ヴァン クリーフ&アーペルが紡ぎ出す 「時を知らせる庭園」の超絶技法

FEATUREその他
2022.03.31

開花順を制御するのは、遊星歯車の中心に置かれた積層カム

 特殊なモジュールの中にオフセット配置された自動巻きのベースムーブメントは、1周3時間をかけて外周リングを回転させる(ちょうどリング3分の1にあたる面積が、分の表示機能としてケース側面に露出している)。

 この外周ミニットリングの動きは中間車を介して、内部に専用のゼンマイを仕込んだアニメーションバレルを巻き上げてゆき、1時間に1度、ストップカムを解放してゼンマイのトルクを一気に解き放つ。するとアニメーションバレルが1/4回転して、花弁を支えるプラネタリーギアに力を伝える。4対あるプラネタリーギアには、3つの衛星車(花3つ分)が組み込まれており、さらにひとつの衛星車には、5枚の花弁となる5枚の歯車が仕込まれている。

 ダイアルだけを取り外すと、そこには花弁の数と同じ60本のピンが立っているのだが、その姿はなかなかに壮観だ。プラネタリーギアの中心部は9歯と8歯のカムが重ねられており、実際に遊星車を動かしているのは先端に櫛歯を刻んだカムだ。

 この櫛歯カムの運動量を制御しているのが中にあるピラーホイール状の積層カムで、36時間の開花ローテーションを制御している。なお、開花スピードをゆっくり均一にするために、ミニッツリピーターの調速に用いられる遠心ガバナーも併用されている。


同時発表された時計製造における芸術性の頂点

ヴァン クリーフ&アーペル「オートマタ プラネタリウム」
天空儀、時分表示、パーペチュアルカレンダー、カリヨン式のオルゴールなどを備え、オンデマンドアニメーション機能を併載。高さ50cm、幅66.5cm。時分表示部分の扉を開いた状態では、幅108cmにも達する。ユニークピース。参考商品。

 古くからヴァン クリーフ&アーペルが手掛けてきた、エクストラオーディナリー オブジェの伝統に連なる超大作が「オートマタ プラネタリウム」だ。腕時計というサイズ的な制限からも解放されたこのクロックは、純粋に時計製造における芸術面を昇華させた逸品だ。

コンプリタイムと共同開発されたパーペチュアルカレンダーの制御部分。オブジェの下部(扉の内側)には、時分表示、昼夜表示、日/月/年のパーペチュアルカレンダー、約15日間のパワーリザーブ表示などが並ぶ。

 高さ50cm、幅66.5cmにも及ぶ巨大なユニークピースは、時分表示が隠された側面のドアを開くと、幅108cmにも達する。その正体は、パーペチュアルカレンダー表示と、6つの惑星を持つ天球儀、そしてオンデマンドアニメーション機能を持ったオートマタを組み合わせたものだ。ムーブメントを共同開発したのは、グルーベル・フォルセイ率いるコンプリタイムだ。