技術屋と評されるジャガー・ルクルトの真価。ムーブメントの特徴解説

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2021.04.27

ジャガー・ルクルトとムーブメント

卓越した技術力を備えるジャガー・ルクルトは、ムーブメントメーカーとしても活躍していた経緯を持つ。情熱的な挑戦を続けてきた歴史を見ておこう。

数多くの自社製キャリバーを製造

ミリオノメーター

1000分の1mm単位を測定できる「ミリオノメーター」により、いち早く高精度なエボーシュの製造を可能とした。

ジャガー・ルクルトは、1844年のミリオノメーター発明などにより精巧な時計部品の製造が可能となり、早い段階から優れた生産システムを確立した。

事実、創業から1900年までの約350種類の自社製ムーブメントを製造しており、クロノグラフ機能やリピーター機能を備えた複雑系が半数以上を占めていることも特徴的だ。

複雑機構だけでなく、超薄型・超小型の機構も開発している。どのような時計に対しても、目的に合わせたムーブメントを製造できる技術を備えていたのだ。

高い技術力を生かし、創業当時から複雑機構を中心としたムーブメントを製造し続けていたことから、技術屋と呼ばれていたのも納得できるだろう。

代表的なキャリバー101

Cal.101

世界最小の手巻きムーブメントCal.101。

20世紀前半のレディースウォッチは、現代よりも小型なものが好まれていた。しかし、時計を小型化すれば品質に悪影響を及ぼし、大量生産には向かないという課題に直面することになる。

この難題にチャレンジしたジャガー・ルクルトは、1929年、世界最小の手巻きムーブメント「キャリバー101」の開発に成功した。101は98個の部品で構成され、厚さ3.4mm、重さ約1gしかなかったというから驚きだ。

Cal.101 ジュエリーウォッチ

2020年に発売されたCal.101搭載のジュエリーウォッチ。熟練の職人の手作業によってセッティングされたダイヤモンドの中に極小のダイヤルがのぞく。

英国女王エリザベス2世が、キャリバー101を搭載した時計を1952年に行われた即位式で着用したエピソードもある、名ムーブメントと言えよう。

小型化の傑作と称されるキャリバー101は、時代と共に進化を遂げながら、現在も世界最小ムーブメントとして唯一無二の存在感を放っている。

他社供給のみのキャリバーも

ジャガー・ルクルトは、自社製品だけでなく、他社にも高性能ムーブメントを数多く提供していた。中でも「キャリバー920」は、1度も自社の時計に組み込まれなかった、他社供給専用ムーブメントとして知られている。

パテック フィリップの「ノーチラス」やオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」など、名門ブランドが展開する主力級モデルの多くに、キャリバー920は名前を変えて搭載された。

自動巻きの古典的な仕組みを保ちながら薄型化を図られたことが、キャリバー920の大きな特徴である。


代表コレクションとキャリバー

ジャガー・ルクルトは「マスター」と「レベルソ」の2モデルを、主力モデルとして展開している。それぞれの特徴と魅力をチェックしよう。

1000時間コントロールが由来のマスター

マスター・コントロール・デイト

2020年に刷新された「マスター・コントロール」コレクションの基幹モデル。過去15年にわたって主要ムーブメントであったCal.899をアップデートし、パワーリザーブは70時間に延長、針飛びの問題を解消した。「マスター・コントロール・デイト」。自動巻き(Cal.899AC)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS(直径40mm、厚さ8.78mm)。5気圧防水。79万6400円(税込み)。

ジャガー・ルクルトでは製造した時計ごとに、「マスター1000時間コントロール」と呼ばれる検査を実施している。業界トップレベルの精度を誇るこの検査名から、ジャガー・ルクルトを代表する「マスターシリーズ」の名が付けられている。

丸型フォルムとシンプルなデザインの文字盤が、マスターの大きな特徴だ。クロノグラフやパーペチュアルカレンダーなど、複雑なムーブメントを搭載した派生モデルも、数多く製造されている。

Cal.899AC

改良が加えられたジャガー・ルクルトの基幹ムーブメントCal.899AC。2番車に弾性のある素材を使うことで時間合わせの際の針飛びを解消させた。さらにパワーリザーブも約43時間から約70時間まで飛躍させた。

反転可能なレベルソ

レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド

イギリス軍将校の「ポロの競技にも耐えられる時計を」というオーダーから生まれた反転ケースに、ふたつの文字盤をセッティング。オリジナルモデルを再現したバーインデックスを採用し、鮮やかなブルーカラーによってモダンかつエレガントな仕上がりだ。「レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド」。手巻き(Cal.854A/2)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KPG(縦47×横28.3mm)。121万円(税込み)。

マスターと共に、ジャガー・ルクルトの象徴として知られるモデルが、「レベルソ」シリーズだ。

文字盤が反転するという、他に類を見ない特徴を持つ。スクエアフォルムのケースから文字盤を横にスライドさせ、反転させて再び押し入れることが可能である。この独特の機構は、強い衝撃がかかるポロの競技中での着用を想定したものだ。

Cal.854A/2

手巻きムーブメントCal.854A/2は、裏表の文字盤の針を動かす。裏面には24時間表示の第2時間帯のインダイヤルも配される。

そのオリジナルの意匠を残したモノフェイスの場合、文字盤裏面のメタルプレートにエングレーブを施すことができる。さらに、文字盤裏にもうひとつの文字盤を配した「デュオ」(レディースモデルは「デュエット」)では、両面で異なるデザインを楽しむことができる。

レベルソは手巻きが主で、多くは角型のケースに合わせた長方形のムーブメントを搭載する。


ムーブメントの魅力を知ろう

真のマニュファクチュールであるジャガー・ルクルトは、ムーブメント製造において、創業当時から高い信頼を得続けている名門である。

ムーブメントに関し、歴史に名を残すほどの豊富な実績を知れば、ジャガー・ルクルトの魅力をより一層強く感じられるだろう。



Contact info: ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

川部憲 Text by Ken Kawabe


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