【81点】ブライトリング/アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション

FEATUREスペックテスト
2020.05.16
アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション

チタンケースは表面にDLC加工を施したマットな仕上がり。ダークグリーンの文字盤およびストラップとの絶妙な組み合わせが、“ナイトミッション”という名にふさわしい雰囲気を醸し出している。

 「おー、こりゃアツイな!」。そんな言葉が飛び出すだろう。ブライトリングの「アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション」を友人や仕事仲間に披露したら、皆に好意的に受け入れられるに違いない。この時計は6モデル、14型がラインナップされているアベンジャーコレクションの中でも核となる1本だ。アベンジャーコレクションは以前、コルトコレクションとして出ていた4モデルを統合して昨秋にリニューアルを行い、一層引き締まった感がある。

 今回のテストモデルでまず好感を持ったのは、スポーティーさが強調されたデザインだ。ミリタリー調のグリーンで構成された文字盤にレザーストラップを組み合わせ、ケースは〝ナイトミッション〞という名前が示すようにダークにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングされている。全体的にどこを見ても伝わってくるのは力強さと頑健さだ。幅広のベゼルは操作のガイドとなるライダータブを4カ所に付け、プッシュボタンはがっしりと安定感のある作り。大きなねじ込み式リュウズはガードを備え、文字盤のアワーインデックスはひときわ目立つアラビア数字、そしてカーフストラップにはテキスタイルパターンをエンボス加工して小技を利かせている。

 サイズはケース径45㎜、厚さ16.5㎜と大型ではあるが、パワフルな外見にもかかわらず圧迫感はない。直径も厚さもさほど主張せず、着けてみても堂々たる存在感を見せながらも快適さを損なうようなところが少しも感じられないのだ。肌当たりがソフトになるように角を落としたケース裏面や裏面のなめらかなストラップが着け心地を上質なものにしている。また、この優れた装着感にはもちろん重さも一役買っていて、チタンケースを採用しているためヘッドのみの重量が130gと、このサイズのクロノグラフとしては比較的軽量なのだ。

インパクトあるデザイン

 どっしりとしたケースの表面はDLCで硬化処理されていて、ミリタリー調の外見に合った仕上がりになっている。炭素で被膜を作るDLCコーティングは他のメーカーでは黒色が一般的だが、ブライトリングはこのモデルをアンスラサイトカラー(スモーキーグレー)に仕立てているので、ダイアルカラーのオリーブグリーンとの調和もより良く感じられる。

 ケースにサテン仕上げが入れられているところも、よく練られたミリタリーデザインにふさわしい。しかしひとつだけ惜しいのは、表面が鏡面ではなくマットに仕上がっているにもかかわらず、あちこちに指紋が付いてしまうことだ。シンプルな形状のベゼルだと指紋が目立つのはありがちだが、このモデルはことにベゼルに4カ所設けられたライダータブのあたりが拭き取りにくくなっている。

 文字盤を見ると、ミリタリーテイストの数字が目に入る。このフォントはアベンジャーコレクションの典型的な要素のひとつだ。2、5、8などの数字を見ると分かりやすいが、縦線が入ったようになっていて、軍用車両やブンカー(地下防空壕)などに書かれている数字を想わせる。

パワフルな発光

 数字、針、逆回転防止ベゼルのポイントには夜光塗料が施され、暗がりでは力強く発光する。そのため視認性は数時間にわたって安心できるほど高い。おおよその時刻の読み取りは昼夜を問わず、素早い把握が可能だが、ダークグリーンの文字盤に組み合わされる分の目盛りがかなり細かくなっているためコントラストは弱く、厳密な時刻を確認するには注視が必要だろう。クロノグラフ針もダークグレーなのでメリハリが効いているとは言えず、文字盤の見え方としては特筆して見やすいわけではない。

 ケースの加工はハイレベルで、機能性を考慮した作りになっている。ありがたいことに防水性能は30気圧と高く、ベゼルは逆回転防止仕様で夜光ポイント付きだ。ストラップを付け替えることで、パイロットウォッチでありながらダイビングにも使えるのではと想像が膨らむ。ベゼルは4カ所のライダータブのおかげで非常につかみやすく、クロノグラフのプッシュボタンは堅固なガードに囲まれていて、サイドから不意にぶつかることによって生じるリュウズへのダメージを防いでくれる。一方、裏面はすっきりとまとまっている印象だ。ボリュームのあるチタン製の裏蓋には、コレクション名が記されている。

チューンナップしたムーブメント

アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッション

ねじ込み式できっちりと閉じられた裏蓋の内部に格納されているムーブメントは、セリタ製のSW500をベースとしたCal.13。SW500は汎用機としてメジャーなクロノグラフムーブメントだが、ブライトリングでは同ムーブメントの“クロノメーター”グレードに手を加えることで、C.O.S.C.のクロノメーター認定を得ている。

 クロノグラフの操作は軽やかで、スタート、ストップ、リセットも楽に行える。むしろ感触は若干軽すぎるかもしれない。細かいことを言えば、指の腹が当たる部分は力がぐっとかかるところだけに、さらに良い感触に仕立てられるはずだ。

 これらの機能を担うムーブメントはセリタの自動巻きキャリバーSW500をベースにしたキャリバー13である。ブライトリングの機械式時計はそのすべてがC.O.S.C.によってクロノメーター認定されていて、このモデルのベースムーブメントはセリタが3段階に定めた等級のうちの最上級である〝クロノメーター〞に相当する。スイス公認クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)では5姿勢でムーブメントのテストが行われ、クロノグラフを停止した状態で平均日差がマイナス4〜プラス6秒の間に収まっているものがクロノメーターとして認可される。しかし、クロノスドイツ版編集部でチェックするのは〝12時上〞のポジションを加えた全6姿勢だ。このポジションは、ムービングマシンに掛けて動かすテストでは何時間か休ませる時に取る姿勢になりがちなのだが、実際の着用時には、文字盤を見る時に腕を動かすと、この姿勢になることが多い。歩度測定器に掛けた結果は平均日差がプラス4.7秒とクロノメーターの規定通りで、姿勢差も最大6秒とわずかな値に収まった。そして着用テストではどの日も日差5秒以内に収まった。

 この精密で頑強なクロノグラフムーブメントにあえて何か気になった点を挙げるとすれば、テストウォッチでは針合わせの際に針が思うほど素直には動かなかったことだろうか。時間修正時には分針が一発で目指す箇所に来ず、やや通り越してから戻すと正確な位置に定まった。この操作は今回のテストウォッチでは極めて大事で、勘所を押さえないと、針合わせの最後にリュウズを押し戻す際に針がちょっと動いて位置がずれてしまうのだ。

総合的になかなかの好感度

 チェック項目をすべてテストし終えた感想は、第一印象から予想した通りだった。ブライトリングはこのニューモデルで機能性がデザインと一体化した、たくましくも日常使いにふさわしいスポーツウォッチを完成させたのである。デザインでとりわけ評価したいのは、ケース加工の丁寧さならびに装着感と操作性の優秀さだ。クロノグラフ針がもう少し見やすければ、もっと良かったのだが。

 アベンジャー クロノグラフ 45 ナイトミッションは、良き相棒として昼間はもちろんのこと、その名の通り、夜になっても生活を彩るというミッションを果たしてくれるだろう。