デザインにとっての魔法の地、イタリア。その中でも戦後すぐのデザインは、丸っこく愛嬌のあるものだった。タトゥーアーティストでありつつ、ブルガリの「オクトフィニッシモ」のアレンジなど時計業界でも活躍するイタリア人、モー・コッポレッタが、その魔法を新作腕時計にかけた。手に入れればきっと甘い生活を約束する腕時計の魅力を、『ウォッチタイム』アメリカ版に携わる編集者・ライターのマーティン・グリーンが魅力をお届けする。
イタリアの魔法がかけられた腕時計
イタリアには何か特別なものがあるに違いない。そうでなければ、これほど多くの驚くべきデザインがこの地から生まれることを説明するのは難しい。車でも、服でも、コーヒーメーカーでも、イタリア人はそれを特別なものにしてしまう。
そして最も驚くべき点は、彼らがそれをいとも簡単そうにやってのけることだ。ほんの数本の線、いくつかのディテール、そしてまたひとつのクラシックが誕生する。時計製造においても同じように容易にやってのける。そのことを証明しているのが、ガガ・ラボラトリオの「ラボルマティック」である。
丸っこい、戦後すぐの頃の自動車やスクーターを連想させるイタリアンデザインが素敵な腕時計だ。自動巻き(Cal.LJP G100)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.3mm)。5気圧防水。89万1000円(税込み)。
これらの時計のデザインを描いたのは、タトゥーアーティストの世界で最も著名なひとりとして知られるモー・コッポレッタである。だが彼をそう呼ぶだけではあまりにも十分ではない。彼はまた才能あるデザイナーでもあり、時計業界を含むさまざまなブランドとコラボレーションしてきた。
最初は、残念ながら今は存在しないブランド、ロマン・ジェロームの「ア・セイラーズ・グレイブ」のデザインであった。その後、ステパン・サルパネヴァのブランド「S.U.F.ヘルシンキ」やブルガリと組み、オクト フィニッシモに自身の解釈を与えた。ガガ・ラボラトリオとの仕事においては、ベースとなる既存の時計がなかったため、コッポレッタは戦後イタリア・デザインのラインを再構築することができた。
ユニークな時刻表示とディテール
時表示はジャンピングではなくゆっくり回転するディスク式ワンダリングアワーで、30分刻みの表示も確認可能だ。これにより、時と分が一目でわかるだけでなく、秒針に代わって中央のエンブレムが回転する様子が、時計の動きを視覚的に伝える。こうした造形は光の反射を巧みに活かし、文字盤に豊かな表情を与えている。
針を使わずにディスクを用いて表示する、特徴的なモデルだ。自動巻き(Cal.LJP G100)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.3mm)。5気圧防水。89万1000円(税込み)。
この種のイタリア・デザインは、現在のスタイルよりも手の込んだものである。説明するならば、今日のイタリア・デザインを大きく一般化すれば完璧に作られたジェラートのひとすくいと見なすことができる。戦後すぐのイタリア・デザインは、その同じジェラートのひとすくいだが、美しいアイスカップに盛られ、ホイップクリームと刻んだピスタチオがトッピングされている。
ラボルマティックでは、まず7つのパーツで構成されたケースから始まる。ラグが外へ広がり、12時位置にリュウズがある点が際立っているだろう。時刻は12時位置の窓に表示され、いわゆるワンダリングアワーとなっている。
つまり、背後のディスクがゆっくりと回転し、ジャンプしないのだ。ガガ・ラボラトリオはこの時刻表示の方法を発展させ、この窓に30分刻みも表示。これは心地よい工夫であり、正確な分は針で示される。秒針はなく、その代わりに中央のエンブレムが回転するのだ。
イタリア的感性と装着感
ケースそのものがよく作られているだけでなく、文字盤上のさまざまな要素も同様に整えられている。これにより奥行き感と光の遊びが生まれる。それはまた、この時計を市場にある他のどの時計とも根本的に異なるものにしている。直径42mm、厚さ13.30mmというサイズにより、装着性は卓越している。
時間合わせはときに難しく、リュウズを引いたときにストラップが邪魔になることもあった。しかし幸いにも、ストラップにはクイックリリースが備わっており、外して時刻を合わせ、数秒で元に戻すことができる。私はこれをあまり気にしなかった。おそらくイタリア車を運転することに慣れているからだろう。そこでは機能性がしばしば、ありがたくもデザインのために犠牲にされるからだ。
信頼性の高いムーブメントを搭載
ムーブメントに関しては、ガガ・ラボラトリオはラ・ジュー・ペレのCal.LJP–G100を選んだ。良い選択だ。このムーブメントは信頼性が高いだけでなく、約68時間のパワーリザーブを備えている。私、マーティン・グリーンがこの長さにこだわることを『ウォッチタイム』アメリカ版の読者ならご存知だろう。
今日の腕時計の世界では、私の意見では48時間のパワーリザーブが最低限に思える。ブランドが超薄型記録を打ち破ろうとするのでない限り、高級時計の世界ではそれ以上を実現し、期待すべきだ。なお、カスタマイズされたローターのおかげで、時計の裏側も表のデザインに呼応している。
バリエーション展開
ガガ・ラボラトリオは「ラボルマティック」を当初ふたつのバージョンで発表した。その違いは単なる色だけではない。ひとつは「チンクアンタ」と呼ばれるもので、美しいミント色のダイアルを持ち、黒枠の赤い矢印で分を示す。もうひとつは奇妙にも「バウハウス」と呼ばれている。あの有名なドイツのデザイン学校の名だが、この艶やかな時計にそれを思い浮かべることはあまりない。
赤い分針が魅力的であることを除けば、バウハウスはよりモノクローム的な提案である。ケースの一部には黒いコーティングが施され、構造の複雑さがよりよく見える。これらは別々のセグメントであり、一体となってケースを形作っているためだ。ガガ・ラボラトリオは、時間表示窓の背景を毎時、黒とグレーで交互に変えた。チンクアンタも同じ仕組みだが、こちらではミントグリーンとクリームでより控えめに表現されているのだ。
なお、「シャンパーニュ」や「アズーロ」といったカラーバリエーションも現在では展開している。
高品質なストラップと仕上げ
ガガ・ラボラトリオはストラップの選択でも優れたセンスを示している。エキゾチックなアリゲーターや派手なリザードではなく、美しい高品質のサフィアーノレザーが選ばれているのだ。これは時計そのものを引き立てる完璧な土台を与える一方で、品質に妥協はない。
時計全体についても同じことが言える。仕上がりは見ても触っても非常に優れている。すべてを総合して、89万1000円(税込み)は十分に妥当だ。それは少し視線を集めることをいとわないのであれば、の話である。なぜならこの時計は手首の上で真のアイキャッチャーでもあるからだ。