ジラール・ペルゴ/ヴィンテージ 1945

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.10.25

新たなディテールで構築された復刻調の現代時計
Vintage 1945 Date & Small Second

ヴィンテージ1945 デイト&スモールセコンド
1時半位置にデイト表示を持つ現行機。なおブレスレット付きもあるが、そちらのケースサイズはこのモデルよりわずかに小さい。自動巻き(Cal.3300-0035)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SS(縦33.3×横32.46mm)。30m防水。99万円。

 1992年からジラール・ペルゴの経営を引き継いだ人物がルイジ・マカルーソであった。彼は時計師ではなかったが、イタリア最大の時計輸入商であり、数多くのブランドをイタリア国内に広めた。買収後の彼は、ふたつの柱を立てた。ひとつは自社製ムーブメント、もうひとつは他にないデザインである。

 93年に発表された「リシュビル」は、明らかにその先駆けと言えるだろう。しかしより注目を集めたのは、アンティーク風の「ヴィンテージ94」であった。このモデルの成功を継いで生まれたのが、やはり往年のモデルに範を取った「ヴィンテージ 1945」(96年)である。搭載したのは、94に同じく、プゾー7001。しかし1年後には、完成したばかりの自社製自動巻き、キャリバー3000(現行品は3300)に置き換えられた。

 ヴィンテージ 1945に大きな成功をもたらした最大の理由は、優れたデザインにある。建築家であったマカルーソは、40年代のレクタンギュラーモデルを、〝エルゴノミック〟に改良することに成功した。加えて厚さ2.98㎜しかないキャリバー3000も成功の要因となった。一部の例外もあるが、薄型ムーブメントを載せた結果として、この時計はケースバックを大きく湾曲させることが可能になったのだ。このレトロ風な時計は、見た目からは想像できない卓越した着け心地を得たのである。

 90年代以降、マカルーソは時計にエルゴノミックなデザインを与えようと心がけてきた。「ヴィンテージ 1945」とは、その先駆けであり、そして最高傑作となった。以降このコレクションは、さまざまなバリエーションを加えていくことになる。

(左上)原型を忠実に再現したラグ。ただしケースサイドとラグはわずかに太らされた。(右上)6時位置から見た様子。近年のジラール・ペルゴらしく、立体感はいっそう強調された。文字盤の湾曲は極めて強いが、9時位置のスモールセコンドはフラットである。また外周を一段上げることで、立体感を強めている。(中)ケースサイド。薄型のムーブメントを搭載することで、ヴィンテージ 1945は、全体が湾曲したケースを採用することに成功した。ただカーブしたサファイアガラスや、同じく曲がったケースなどは、製造コストが極めてかかる。ヴィンテージ 1945(とりわけ現行品)の価格が、決して安くない理由だ。(左下)トランスパレントのケースバックから覗くのは、自社製のCal.3300。ちなみにヴィンテージ 1945の基本的な造形は、1995年の発表時から現在まで、ほとんど変わっていない。ただバックケースの形状にはいくつかのバリエーションがある。大別すると、湾曲したものとフラットなものがあり、しかも形状の違いを含めると、最低でも5つのバリエーションに分かれる。これはわずかに湾曲した、現行モデルのバックケース。より高価なモデルには、湾曲の強いバックケースが与えられる。(右下)スモールセコンド。驚くことに、立体的な外周部も、切削で仕上げられたものだ。