オメガの「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」を実機レビュー。定番の実力はブレスレットにもあり

FEATUREインプレッション
2023.04.11

スピードマスターは成長し続ける究極の実用時計

 2021年の登場以来、さまざまな切り口でスピードマスターが紹介されている。そのなかで、私は何を紹介すべきか。ズバリ、着け心地である。今モデルにとって、新ムーブメント、キャリバー3861の搭載こそが最大のトピックスではあるが、ブレスレットが刷新されたことも注目ポイントとなっている。

スピードマスター ムーンウォッチ

 最大の特徴は、前モデルと比べてブレスレットのひとコマが小さくなったこと。それゆえに装着感が各段によくなったのである。以前のブレスレットを否定するものではないが、手首に“滑らかにフィット”する。これは決して誇張ではなく、「お!」という驚きがあったほどだ。

 左右幅が少し細くなったことも、着け心地の良さにつながっている。コマが大きく、太いブレスレットの“使い勝手”を考えた場合、やはりある程度の腕の太さがあった方がいい。だがこれなら腕の細い方にとっても、使いやすいはずだ。

 またコマが小さいことで、微細な調整もしやすく、クラスプ(留め具)の位置が手首の中央に収まるのもありがたい。手首が細く、スピードマスターのブレスレットを諦めていたという方は、ぜひともチャレンジされたい。きっと、そのフィット感に驚かれるはずである。

 そのクラスプだが、こちらもデザインを一新。プッシュボタンで開閉するスタイルは変わっていないが、ポテッと丸みを帯びていた形状から、ライン入りのシャープなフォルムへと変更され、クラスプだけでも魅力的だ。繊細さがあるブレスレットにもよく合い、スピードマスターをスタイルアップしている。

スピードマスター ムーンウォッチ

 ブレスレットは5列で構成され、通常モデルではオールサテン、シースルーバックモデルでは2列目と4列目をポリッシュ仕上げとしている。ともに装着感に差はないが、見た目には大きな違いが生まれた。それが若々しさとエレガントさだ。

 今回はシースルーバックモデルだったため、ブレスレットはサテン&ポリッシュだったが、ポリッシュといっても決して“ギラギラ”と輝くわけではなく、好ましいと表現するのが最適な輝き具合で、スピードマスターの印象を変えるものではなかった。レザーストラップやナイロンストラップモデルもラインナップしているが、ぜひ、一度、ブレスレットの装着感を味わっていただきたい。

 そして1万5000ガウスに対応しながら、シースルーバックにできる実力には驚かされた。だからこその「マスター クロノメーター」だと言われたらそれまでなのだが、これまで耐磁性能を上げるためには、ムーブメントをインナーケースに収納する必要があり、それが名長く常識だった。

 しかし今モデルでは、実用性に加えて、ムーブメントを鑑賞できるという趣味性を兼ね備えたという点において、その技術革新に「すごいなぁ」と素直に感心してしまった。

スピードマスター ムーンウォッチ

 私が最初にスピードマスターに触れたのは1990年代前半だ。あのころからスピードマスターはスピードマスターであったし、すでにその地位はムーンウォッチとして不動のものになっていた。

その後、マイナーチェンジがあれば触れる機会はあったが、継続的にスピードマスターに注目していたかと問われたら「否」である。次から次へと登場する新作に最前列を取られていくうちに、当たり前の存在として、無意識下にあったといえる。

 しかし3週間の付き合いを通して、改めて無意識下から“スピードマスター”が浮上し、その実力を「再発見」し、「再確認」することになったというわけである。

 約130gという重さも13.2mmの厚みも、ブレスレットの装着感とケース形状のおかげで重さや厚みを感じることがなかった。試着する機会があればラグの内側のカーブ形状にも注目いただきたい。またケース径42mmもちょうどよかった。果たして1万5000ガウスの耐磁性能は日常使いにはオーバースペックだろう。

 しかしいまや、どこに強力な磁場があるのかわからない時代になっている。パソコンにも携帯電話にも、エスカレーターにだってある。そんななかで、「どこでも平気」は、最高の使い勝手だといえるだろう。加えて、老眼・鳥目でも、マットブラックの文字盤に白いインデックスの視認性は損なわれることなく、「定番に死角ナシ」という結論に達することになる。

スピードマスター ムーンウォッチ

 そして気づいた。「究極の実用時計だったからこそ、宇宙に行けたのだ」と。そして、改良・改善を厭わない姿勢が次段階の定番を創る。それはスポーツも同様だ。

「成長し続ける定番に怖いものナシ」なのである。

 オメガとWBC、まったく別物だが期せずして同じタイミングで私のところにやってきて、それぞれの魅力を再発見・再確認することになった3週間。日米で始まった野球の興奮は、残念ながらオメガとともに味わうことはできない。お返しするのが寂しい。



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