RICHARD MILLE 過酷なテスト / リシャール・ミル ナノテク応用で成し遂げた最先端のウルトラライト

2017.08.16

RM 50‐03 トゥールビヨン スプリットセコンド クロノグラフ ウルトラライト マクラーレン F1
マクラーレンも採用する新素材グラフェンをケースに配合した新作。時計全体の重さはわずか40gしかない。手巻き(Cal.RM 50-03)。43石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。グラフTPT®(縦49.65×横44.50mm)。50m防水。限定75本。1億1270万円。

「レジンにグラフェンを混ぜると、剛性は大幅に上がる。例えるならコンクリートに鉄筋を埋め込むようなものだ」。彼は詳細を明かさなかったが、経験談を聞いたマクラーレンも、カーボンにグラフェンを混ぜているのだろう。

「レジンを補強することは決めたが、グラフェンの特性が分からなかった。なにしろどこも商品化できていないからだ」。しかしリシャール・ミルは、1年を費やして、グラフェンをレジンに混ぜることに成功した。「20ミクロンのカーボンファイバー層の間に、グラフェンのシートを挟むことで解決した。様々なグラフェン素材を試したが、最も品質の良い国立グラフェン研究所製を選んだ」。ヴィヌミ曰く、グラフェンをムーブメントやブレスレットにも使いたかったが、まだ開発には時間がかかるとのこと。また1gで数百ポンドというコストもネックだという。

極めて安定した構成を持つグラフTPT®。鋼鉄の200倍の強度を持ち、地球上で最も薄く、また現時点で最も電気伝導率が高い。ケースに使うにはもったいない素材だが、少なくともカーボンケースの耐久性は向上する。

 板状に成形されたグラフTPT ®素材は、ケース工場のプロアートで加工された後、マクラーレンの素材部門である、マクラーレン・アプライド・テクノロジーズでチェックを受けた。そこで了承を得た後に、ようやく量産化が始まったという。「素材特性が違うため、製造ライン自体を変える必要があった。またベースのカーボンを完璧にカットする必要がある」という困難はあったが、果たせるかなRM 50-03のケースは、リシャール・ミルが製造したカーボンケースで最も頑強なものとなった。

 名ばかりのコラボレーションではない、RM 50-03。F1パイロットが実際に使えるスペックで武装した点で、この機械式時計は唯一無二の存在だろう。やや大げさかもしれないが、これはリシャール・ミルがというより、機械式時計が至ったひとつの極北ではないか。

Contact info: リシャールミルジャパン Tel.03-5807-8162