【80点】タグ・ホイヤー / モンツァ クロノグラフ

FEATUREスペックテスト
2017.02.15

トロモデルに思い入れのある時計愛好家に朗報だ。あのモンツァが2016年、限定生産モデルとして登場した。これはモータースポーツファンにとってもよい知らせだろう。1976年登場の初代モデルと同様に、車を思わせる意匠に仕立てられてはいるが、黒く精悍で、ダイナミックな外観だ。

 新モデルのモンツァ クロノグラフを見てみると、どこからかF1サーキットでうなるエンジン音が聞こえてきそうだ。そもそもタグ・ホイヤーの人気モデルとして親しまれてきたモンツァは、1975年のF1ワールドチャンピオンのタイトルを獲得したフェラーリの健闘を祝して作られたものだ。同年9月7日、当時フェラーリチームに所属していたドライバーのニキ・ラウダが、イタリアグランプリ会場のサーキットであるモンツァでホイヤーのロゴを掲げて快走、それから3連覇を果たした。それに加えてスクーデリア・フェラーリは、コンストラクターズタイトルも同時に獲得した。フェラーリが長年熱望していたダブルタイトルの獲得にこぎ着けるまでには、11年もの歳月を必要としたのである。

 より抜きん出た仕上がり

  最新のモンツァは、過去に出たヒストリカルピースに比べてもベストの出来と言える。文字盤のデザインは、1976年に登場したモデルを基にしているが、ケースは1933年に出たクロノグラフを範としている。クッションケースは、チャレンジ精神旺盛だった腕時計の黎明期から引き継がれてきたスタイルで、70年代のモンツァは、当時の典型的な楕円形ケースだった。この時期のものは真鍮にクロムメッキ仕上げか、もしくは黒いPVDコーティングを掛けている。リュウズは内蔵するムーブメントのキャリバー15の設計上、左側に置かれた。このキャリバーは、レオニダスとタッグを組んだホイヤーが、ビューレンと組んだハミルトンや、ブライトリング、デュボア・デプラと1969年に共同開発した、世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントのひとつであるキャリバー11の後継機だ。

  キャリバー15は、中心からやや上にスモールセコンドが置かれていて、左右非対称の文字盤構成が目を引く。新作ではこの大胆なデザイン要素を取り入れなかったのは、ムーブメントに由来する。搭載の汎用キャリバーETA2894は、タグ・ホイヤーではキャリバー17として扱われている。初代モンツァの設計とは異なり、スモールセコンドは30分積算計の真横に置かれ、リュウズは右側に落ち着いた。

  こうしてみると、モンツァの変化は今の時代に合っていてスポーティーだ。しかしその分、独特のインパクトは、いささかおとなしくなってしまったと言わざるを得ない。クールな印象ではなくなったが、鏡面とつや消しを組み合わせて仕上げたクッションケースは魅力的だ。ケースはチタン製のため、装着感はとびきり良い。表面にチタンカーバイドで被膜を作り、硬化処理されているので、明らかに傷に強くなっている。