1963年にリリースされ、日本の時計を大きく変えた「セイコー5」。そもそもは若者向けの時計だったが、その完成度の高さ故に、やがてセイコーの世界戦略機となった。そんな5を、若者向けに取り戻そうとした試みが、68年初出の「5スポーツ」だ。堅牢なムーブメントにユニークなケース、そして鮮やかな色使いは、半世紀以上を経た今、世界中の時計好きたちの心をつかむようになった。

Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
広田雅将(本誌):文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2025年9月号掲載記事]
SEIKO 5 SPORTS[SNXS Series]
SNXSの意匠を受け継ぐ最新のデイリーモデル

価格以上の質感を打ち出した新コレクション。造形はセイコー5のSNXSに準じているが、文字盤は5スポーツ風に改められた。自動巻き(Cal.4R36)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径37.4mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。5万3900円(税込み)。
若者向けのカルチャーを時計に落とし込む、という狙いでリスタートした新生5スポーツ。長らくSKXのデザインを継承するダイバーズと、ミリタリー調のデザインを持つフィールドの2本柱だったが、24年5月には、スーツにも合いそうなデザインのSNXSシリーズが加わった。これはEDC(Everyday Carry)=「日々持ち歩く相棒」を打ち出した、プレーンなモデル。企画を担当した内浦美緒は「ファッションの邪魔にならない、そしてエゴではない時計を目指した」と説明する。ケースの直径はなんと37.4mm。そして全体の造形を「Cライン風」にまとめることで、レトロ感を強調してみせた。
5スポーツの魅力である文字盤は、いっそう強調された。現在5スポーツは製造コストを抑えるために、多くのモデルがエンボス処理で一体化されたインデックスを持っている。対して本作は、高級機同様のアプライドを採用した。しかも、複数の面にダイヤカットを、そして上面にはなんと「虹引き」(!)を施すという凝りようだ。ちなみにセイコーは、価格に応じた仕上げを施している。しかしこのモデルでは、あえて上位機種の仕上げが採用された。これが示すのは、5スポーツが世界的なヒット作となったという事実だ。

筋目とサテン仕上げを使い分けたケースも同様だ。プレザージュやキングセイコーほどではないが、触ったときに上質さを感じさせる仕上げとなっている。しかもその価格は、なんと5万3900円。「得したと思ってもらえるコレクション」という狙いは、本作でいっそう強調された。
今や、セイコーを支える一大コレクションに成長を遂げた5スポーツ。若者のカルチャーを時計に落とし込むという1968年モデルの狙いは、半世紀以上の時間をかけて、いよいよ花開くこととなったのである。



