分実用的で、エナメルダイアルやダイヤモンドの輝きがフェミニンなデザインを美しく彩るこの時計を背後で支える頼もしいパートナーを演じる。


Contact info:ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211




ミニサイズの自動巻き高級レディースウォッチとして名声を築く

 1956年に誕生した「レディバード」は、ブランパンの数ある名作のひとつ。サイズが小さく華奢なデザインのレディースウォッチがもてはやされた当時、オリジナルの「レディバード」には、市場で最も小さい丸型の機械式ムーブメントが搭載されていたことで有名だ。現代のブランパンもその伝統を受け継ぎ、ケース径21.5mmの小型ケースに精巧な自動巻きムーブメントを収める。これもまた、ブレゲと同様に、フレデリック・ピゲのキャリバーをベースにして、現代的な手法によって実用高級機として性能や品質の向上を図ったものだ。

BLANCPAIN

(左)ウーマン レディバード ウルトラスリム
ハートをデフォルメした愛らしいモチーフをマザー・オブ・パールのダイアルとストラップのチャームにアレンジ。ダイヤモンドの豪華な輝きにルビーのアクセントが映え、優美なジュエリーウォッチに仕上げた。自動巻き(Cal.6150)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KWG(直径21.5mm)。3気圧防水。218万円。

(右)Cal.6150
1980年代に復活したブランパンのためにフレデリック・ピゲが開発したCal.615がベース。手巻きCal.610に片方向巻き上げ式の自動巻き機構を載せたCal.615の改良型Cal.6150では、小径と薄さを維持しながら、プラチナ製ローターを用いることにより、巻き上がりにくいとされる自動巻きレディースウォッチの問題を見事に克服した。

BASIC SPEC
●巻き上げ方式:片方向巻き上げ
●パワーリザーブ:約40時間
●ムーブメントサイズ:直径15.7mm/厚さ3.9mm
●ケースサイズ:直径21.5mm/厚さ8.23mm
●その他の特徴:シリコン製ヒゲゼンマイ搭載、フリースプラング

 ブランパンが復活した1980年代にその強力な後ろ盾になったのは、ムーブメント専業メーカーのフレデリック・ピゲだ。ブランパンの成功を支えたフレデリック・ピゲは、2010年にブランパンに統合され、一心同体となって開発を進めるようになった。

 ブランパンの歴史的名作を現代に復活させ、チャーミングなデザインが女性たちを魅了する「レディバード」は、可愛らしい小型ケースに強力な自動巻きムーブメントを秘めている。キャリバー6150は、フレデリック・ピゲが1995年に開発した小型自動巻きムーブメント、キャリバー615をベースとする改良型である。ケースサイズ21.5㎜に収まる径15.7㎜のこのキャリバーは、1956年の初代「レディバード」に搭載された世界最小の丸型機械式ムーブメントとされる手巻きキャリバーR550の径11.85㎜よりはやや大きいとはいえ、自動巻きとしてはぎりぎりのコンパクトサイズ。約40時間のパワーリザーブが備わるのは秀逸だ。

 ブランパンもブレゲと同様に、自動巻きの巻き上げ効率を高める工夫として、慣性の高いプラチナ製ローターを採用し、さらにシリコン製ヒゲゼンマイとフリースプラングを用いるなどして高性能化を図っている。振動数が2万1600振動/時に据え置かれたのは、エネルギー消費を抑え気味にしてパワーリザーブの確保を狙ったものと思われる。径のみならず、ローターと自動巻き機構を載せて3.9㎜という薄さもキャリバー6150の注目すべき点だ。これにより洗練された高級腕時計に不可欠なエレガントでドレッシーな薄型のシルエットを「レディバード」に演出しているからだ。

Contact info:ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233