時計の正確さは時計の種類によって変わる?特徴や要因について解説

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2022.11.07

時間の正確さに影響を与える要因

現在でも、メカウォッチやクォーツウォッチは技術的な進化を続けており、いまだにその精度を増している。

しかし、全く時間のズレが生じないわけではない。日常的に起こりうるさまざまな外的要因が影響して、時間のズレが生じる場合があるのだ。

ここでは、時計の時間の正確さに影響を与える要因を3つ紹介する。

水の侵入

スーパーオーシャン ヘリテイジ B20 オートマチック42

防水性能はダイヤルや裏蓋に表記されることが多く、おおむねメートルとフィートが併記される。WATER RESISTもしくはW.R.の表記がないものは非防水であり、水に触れないように注意が必要だ。
ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテイジ B20 オートマチック42」 水深200m(660Ft)防水性能を備えたモデル。価格52万5000円。

非防水の時計の場合、水仕事をする際や雨天の際に腕に時計をつけたままにしておくと、水が時計の内部に入り込んで部品を損傷させてしまうことが考えられる。

また、一口に防水仕様の時計といっても、日常生活レベルでの防水加工しか施していないものや、水上スポーツ程度に対応しているもの、ダイビングに対応しているものなど、さまざまな防水のレベルがある。

水の侵入を防いで大切な時計を守るために、用途にあった時計を選ぶことが大切だ。

磁気

グランドセイコー SBGV243

第1種帯磁性能はJIS保証水準4800A/m(磁気に5㎝まで近づけてもほとんどの場合性能を維持できるレベル)、第2種帯磁性能はJIS保証水準16,000A/m(磁気に1㎝まで近づけてもほとんどの場合性能を維持できるレベル)と規定される。第1種、第2種の規格をクリアしたモデルは「耐磁時計」と表示することができる。
SEIKO「グランドセイコー SBGV243」 16,000A/mの帯磁性能を備えたハイスペックモデル。価格30万円。

時計は磁気の影響を受けると、突然止まったり遅れが生じたりする場合があるので注意が必要だ。

クォーツウォッチであれば磁気から遠ざければ時刻精度は回復するが、メカウォッチの場合は、一度磁気の影響を受けるとその磁気を自分で取り去ることはできない。完全に除去するためには修理が必要となる。

それだけ、時計は精密かつ繊細なものなのだ。各時計メーカーでは耐磁気性能が高い時計が販売されているので、気になる場合はチェックしてみるとよいだろう。

静電気

冬場の乾燥する時期には、内部にあるモーターが静電気の影響を受けて正常に動かなくなり、時計が正確に動作しない場合がある。特に、クォーツウォッチは内部に磁気モーターを使っていることから、静電気の影響を受けやすいのだ。

繊細な時計を静電気から守るためには、静電気防止ブレスレットを着用するなど、静電気が発生しないように配慮する必要がある。


電波時計について

標準時刻電波を送信する電波塔は日本に2か所、佐賀県佐賀市、福岡県糸島市境界の羽金山山頂付近に設置される「はがね山標準電波送信所」(写真)と福島県田村市都路町と双葉郡川内村境界の大鷹鳥谷山山頂付近にある「おおたかどや山標準電波送信所」がある。

電波時計とは、時計の中に内蔵されているアンテナが標準電波を受信することにより、自動的に時刻修正を行う時計だ。現在もっと正確な時刻を表示できる機能を備えたモデルといえる。

一般的な時計は、時間がズレた場合には自分で修正する必要があるが、電波時計はわざわざ修正する必要がないため、利便性が高い。

標準電波は国家標準であり、その電波は政府の管理の下に送信していることから、電波時計で表示される時間は、その正確性に対しても信頼がおける。

標準電波の日本に2局、他にアメリカ、イギリス、ドイツ、中国にあり、時計メーカーやモデルにより受信できる局が変わる。これにより、海外でも自動的に時刻が変わり時刻合わせのわずらわしさがない。

ここでは、電波時計の仕組みや受信方法などを詳しく解説する。

1993年、シチズンから発売された世界初の多極受信型電波時計。アンテナをダイヤル中央に配したユニークなモデルで注目を集めた。当時の価格は10万円。現在、アンテナはケース内部に装備され、また小型化したことで、幅広いモデルに搭載されている。

受信の仕組み

電波時計が、送信所から出ている標準電波を内蔵されているアンテナで受信すると、その受信信号が受信ICにより増幅され、デジタルコードへと変換される。

データには時刻コードが含まれており、CPUによって解析されたのち駆動モーターへ伝わり、時計の時間を自動修正する仕組み。

受信環境について

標準電波はほぼ1日中送信されているが、電波時計は電波を1日中受信しているわけではない。1日に数回、決まった時刻に電波を自動で受信し、時刻の修正を行っているのだ。ただし、環境によっては電波受信の精度に差が出ることがある。

以下のような環境は電波を比較的受信しやすいといえる。

  • 窓際
  • 周囲に障害物がない高台
  • 午前2〜4時頃
  • 木造建築物の中

また一方で、以下のような環境では電波を受信しにくくなることを知っておこう。

  • 工事現場や空港の近く
  • 電化製品の近く
  • 高圧線の近く
  • 鉄筋建物の中

ちなみに、日本の標準電波は、福島県にある「おおたかどや山標準電波送信所」と、福岡県と佐賀県の県境にある「はがね山標準電波送信所」から送信されている。

受信方法と受信にかかる時間

電波時計の受信方法は、定時受信とマニュアル受信のふたつの方法がある。定時受信は電波時計が自動的に受信するもので、マニュアル受信は自分で操作を行って強制的に受信するものだ。

マニュアル受信の操作は時計の機種により異なることから、取扱説明書を確認するとよいだろう。

受信にかかる時間については、受信を始めてから時間の修正が終わるまでに10分程度かかる場合がある。もちろん、受信環境によって受信にかかる時間は前後するが、より正確なデータを得るためにはある程度の時間が必要とされる。


時計の正確さについて知ろう

時計は、クォーツウォッチにしてもメカウォッチにしても、常に完璧な時を刻んでいるわけではない。温度や衝撃などの外部環境や使用方法などにより、多少の差が生じるものだ。

特に、メカウォッチはゼンマイの巻き上げなどが影響して、毎日微細な変化を生じることから、定期的に確認する必要があるだろう。

時間の正確性は種類によってさまざまであることから、それぞれの特性を把握した上で、自分に合った時計を選ぶことをおすすめする。

川部憲 Text by Ken Kawabe


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