美大卒の竹中直人、御年69歳は天才時計技師の腕時計を選んだ

テレビ、映画、舞台と多方面で活躍し、コメディからシリアスまで幅広い役柄をこなす竹中直人。今年2月に公開された映画「ウルトラマンアーク THE MOVIE」、現在全国公演中の舞台「マイクロバスと安定」と精力的な活動を続ける69歳の名俳優が、自身のラジオ番組で着用していたのがフランク ミュラー「ロングアイランド」だった。グラフィックデザインを専攻した竹中が引かれたビザン数字インデックス、その魅力に迫る。

竹中直人

写真:つのだよしお/アフロ
沼本有佳子:文
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年12月14日掲載記事]

今年も話題作が続々、69歳でますますかがやきを増す実力派俳優

 2025年2月、特撮ドラマ「ウルトラマンアーク」の劇場版「ウルトラマンアーク THE MOVIE 超次元大決戦!光と闇のアーク」が公開された。竹中直人は、主人公・飛世ユウマに想像を超える究極の試練を課す「宇宙賢者ディグル星人サスカル」役で出演。謎の宇宙人として、独特の存在感を放つ演技で作品に深みを加えている。

 そして現在は、生瀬勝久との演劇ユニット「竹生企画」による舞台「マイクロバスと安定」が全国公演中だ(12月27日に長岡にて終演)。この舞台は、小惑星の衝突により世界が滅亡すると発表されてから約3年が経った頃を舞台に、一軒家で繰り広げられる人間ドラマを描いた作品。人気劇作家・倉持裕を劇作・演出に迎え、竹中と生瀬が「一緒に舞台で共演してみたい」と願う俳優を共演者に迎えている。超個性派俳優らの絶妙なセリフの応酬が、観客を惹きつけてやまない。

 竹中直人の俳優としての魅力は、シリアスな演技にコメディタッチの個性が絶妙に融合する点にある。1992年の映画「シコふんじゃった。」では、大学の相撲部に巻き込まれる教授役をコミカルかつ人間味豊かに演じ、観客に強烈な印象を残した。1996年の「Shall we ダンス?」でも、その魅力は余すところなく発揮されている。

 そして同じく1996年、竹中直人にとって俳優人生の飛躍となったのがNHK大河ドラマ「秀吉」での豊臣秀吉役だ。平均視聴率30.5%、最高視聴率37.4%を記録する大ヒット作となり、竹中の名は全国に知れ渡った。以降も「軍師官兵衛」(2014年)、「もしも徳川家康が総理大臣になったら」(2024年)と、6度にわたって秀吉を演じ続けている。


内気な少年から映画に魅せられ、美大でグラフィックデザインを学ぶ

 幼少期は一人遊びを好む内向的な性格だった竹中だが、両親と共に通った映画館で、映画の世界に魅了されていった。中学入学を機に、内気な性格を克服すべく習得したモノマネ芸で同級生の注目を集め、高校在学時には自ら映画を撮り始めた。

 大学は多摩美術大学美術学部デザイン科グラフィックデザイン専攻に進学。「映画演出研究会」に所属し、8ミリ映画の制作に没頭した。監督から出演までをこなし、映画作りの全てを体験する日々。この時期に培った映像感覚と美的センスが、後の俳優業や映画監督としての活動にも活きることとなる。

 芸能界入り当初は俳優を志していたが、「俳優だけでは一生食べていけない」と感じ、プロダクション人力舎に入りコメディアンとしてコント番組にも出演。俳優業については脇役で奇矯な演技が多かったが、次第にシリアスな役や小市民、悪役へと役柄を広げていった。そして前述の「秀吉」で主演の座を射止め、名実ともにトップ俳優の仲間入りを果たしている。


ラジオ番組のSNSで発見。個性あふれる美的感覚が選んだフランク ミュラー

 そんな竹中直人の時計スタイルが、自身のラジオ番組のSNS画像から明らかになった。一緒に写っているのは、近代美術界の巨匠・横尾忠則。TBSラジオで放送中の「竹中直人〜月夜の蟹〜」に2025年10月、横尾忠則がゲスト登場した際の一枚である。多摩美術大学でグラフィックデザインを専攻していた竹中にとって、横尾は神様とも言える存在だ。その特別な対談の場で、竹中の腕元に輝いていたのがフランク ミュラー「ロングアイランド」だった。

2025年10月12日、TBSラジオ「竹中直人〜月夜の蟹〜」番組公式Xより。竹中直人にとって、横尾忠則との対談は特別な瞬間だった。

2021年3月19日の『日経ビジネス』に掲載された過去のインタビューで、竹中はこの腕時計について興味深いエピソードを語っている。グラフィックデザインを専攻していただけに、購入前からビザン数字の美しさに引かれ、「あの文字を腕に置いておきたい」と思っていたという。そして60歳になるタイミングで購入を決意し、以来愛用を続けている。

「時計は、僕にとっては鎧というか、お守りみたいな感じです。弱い自分を支えてくれる、常にエネルギーを与えてくれる存在ですね。秒針が静かに動いて時を刻んでくれているのも、とてもロマンチックだと思います」(同インタビューより)

 この言葉からは、腕時計に対する竹中の深い思い入れが伝わってくる。時計を単なるアクセサリーに留まらない大切な存在として捉えている点に、多くのファンが共感を覚えたに違いない。


腕に宿る芸術性。ビザン数字に惹かれた表現者の選択

 独特のインデックスが目を引く「ロングアイランド クロノグラフ」Ref.1200CCATは、ホワイトゴールドのケースにギヨシェ装飾が施された、サーモンピンクの文字盤が魅力的な1本。ケースサイズは45mm×32.50mmと存在感のあるサイズながらも、上品なたたずまいを保っている。

 元々付属していたと思われるベルトはダークブラウンのアリゲーターストラップだが、竹中は鮮やかなイエローカラーのストラップに変更している。超個性派俳優として、また独自の確かな美的感覚を持つ表現者として、この華やかなカラーコーディネイトは、まさに竹中直人らしい選択と言えよう。

ロングアイランド

フランク ミュラー「ロングアイランド クロノグラフ」Ref.1200CCAT
自動巻き。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(縦45mm×横32.5mm)。3気圧防水。676万5000円(税込み)。

 69歳を迎えて、ますますいぶし銀の魅力を発揮する名俳優・竹中直人。その個性的なたたずまいと、高級な腕時計をサラリと着けこなす美的感覚は、グラフィックデザインを学んだ経験と、長年にわたる表現者としての歩みが育んだものだ。フランク ミュラー「ロングアイランド」の独特なインデックスに引かれ、「あの文字を腕に置いておきたい」と語る竹中の感性こそが、彼を唯一無二の存在にしている。

 時計を“お守り”と呼び、そこにロマンを見出す竹中直人。美大で培った審美眼が見抜いたビザン数字の美しさは、単なるデザインへの共感を超え、表現者としての生き方そのものを象徴しているかのようだ。舞台で、映画で、そしてこれからも——腕元で時を刻み続けるフランク ミュラーと共に、竹中直人は私たちに強烈なインパクトを与え続けるだろう。



Contact info:フランク ミュラー ウォッチランド東京 Tel.03-3549-1949


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