ムーンフェイズ再発見[ギミックを超える精度と実用性]

2017.05.29

シャウボーグウォッチムーン ギャラクシー
月齢表示の誤差を122.5年で1日にとどめた高精度なムーンフェイズ機構を搭載。12時位置に配した実写の月をプリントしたムーンフェイズと、溶融した着色ガラスの中に銅の粉末を混合した人造石であるゴールドストーンを用いた文字盤は、風雅な星空を想起させる。自動巻き(Cal.SW-11)。2万8800振動/時。SS(直径43mm)。82万円。ユーロパッションTel.03-5295-0411

 太陰暦を用いていた古来、暦を知るためには夜空に浮かぶ月の形、月相(ムーンフェイズ)を把握する必要があった。太陽暦が普及してからはその役目を終えたが、月相、月齢は潮汐の把握に活用されるなど、一定の役割を果たしていた。

 複雑機構の走りとしてムーンフェイズ表示機構が登場して以降、月相の表現方法はさまざまな趣向が凝らされてきたが、今も昔もムーンディスクを回転させて月相を表示する方法が主流といえる。

 しかし、月を模したパーツに円弧状の遮蔽物を添える構造上、当然のことながら機械式時計のムーンフェイズ表示と本物の月相の形状は一致しない。月齢を合わせてムーンフェイズ搭載モデルと現実の月を比較してみると、その違いは明らかだ。「弓張月」と称される上弦の月を例にあげると、腕時計のムーンフェイズ表示では弓を張ったような半円形にはならず、三日月形の月が欠けたような形になってしまう。月齢が進んでも同様で、欠けた月が次第に膨らんでいく実際の月相とは異なり、ムーンフェイズ表示では欠けを小さくしていくことで月相を表現しているため、月相から月齢を知る手段としては致命的な欠点を抱えている。


ムーンフェイズ機構で月相を表現する方法は、月の満ち欠けを形成するフレームに向けてムーンディスクを回転させる方式と、上の写真のように月を覆い隠す遮蔽板を回転させる方式のふたつに大別される。右のモデルは後者を採用。

スーパールミノヴァが塗布された直径13.4mmにも及ぶ大型の月のプリントによって暗所でも月相を確認することを可能にした。ムーンディスクは通常金属光沢を生かしたものが多いため、暗所でも月相を確認できるモデルは珍しい。


 この問題の解決策としては、時分秒と同様にインデックスで月齢を表すことだろうが、それではどこか味気ない。やはり目で見て楽しんでこそのムーンフェイズ。今ではギミック、審美性に優れる、実際の月相をより正確に再現した立体的なムーンフェイズ表示機構も登場。ほかにも中途半端な月の周期に挑んだ高精度ムーンフェイズ機構の開発など、機械式時計という小さな世界で展開する月相で月齢を知る挑戦は、太陽暦で生きる今も続けられ、そして確実に進化している。