時計愛好家感涙! NAOYA HIDA & Co.の新作2本を見る

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2020.04.16

魅力的なセンターセコンド版「NH TYPE 2A」

NH TYPE 2A

 スモールセコンドに出車を設けるとセンターセコンドになる。かつてオーデマ ピゲは、この手法でVZSSにセンターセコンド版を追加した。ベースにETA7750を採用したNH WATCHの場合、これはいっそう容易だ。飛田氏が、バリエーション違いとしてセンターセコンドを作ろうと考えたのは当然だった。

NH TYPE 2A

NH TYPE 2A
NH TYPE 1をセンターセコンド化したのがNH TYPE 2Aである。ケースサイズは従来に同じだが、裏蓋を変更することで、センターセコンド化したムーブメントを収めている。手巻き(Cal.3019CS)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SS(直径37mm、厚さ10.7mm)。NH TYPE 1Cと合わせた生産本数は約20本。210万円(税別)。

 センターセコンド版のムーブメントを時計に載せるのは、意外に難しい。古典的な時計よろしく、針先を曲げる場合なおさらだ。対して、センターセコンド版のNH TYPE 2Aは、あえて分針をわずかに短くし、その外側を覆うように、秒針の先端を曲げている。

時分針の素材はSS製

 秒針の素材はNH TYPE 1に同じく青焼きのスティール。そして時分針はなんとSUS製だ。経年劣化をしない上、磨き直しができ、何度も使用できるステンレスは、針にはうってつけの素材だ。しかし、青焼きの針同様、重くなってしまう。いくらETA7750が大きなトルクを持つとはいえ、重い針は性能を下げるだろう。

NH TYPE 2A

時分針は非常に珍しいSS製。かなり重いように見えるが、軽量化のため内側を肉抜きしている。なお、針の長さは秒針が14.25mm、分針が13.44mm、時針が9.46mmである。

「針が重くなると姿勢差誤差が生じる場合があります。そのため、針の内側を肉抜きして軽量化しています」。針の肉抜きとは聞いたことのない手法だが、微細加工機を使える今だからこそ、作ることができる針と言えそうだ。

 この時計の基本的なパッケージングは、スモールセコンドを持つNH TYPE 1に同じ。ベゼルとミドルケースは共通だが、裏蓋の厚みを増して、センターセコンド化に対応させたのは、飛田氏が以前働いていたF.P.ジュルヌのアプローチにまったく同じである。

秒針と風防の狭いクリアランス

NH TYPE 2A

この時計が、ありきたりのセンターセコンド機とまったく違う一因は、針のクリアランスの狭さにある。文字盤と時針のクリアランスの設計値はたった0.15mm、秒針と分針のクリアランスの設計値も0.3mmしかない。しかし、実際は現物に合わせてもっと詰めているという。

 細部の詰め方は、NH TYPE 1同様隙がない。感心させられたのはセンターセコンド化したにもかかわらず、ベゼルの高さを抑えた点だ。秒針と風防のクリアランスはギリギリまで詰められており、これは衝撃を受けた際の安全マージンを過剰に取りたがる量産機では決して望むべくもないディテールである。NH TYPE 1は、時針と文字盤のクリアランスを極端に詰めてみせたが、本作ではそれをセンターセコンドにも適用したわけだ。

 また、バーとアラビア数字を混在させた1940年代風のインデックスも、あえて書体を変えて、単なるレトロウォッチとは異なるニュアンスを添えている。

NH TYPE 2A

ガルーシャテイル製のストラップ。素材はベジタブルタンニン仕上げのカーフレザーである。なお、ボックスはタクミクス製のトラベルケースか、パティーヌを施したレガーメ製から選ぶことができる。

クラシカルな時計好きならば見るべき新作

 さて結論である。微細加工機を多用した外装が注目されてきたNH WATCH。しかし、2年目のTYPE 1と新しいTYPE 2は、精密な加工以上に、時計としてのパッケージングやまとまりが際立った時計となった。小メーカーらしい“味”と、現在の時計らしい精密さ、そして古典好きならばにやりとせざるを得ないディテールを巧みに盛り込んだNAOYA HIDA & Co.の時計は、クラシカルな時計好きならば、一度は見るべき時計だろう。中身がETA7750ベースであることを批判する向きもあるが、かのVZSSだって、ベースは普通のバルジューだったのだ。

 大ぶりなリュウズでゼンマイを巻き、リュウズを引っ張り出して(喜ばしいことに1段引きとなった)針合わせをすれば、この時計の価値は言わずと分かるはずだ。


Contact info: NAOYA HIDA & Co. naoyahidawatch.com

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