時計用語辞典

鎖引き装置

Fusse

フュージとも。定力装置の一種。香箱内の主ゼンマイは、巻き上げ直後には強いトルクを放出するが、ほどけるにつれて減少する。鎖引き装置とはそのトルク減少を補うための機構。香箱のゼンマイが円錐状のフュージを引っぱって回転させるが、徐々に半径が増加するため、トルクが減少しても輪列に伝わるモーメントは変化しない。なお、フランスで機構が考案された当時は鎖ではなく、猫や羊の腸を紐状にしたガットを使った。鎖に置き換わったのは1664年とされる。簡単で優れた機構だが、厚みが増すため19世紀以降の採用例はマリンクロノメーターなどに限られる。腕時計ではじめて搭載したのはA.ランゲ&ゾーネ「プール・ル・メリット」。ブレゲも2007年のバーゼルワールドで「トラディション トゥールビヨン・フュゼ」を発表した。なお18世紀のアブラアン-ルイ・ブレゲは一部のポケットクロノメーターに鎖引きを採用していたことで知られる。