時計の秒針にも種類がある?正常に動かない場合に考えられる原因

FEATUREその他
2021.07.14

針ズレについて

時計の針が正常に機能しない原因には、ここまで述べてきたように、時計内部のトラブルによって時刻を正確に刻んでいないケースもあるが、一方で『時刻は正確に刻んでいるにもかかわらず、それが正確に表示されていない』というケースもある。

これを『針ズレ』と呼ぶ。ここでは針ズレについて詳しく解説する。

針ズレとは

時計の進みそのものは合っているが、例えば12時ちょうどになった時に、時計の針が12を指さずに前後にズレてしまうというトラブルがある。このようなケースを『針ズレ』と呼ぶ。

針ズレは、時計の見た目を著しく損なう。針ズレが発生する原因はいくつか考えられ、クォーツ式時計の場合は電池切れもそのひとつだが、針を動かす歯車の構造に原因がある場合も考えられる。

この歯車を原因として発生する針ズレを、『バックラッシュ』と呼ぶ。バックラッシュについては、次で詳しく見ていこう。

針ズレの原因のバックラッシュとは

オメガ Cal.321

時計は、いくつもの歯車が連動して動いている。この歯車同士の歯の間には、わずかに実は隙間が設けられており、これをバックラッシュという。

このバックラッシュが針ズレの原因になるケースは少なくない。

「では、そのような隙間など作らなければいい」という声が聞こえてきそうなものだが、バックラッシュはムーブメントにとって欠かせないものだ。

ジグソーパズルを思い出してみてもらいたい。パズルの接触部分は隙間がないため、ピタリと合わさって動かない。これを歯車に当てはめて考えれば、おのずと答えは出るだろう。歯車の間に隙間がないとなめらかな運動ができず、余計な力がかかってしまうのだ。

結果、パーツの摩耗を引き起こし、回転もなめらかにはならない。また摩耗により削られた金属がブーブメントに悪影響を及ぼすことも。バックラッシュは、精密で繊細な時計の内部を動かすためには不可欠なのである。

バックラッシュの主な役割

バックラッシュには、機構をスムーズに動かす以外にも役割があるので紹介しよう。

まずは部品の標準化だ。ピタリと歯車同士が隙間なくかみ合うような設計にすると、パーツを交換した際にかみ合わなくなってしまうことがある。

工業製品では同一の部品でもある程度の誤差が出てしまうことがあるため、バックラッシュによって互換性を確保しているのだ。

また、熱などによって金属は膨張・収縮が起こることがあるが、バックラッシュによって歪みの影響を受けにくくしているという面もある。また落下時に衝撃を受けたときにも、隙間があることでショックを吸収しやすくなる。


秒針が正常に動かない場合の対処法

秒針に異常が見られる場合や、何らかのトラブルによって時計が止まってしまった場合にどのような対処を行えばよいのかを、具体的に解説しよう。

磁気抜きや電池交換を依頼する

磁気によって動作に異常をきたしているケースの場合、時計内部の磁気帯び状態を解除する『磁気抜き』と呼ばれる対処を取る必要がある。

また電池切れで動かなくなっているクォーツ式時計は、電池を交換すれば動くようになるだろう。磁気抜きや電池交換は自分でやることも可能ではあるが、万が一を考えれば、時計業者に持ち込んで依頼した方が安心だ。

オーバーホールを行う

電池交換や磁気抜きを行っても時計が正常に動かない場合、オーバーホールを行う必要があるだろう。オーバーホールとは、時計を分解して点検する作業のことだ。その際、故障の原因を探ると同時に劣化した部品の交換や清掃を行う。

オーバーホールの費用は決して安くはないが、放っておくと内部部品の腐食が進み、最悪の場合修復不可能になる可能性も考えられる。異常があった場合は早めの対処が必要となる。

また、たとえ特別、異常がなかったとしても、数年に1度はオーバーホールを受けておくのも好ましい。未然に故障を防げるのと同時に、時計の寿命を延ばすことにもつながるからだ。


秒針についての理解を深める

秒針は、針の中でも最も動くものであり、時計の見栄えにも重要な役割を担っている。時計を選ぶ際は、秒針がどのように動くのかも考慮して購入するとよいだろう。

一方で秒針が異常をきたした場合、時計の見栄えが大きく損なわれるため、早めに対処したいところだ。原因がわかれば対処方法も明確化するため、発生しやすいケースはあらかじめ押さえておいた方がよいだろう。

秒針についての理解を深めることで、腕時計に一層のこだわりを持って触れることができるはずだ。


川部憲 Text by Ken Kawabe