【85点】チューダー/ ブラックベイ クロノ

FEATUREスペックテスト
2020.09.02

ブラックベイ クロノはレザーストラップのほか、ステンレススティール製ブレスレットやファブリックストラップ装備モデルもラインナップされる。リスト回りの素材を取り替えるだけで、がらりとムードが変わるのが面白い。

 チューダーから、特徴的なポイントを過去の作品から吟味して構成したクロノグラフが出ている。このブラックベイ クロノはドーム型サファイアクリスタル製風防と文字盤の構成が1954年に登場したチューダー初のダイバーズウォッチに基づいていて、存在感のあるリュウズは58年に同ブランドが初めてリリースした20気圧防水モデルを参考にしている。「スノーフレーク」針と呼ばれる時針は、70年代にフランス海軍に納品されたモデルを想起させるものだ。これらの海洋関連モデルの遺産とも言うべき各要素は、チューダーが同じく力を入れてきたモータースポーツとも密接に結び付いている。このクロノグラフでは、モータースポーツモデルでおなじみのタキメーターが刻印されたベゼルがスポーティーさを前面に押し出している

 このブラックベイ クロノに搭載されているムーブメントはブライトリングのキャリバー01がベースになっているが、シリコン製ヘアスプリングを使用した自社開発のフリースプラングテンプを採用し、ローターもオリジナルのものにしたうえでC.O.S.C.によるスイス公式クロノメーターの認定を受けている。

 だが、ブラックベイ クロノは、モデルの特徴ゆえにクロノグラフの視認性にある問題を伴ってしまった。雪の結晶をイメージする「スノーフレーク」針の正方形部分が面積を占めているため、45分積算計とスモールセコンドの各スモールダイアルに被ってしまうのだ。

 時にも気になる点が発生する。200m防水になっているのは喜ばしいことだが、そのためにチューダーのかつてのクロノグラフと同じくリュウズもプッシュボタンもねじ込み式になっている。クロノグラフを操作するには、プッシュボタンのネジをゆるめなくてはならないのだ。そして、スタートのためにプッシュボタンを押すには、十分な力が要る。それとは対照的に、一度ストップしてから再スタートする際は楽に押せる。また、大きな衝撃を受けるリセット時は積算針が正確に帰零するのが心地よい。


ストラップとブレスレットは計3種類

 ラックベイ クロノは3種類の中からストラップもしくはブレスレットを選べるようになっている。ステンレススティール製のブレスレットは、1950年代や60年代の雰囲気を彷彿とさせるリベット打ちのコマをつないだものだ。また、チューダーコレクションの特徴となっているファブリックストラップも興味深い。サン・テティエンヌ地方を拠点にした150年にわたる歴史を持つファミリーカンパニーで、19世紀のジャカード織り機を用いて織られている。

 そして、編集部が最も気に入ったのがカーフストラップだ。柔らかくなじむ上質なブラウンカーフレザーを採用し、装着感が良い。なによりもレザーのレトロな質感が、より一層このクロノグラフの魅力を引き立ててくれるのだ。