ウブロ/ビッグ・バン[ウニコ&コンプリケーション編]

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.02.18

BIG BANG UNICO
ウニコ搭載を前提に進化を遂げた新基幹モデル

ビッグ・バン ウニコ フルマジックゴールド
ベゼルを含む外装全体に、極めて硬いマジックゴールドを採用したモデル。ケースは2013年にリリースされた45mmサイズ。全体のデザインはフェラーリモデルを踏襲するが、プッシュボタンの形状など細部が異なる。自動巻き(Cal.HUB1242)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kマジックゴールド(直径45mm)。10気圧防水。世界限定250本。384万4800円。

 2005年にフュージョン(融合)というキャッチフレーズを掲げて登場したビッグ・バン。これは異素材を組み合わせるだけでなく、やがては素材自体を化学的に融合させる試みへと進化した。好例がマジックゴールドだろう。「ビッグ・バン フェラーリ」で初めて採用されたこの独自素材は、18Kゴールドながら、1000Hvという極めつきの表面硬度を持つ。

 ここで改めて製法を述べたい。炭化ホウ素の粉末をシリコン製の型に入れて、約2000気圧の圧力をかける。こうやって成形されたセラミックスを約2200℃で加熱すると、セラミックスは多孔質の素材に変化する。そこに約1100℃で加熱した純金を流し込み、約1400℃の温度で約200気圧をかけると、セラミックスと金が融合し、マジックゴールドに変化する。素材が硬いため、ベゼルのスライスは、ワイヤ放電加工機でなければ不可能。表面は5万ヘルツの速度で研磨される(「クロノス」ドイツ版より、ギスベルト・L・ブルーナー氏の記述を要約して抜粋)。

 この素材の開発に携わったエンジニアによると、マジックゴールドの製法は、ゴールドだけではなく、カーボンなどの素材にも応用できるとのこと。2015年に発表されたチタンやゴールドをカーボンに融合させた新素材も、おそらくはマジックゴールドの製法を応用したものだろう。

 わずか10年で、内実ともに大きく進化したビッグ・バン。その歩みを象徴するのが本作だ。初見の印象は明らかにビッグ・バンである。しかしケース形状や素材、そしてムーブメントは、05年の第1作とはまったく別物となった。ウブロにとってイノベーションほど重要なものはないと語ってきたビバー。しかし誕生からわずか10年で、ビッグ・バンがこのようなスタイリングに進化すると、関係者の誰が想像しただろうか。

(左上)文字盤の構造は年々複雑になってきている。このモデルは、金属によるアプライドインデックスと、プリントを混在させたもの。注目すべきはプリントの質だ。長年ウブロは、薄くすっきりとしたプリントを採用してきたが、ここ数年は、厚く盛り上がった印字に挑戦している。しかも本作は色を出しにくい金色を用いている。(右上)マジックゴールド製のベゼル。1000Hvもあるため、ワイヤ放電加工機でスライスした後に、超音波加工機を使って表面を均している。ケース表面が独特のニュアンスを持つのは、従来にない表面仕上げの手法を選んだため。(中)45mmモデルの造形は、フェラーリモデルにほぼ同じ。ストラップの脱着を容易にするラグ上のボタンは、上下の向きが反転しているが、機構的には同様である。(左下)フェラーリモデルとの大きな違いが、クロノグラフのプッシュボタン。筆者の感想だが、かつての44mmモデルに比べて、プッシュボタンの感触は大きく改善された。(右下)ケースバックからのぞく「ウニコ」。工業的な仕上げだが、加工のレベルは優秀だ。