グランドセイコーの新作は文字盤がとにかく凄い!! その凝った作りをディープに解説/「エレガンスコレクション 24節気モデル」

FEATUREその他
2021.04.28

「小暑」

グランドセイコー エレガンスコレクション 24節気モデル,小暑

グランドセイコー「エレガンスコレクション メカニカルハイビート GMT SBGJ249」
自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS(直径39.5mm、厚さ14.1mm)。日常生活防水。81万4000円(税込み)。5月28日発売予定。

「梅雨が明け本格的な夏の到来を感じる小暑。初夏の太陽のもと、爽やかな風で湖や池が揺らめく。梅雨明けに吹く「白南風(しらはえ)」によって起こる絶え間ないさざ波のイメージをダイヤルデザインに落とし込みました。「さざ波」のようなダイヤルパターンと10振動のハイビートムーブメントが生み出す力強い秒針の動きが響き合うモデルです」

 グランドセイコーの個性が、プレスで施した深い模様と、分厚いラッカーの文字盤である。それを盛り込んだのが「小暑」。下地に深い模様を施すと、どうしても印字が歪んでしまう。そこでラッカーを分厚く吹いて表面をフラットにするが、ラッカーを厚く吹くほど、気泡が入りやすくなるし、乾燥にも時間がかかる。各社が、文字盤に深い模様を刻みたがらない理由だ。一方本作は、可能な限りラッカーを厚く吹き、表面を研ぎ上げることで、立体感と平たさの両立に成功した。写真を見れば分かるとおり、文字盤上の印字は、文字盤から浮き上がっているように見える。

 文字盤のパターンも面白い。文字盤には大きなパターンを施さないのが時計業界の「お約束」だ。大きな模様は、インデックスや針と見えにくくさせるからだ。しかし、本作はあえてさざ波をイメージした大きなパターンを採用。プレスで下地を荒らすことで、鏡面に仕上げたインデックスや針との明快なコントラストを得た。プレスで細かな模様を施せるのは、グランドセイコーの強みである。


「寒露」

グランドセイコー エレガンスコレクション 24節気モデル,寒露

グランドセイコー「エレガンスコレクション スプリングドライブ GMT SBGE271」
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R66)。30石。パワーリザーブ約72時間。SS(直径40.2mm、厚さ14.0mm)。日常生活強化防水。72万6000円(税込み)。9月17日発売予定。

「草木に冷たい露が宿り、朝夕はひんやりと肌寒く、本格的に秋も深まる寒露。夏の喧騒から解き放たれ、秋の夜長の落ち着きを感じるころ。鰯雲から覗く月が美しく輝いて見える、静寂の「良夜(りょうや)」をイメージしたダイヤルデザインです。スプリングドライブの秒針の静かでスムースな動きが、月が夜空を静かに横断していく様子に重なります」

 秋をイメージした寒露は、やはりランダムなパターンをプレスで施し、その上からラッカーで黒を施したもの。最終的な仕上げは、他のモデルに同じく、クリアラッカーの厚塗りだ。下地のパターンを強く施したため、このモデルのみ、平滑なラッカーを通して、その模様が浮かび上がってくる。わずかにブラウンがかって見えるのも面白い。

 印字も良質である。イエローゴールドカラーのGMT針に合わせて、印字の色もわずかに落とされた。見た感じゴールドカラーに思えるが、おそらくはクリーム色か。メカニカルの印字と比較すると、印字の盛り上がりをあえて抑え、しかし、ムラのない発色を得ている。かつてのグランドセイコーは、ムラのない発色を得るために、印字を厚くする傾向があった。しかし最近は、薄くてムラのない印字も採用する。


「冬至」

グランドセイコー エレガンスコレクション 24節気モデル,冬至

グランドセイコー「エレガンスコレクション スプリングドライブ GMT SBGE269」
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9R66)。30石。パワーリザーブ約72時間。SS(直径40.2mm、厚さ14.0mm)。日常生活強化防水。72万6000円(税込み)。9月17日発売予定。

「一年で最も昼間が短く、空気が澄んだ時期の冬至。静寂な雪景色の中でも、ふと太陽のぬくもりを感じることがあります。雪が止み、染み入るような静けさと寒さの中で輝く「雪晴れ」の夕日をイメージしたダイヤルデザインです。深々と降り積もった雪をダイヤルで、夕日の柔らかな光をGMT針で表現しています」

 本作の文字盤は、プレスで細かな模様を施し、その上にメッキをかけ、表面にラッカーを厚く吹いている。もちろん、他のモデル同様、ラッカーは丁寧に研ぎ上げてある。その証拠に、文字盤外周にはまったく歪みがない。乾燥が十分でないと、研ぎ上げたラッカー文字盤は、とりわけ外周に歪みが生じてしまう。しかし、十分に乾燥させ、丁寧に研ぎ上げるグランドセイコーのラッカーにはまったく歪みがない。

 プレスで細かな模様を施すのは、スプリングドライブ搭載機で一層見られるディテール。しかし、本作は文字盤の荒らし方がいっそう細かくなった。荒らしが細かすぎると文字盤は平板に見えてしまうが、多少荒さを残し、模様の突端をわずかに潰すことで、機械仕上げでは不可能な、抑揚のあるニュアンスを得た。なお、このモデルのGMTの印字は、「寒露」に同じ色である(詳細は不明)。肉眼で見た発色はやや強く感じるが、結果として良いアクセントになっている。

 文字盤という個性を前面に押し出した「グランドセイコー エレガンスコレクション 24節気モデル」。文章と公式の写真で説明してみたが、これらの文字盤の良さを、上手く伝えたとは言いがたい。できれば、店舗に足を運び、実際に確認していただければと思う。喜ばしいことに、この4モデルは、限定品ではない。実物を見て検討できるという点でも、魅力的ではないか。


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