エクストリームウォッチ最前線(後編)

FEATURE本誌記事
2020.09.01

アウトドア派へ贈る冒険家のための時計

雪原横断か、エベレスト登頂か、世界一周飛行か。このパートでは極限へ挑戦する者たちによって高い要求を課された時計と、その活動をサポートするブランドの取り組みを紹介する。

無着陸世界一周飛行をブライトリングとともに

ブライトリング オービター 3

 1999年、ベルトラン・ピカールとブライアン・ジョーンズは熱気球の「ブライトリング オービター 3」に乗り、世界で初めて無着陸世界一周飛行に成功。ブライトリングはこのプロジェクトでメインスポンサーを務め、国際航空避難信号送信機を搭載する「エマージェンシー」を気球飛行士たちに提供している。ブライトリングはこの並み外れたミッション成功の20周年を記念して、2019年にブラックチタン製ケースで、裏蓋に長旅を達成した気球のエングレービングを施した「コックピット B50 オービター リミテッドエディション」を発表した。この電子万能時計には、100分の1秒の精度で計時可能なクロノグラフとカウントダウンタイマー、フライトタイムメモリー、ふたつのデイリーアラーム、カレンダー、UTCワールドタイム等、数多くの機能が搭載される。

コックピット B50 オービター リミテッドエディション

ブライトリング「コックピット B50 オービター リミテッドエディション」
クォーツ(Cal.B50)。Ti+DLC(直径46mm、厚さ16.45mm)。100m防水。世界限定213本。100万円。問/ブライトリング・ジャパン Tel.03-3436-0011

アルプスの雪道をアルピナとともに

アルパイナーX

アルピナ「アルパイナーX」
クォーツ(Cal.MMT-283-1)。グラスファイバー×SS(直径45mm)。10気圧防水。世界限定25本。日本未発売。

 フランス・アルプスの700kmもの雪道を横断する国際犬ぞりレース「オデュッセイア大会」。2019年1月に開催されたこの大会で、アルピナはスポンサー兼オフィシャルタイムキーパーを務めた。12日間にわたるステージレース(複数日にわたるトータルの所要時間で総合優勝を争うレース)の勝者には、ブルーのケースとラバーストラップ、そして、グレーの文字盤を備えたスマートウォッチ「アルパイナーX」の特別限定モデルが贈られた。優勝者に贈られた1本以外の24本は市場で入手することができる(日本では未発売)。限定ではないアルパイナーXと同じく、この限定モデルも活動量計、睡眠検測、UVセンサー、通知機能、温度計、高度計といった数多くのコネクテッド機能やアウトドア機能を搭載している。

世界一周飛行をIWCとともに

パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・スピットファイア“ロンゲスト・フライト”

IWC「パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・スピットファイア“ロンゲスト・フライト”」
自動巻き(Cal.82760)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径46mm、厚さ15.2mm)。6気圧防水。世界限定250本。販売終了。問/IWC Tel.0120-05-1868

 2019年夏、1940年代の英国製の戦闘機、スピットファイアがレストアされ、世界一周飛行に旅立った。IWCはこの「シルバースピットファイア ‒ The Longest Flight(最長飛行)」プロジェクトのメインパートナーを務めた。歴史的な戦闘機に乗り込んだのは英国のパイロット、スティーブ・ボールトビー・ブルックスとマット・ジョーンズである。彼らは宣伝効果の大きい空港を選び、途中着陸をしながら世界を一周した。両者とも、このプロジェクトにふさわしいワールドタイムウォッチを着用していた。250本のみが限定で発売された「パイロット・ウォッチ・タイムゾーナー・スピットファイア“ロンゲスト・フライト”」では、ベゼルを左あるいは右に回すだけで、セカンドタイムゾーンを設定し、12時位置の窓に表示させることができる。

世界最高峰をブレモンとともに

プロジェクト・ポッシブル:14/7

 英国の時計ブランド、ブレモンは2019年、「プロジェクト・ポッシブル:14/7」のスポンサーを務めた。このプロジェクトでは、ブランドアンバサダーのニルマル・プルジャがわずか6カ月と6日で8000m峰14座すべてを制覇した。このチャレンジは4月23日にヒマラヤ山脈のアンナプルナの山頂に到着した際に始まり、10月29日にシシャパンマの登頂に成功したことで達成された。プルジャ以前の最速登頂記録は7年である。「ニムス」と自らを呼ぶネパールの元兵士プルジャは、以前にも8000m級の山々を単独、あるいは複数の峰で世界最速登頂記録を樹立し、その記録はいまだ破られていない。彼はその頃からすでにブレモンの時計を着用していた。今回の新記録樹立への挑戦時に選んだのはスーパーマリンの新作「S300 ホワイト」である。

スーパーマリン S300 ホワイト

ブレモン「スーパーマリン S300 ホワイト」
自動巻き(Cal.BE-92AV)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径40mm)。300m防水。日本未発売。

地中海をブランパンとともに

ゴンベッサV

 環境保護プロジェクト、ブランパン オーシャン コミットメントの一環として、ブランパンは2019年7月、ローラン・バレスタが率いるチームの第5次調査探検「ゴンベッサV」を支援した。今回、フランスの海洋生物学者、エクストリームダイバー、水中写真家であるバレスタが海洋調査に選んだのは地中海である。4名で構成される調査チームは南フランスの地中海沿岸からスタートし、毎日水深100m地点で数時間に及ぶ探査潜水を行った。いつものように、「500 ファゾムス」といったブランパンのダイバーズウォッチも、もちろん同行した。同様にプロフェッショナル仕様時計として、300mの防水性能を備えた「X ファゾムス」もある。ヘリウムエスケープバルブ、機械式水深計、最大潜水深度表示、約120時間のパワーリザーブを備える。

X ファゾムス

ブランパン「X ファゾムス」
自動巻き(Cal.9918B)。44石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。Ti(直径55.65mm、厚さ24mm)。300m防水。400万円。問/ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233

サイの保護をウブロとともに

ウブロ「ビッグ・バン ウニコ SORAI」
自動巻き(Cal.HUB1242)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックス(直径45mm)。100m防水。世界限定100本。販売終了。

 ウブロはイギリスの元クリケット選手、ケビン・ピーターセンが2018年に設立したサイの保護団体、SORAI(Save Our RhinoAfrica and India/サイを救え、アフリカ・インド)とパートナーシップを提携し、密猟によって絶滅の危機に瀕するアフリカとインドのサイの保護に協力している。ウブロは「ビッグ・バン ウニコ SORAI」(現在は完売)を製作し、その収益の大部分が親を失ったサイの赤ちゃんの保護とケアを行うプログラムや、南アフリカ国立公園の夜間の監視機能を強化する活動に役立てられた。

グリーンランドをミューレ・グラスヒュッテとともに

ロバート・ジャスパー

 ミューレ・グラスヒュッテが2001年からスポンサーを務めるドイツのエクストリーム・アルピニスト、ロバート・ジャスパーは、2018年の夏、東グリーンランドを2カ月かけて探訪した。人の住む最後の地、クングミットから折りたたみ式カヤックで100km以上移動して、ほぼ同じ距離を徒歩で戻り、フォックス・ジョー・シルク山脈にある約1000mのモラー・スパイア岩壁を人類で初めて単独征服した。その間、ジャスパーの手首には常にミューレ・グラスヒュッテの「プロマーレ・クロノグラフ」があった。300m防水、傷に強いセラミックス製インサート付きベゼル、カーフレザーとラバーで出来た耐裂性と耐水性に優れたストラップを備えたこの時計は、傷や水による損傷に高い耐久性を示す。

プロマーレ・クロノグラフ

ミューレ・グラスヒュッテ「プロマーレ・クロノグラフ」
自動巻き(Cal.MU 9408)。27石。2万8800振動/時。SS(直径44mm)。300m防水。日本未発売。

南極地域をジンとともに

マーティン・レイトル

 救急医、航空救助隊隊員、山岳スキーガイドの資格を持つマーティン・レイトルは、すべての任務でジンのインストゥルメントウォッチを使用している。レイトルが2016年から医師兼山岳ガイドとして参加している南極遠征にもジンの時計は同行している。初めて南極地域を訪れた際、彼はチタン製のクロノグラフ、「EZM10.TESTAF」を着用したが、ドクターヘリの救命医師のためのカウントダウン式回転ベゼルとカウントアップ式インナーベゼルを備えた「EZM12」を知ってからは、常にこのモデルを携行している。

EZM12

ジン「EZM12」
自動巻き(Cal.ETA2836-2)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径44mm、厚さ14mm)。20気圧防水。世界限定300本。56万円。問/ホッタ Tel.03-6226-4715