GMTとはどんな時間? 概要や腕時計のGMT機能について理解しよう

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2023.05.02

夏時間について知ろう

次に、日本人にはなじみのない、欧米を中心に導入されているサマータイム(夏時間)について解説する。

サマータイムとは?

サマータイムとは、日の出が早まる3~11月頃の時期に、太陽が出ている時間帯を有効に利用するため、時刻を1時間進める制度である。

ヨーロッパでは3月の最終日曜日から10月の最終日曜日まで、アメリカでは3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までが、サマータイム期間となる。

例えば、アメリカの場合、開始日の午前2時が午前3時となり、時刻を1時間進めたまま期間を経過し、終了日の午前3時が午前2時に戻る、というシステムだ。

サマータイムを導入している国に旅行する場合などは、飛行機の予約やツアーの集合時間に遅れることを防ぐため、時計の針を調整する必要がある。

かつては日本でも、終戦直後にGHQがサマータイムを導入した時期があったが、導入から4年後に廃止されている。

ランゲ1・タイムゾーン

サマータイムの表示にも対応する、A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1・タイムゾーン」。5時位置の矢印がどのタイムゾーンの時刻を表示しているかを指し示し、矢印の窓の中が赤くなっている時は該当のタイムゾーンでサマータイムが適用される。

デイライト・セービング・タイム

アメリカでは夏時間をサマータイムとはいわずに「デイライト・セービング・タイム(Daylight Saving Time)」と呼んでいる。

太陽光(Daylight)を有効活用(Saving)する時間(Time)という意味で、導入目的はヨーロッパのサマータイムと同じである。

また、このシステムは全米で適用されているわけではなく、アリゾナ州のほぼ全域や、ハワイ・グアムなどでは導入されていない。

アメリカでは、第1次大戦後に一度、夏時間が導入されたが、不評であったためわずか7カ月で全面廃止となった。その後、第2次大戦中に再導入され今日に至っている。


腕時計のGMT機能

腕時計には、使う人によっては便利な、GMT機能と呼ばれる機能を搭載するものがある。GMT機能の概要や基本的な操作方法を紹介しよう。

GMT機能とは?

腕時計のGMT機能とは、時差により異なるふたつの国や都市の時刻を同時に表示できる機能だ。

GMT機能付きの腕時計は、時針・分針・秒針に加えて備えられたGMT針で表示されるものが多く、代表例は世界で初めてGMT機能を搭載したとされるロレックスの「GMTマスター」の現行モデル「GMTマスター Ⅱ」だ。

オイスター パーペチュアル GMTマスター

世界初のGMT機能を搭載した腕時計は、1955年に発売されたロレックスの「オイスター パーペチュアル GMTマスター」Ref.6542である。赤と青を組み合わせた回転ベゼルのアイコニックな意匠は、現行モデル「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」にも受け継がれている。

一般的には、通常の時針を現在地の時刻に合わせ、24時間で1周するGMT針をホームタイム(出発地)の時刻に合わせて使用する。

さらに、回転ベゼルが備わったモデルの中には、第3カ国目の時刻が表示できるものもある。

異なる国や都市の時刻がふたつの時針によりひと目で分かるため、海外滞在時や、取引・通信などで海外の時刻を気にする必要がある場合に役立つ機能といえるだろう。

基本の操作方法

基本的に、GMT針は単独では動かせず、その他の針と連動して動く。まずは、リュウズを2段引きにして分針を回し、GMT針を連動させてホームタイムの時刻に合わせる必要がある。

次に、リュウズを1段引きにして時針のみを動かし、現在地の時刻(ローカルタイム)に合わせれば、常にふたつの国の時刻が分かる状態になるのだ。

また、第3カ国目の時刻は、回転ベゼルを回し、GMT針の読み取り目盛りの位置を変えることで、GMT針から瞬間的かつ簡易的に読み取るかたちとなる。

ホームタイムと第3カ国の時差分だけ回転ベゼルをずらし、一時的に動いた回転ベゼルの目盛りをGMT針で読み取ることになるため、その間はホームタイムの時刻が分かりにくい点には注意が必要だ。

GMTマスター

なお、腕時計によっては操作方法が異なる場合もある。


GMT搭載の人気ブランド

世界的に有名な高級時計ブランドの中から、GMT機能が搭載されたモデルを展開している主なブランドを紹介していく。

日本が誇る高級時計ブランド「グランドセイコー」

「グランドセイコー」は、精度や実用性の高さと優れたデザイン性で屈指の評価と人気を得ている、今や日本が世界に誇る高級時計ブランドである。

普段のスーツスタイルに合うような大人向けの王道モデルから、スポーツコレクションと銘打ったダイバーズウォッチやクロノグラフまで、幅広い種類を展開している。

ヘリテージコレクション メカニカルハイビートGMT

グランドセイコー「ヘリテージコレクション メカニカルハイビートGMT」SBGJ267
自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。ブライトチタン製ケース(直径40mm、厚さ14mm)。10気圧防水。93万5000円(税込み)。(問)グランドセイコー専用ダイヤル Tel.0120-302-617

GMTに関しては、自社製のハイビートムーブメントであるキャリバー9S86が、2015年にGMT機種へ初めて搭載され、爆発的なヒットを飛ばし話題となった。

グランドセイコーのGMTモデルは、高い技術力に裏打ちされた使い心地のよさや、歪みがなく高級時計にふさわしい上品さを有する点などの理由から、高い評価を得続けている。

オリンピック公式タイムキーパーも務める オメガ

「オメガ」は、時計業界では世界的に有名なスイスの高級腕時計ブランドである。

かつてはアポロ計画の月面着陸プロジェクトすべてに腕時計が携行され、オリンピックでも1932年から30大会にわたり公式タイムキーパーを務めている。

シーマスター プラネットオーシャン ディープブラック

オメガ「シーマスター プラネットオーシャン マスター クロノメーター GMT ディープブラック」
自動巻き(Cal.8906)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラミックケース(直径45.5mm、厚さ17.4mm)。600m防水。165万円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

オメガの看板モデルである「シーマスター」は、ダイバーズウォッチという出自を背景とした視認性・機能性の高さや、豊富なスタイルが用意されたデザインで人気だ。

シーマスターの中にはGMT機能が搭載されたモデルもあり、ミニッツトラック内に24時間GMT表示を備えているものや、回転ベゼルにより第3カ国目の時刻が表示できるものがリリースされている。

高品質ながら手が届きやすいタグ・ホイヤー

「タグ・ホイヤー」は、有名ブランドに引けを取らないほどの品質を持ちながら、高級時計の中では比較的リーズナブルに入手可能なことが魅力のブランドである。

タグ・ホイヤー唯一のダイバーズモデルとして人気の「アクアレーサー」は、高い防水性を誇るほか、GMT機能が搭載されているものもある。

タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 キャリバー7 GMT

タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 キャリバー7 GMT」
自動巻き(Cal.7)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径43mm)。300m防水。48万9500円(税込み)。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7054

ロレックスの「GMTマスター Ⅱ」が100m防水であるのに対して、防水性の点で比較すれば「タグ・ホイヤー アクアレーサー」が圧倒的な耐性を備えているといえる。

高級時計らしい優れたデザイン性も兼ね備え、ダイバーズウォッチとGMTの両方で高いパフォーマンスを発揮してくれるだろう。


GMTや機能について理解しよう

GMTとは世界の標準時を表すグリニッジ標準時のことで、GMTを基準とした標準時が各国で定められている。

腕時計のGMT機能は、海外にいる場合などにホームタイムと現在地の時刻が分かる機能である。有名な高級時計ブランドには、GMT機能を搭載したモデルがラインナップされているので要注目だ。


川部憲 Text by Ken Kawabe


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