ダイバーズウォッチの最高峰に搭載されたムーンフェイズ ブランパン「フィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダー」

FEATURE本誌記事
2022.10.03

 文字盤デザインも非常に秀逸だ。コンプリートカレンダーにムーンフェイズを組み合わせた古典的な構成は文字盤上に凝縮感を与えるため、ケースサイズ以上にコンパクトな印象を受ける。そこに繊細なサンバーストを残したラッカー塗装を組み合わせることで、スポーツウォッチらしさの中に、エレガントなキャラクターを巧みに同居させているのだ。ハイスペックをうたい、幅広いシーンでの対応を強調するブランド/時計は数多くあるが、ダイブスキンからスーツスタイルまで違和感なく着用できるモデルは同モデルくらいではないか。

 そしてフィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダーを語るうえで最も欠かせないのが、6時位置に配されたムーンフェイズである。ブランパンのムーンフェイズといえばフィフティ ファゾムスと並ぶブランドのアイコンであり、月に顔が描かれたムーンディスクが特徴的だ。

 しかし、前述のように視認性を重要視するダイバーズウォッチではシンプルな文字盤デザインが好まれる傾向にあり、ブランパンでもムーンフェイズをフィフティ ファゾムスに載せることは稀だ。月の満ち欠け(=月相)を知らせる同機構は潮汐の読み取りに応用できるため、ダイバーズウォッチとの相性も悪くないはずだが、現在、この “共演” を堪能できるモデルは、同モデルの他ではフィフティ ファゾムス オートマティックに1モデルあるのみである。

文字盤下のCal.6654.Pの日の裏側。曜日と月表示は2枚のディスクを回すタイプであることが分かる。ムーンフェイズは59日でディスクが1周するベーシックなものだ。各カレンダーおよびムーンフェイズの早送りはそれぞれケースサイドに設けられたコレクターを押すことで行う。ケースの気密性を高めるためには開口部を極力少なくしたいところだが、ブランパンは300m防水と操作性の両立をしっかりと実現した。

 そんなフィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダーは長らくステンレススティールケースモデルのみの展開だったが、2022年6月に待望のバリエーションが登場している。追加されたのはグレード23チタンケースと18KRGケースの2種類5型だ。グレード23チタンはベースとなるチタンの純度が高いため、グレード5よりも耐食性に優れ、さらにアレルギーも発生しづらい、医療用チタンである。まさにダイバーズウォッチとして理想的な素材である。18KRGケースはブルーダイアルとの組み合わせが上品さを醸し出しており、ブランパンの掲げる “ノーブルダイバー” という方向性と最も合致している。

 ダイバーズウォッチという本質を決して逸脱することなく、その中で多彩なキャラクターを模索するフィフティ ファゾムスコレクション。フィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダーで見せた〝アイコンの共演〞は、そんな土壌の中だからこそ成し得た快挙だ。

フィフティ ファゾムス バチスカーフ コンプリートカレンダー
ブランパンを代表するフィフティ ファゾムスとムーンフェイズを組み合わせたモデル。これまでSSケースのみの展開だったが、2022年6月にTiケースと18KRGケースが追加された。Tiモデルには近年、ブランパンが採用を進める医療用チタンであるグレード23が使われている。自動巻き(Cal.6654.P)。28石。2万8800振動/ 時。パワーリザーブ約72時間。直径43mm。厚さ13.4mm。300m防水。(左)Ti。209万円(税込み)。(右)18KRG。393万8000円(税込み)。



Contact info: ブランパン ブティック銀座 Tel.03-6254-7233


ブランパン〝フィフティ ファゾムス〟の名を継ぐ、ふたつのダイバーズが歩む道

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ブランパン「フィフティ ファゾムス」の名前の由来をひもとく

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アイコニックピースの肖像 ブランパン/フィフティ ファゾムス

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