ソーラー? 電波? GPS? 腕時計選びで知りたい3大技術の違いを解説

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2025.12.17

腕時計を購入しようと思った時、「ソーラー」「電波」「GPS」といったワードに出合う読者は少なくないだろう。では、それぞれどんな技術を指しているのか? 本記事では、外装では判別しにくい違いを解説する。

シチズン アテッサ ACT Line エコ‧ドライブ電波時計 CB3045-61E


ソーラーウォッチ、電波時計、GPSウォッチの違い

 時計の機能としてよく見かけるソーラーウォッチ、電波時計、GPSウォッチという言葉。いずれも仕組みや機能が異なるものだ。この3つの技術の基本構造を把握することで、各モデルが想定する使用環境や強みが理解しやすくなる。

基本的な違い

 3つの方式の違いは、「動力源」または「時刻表示の手段」である。

 ソーラーウォッチは光を電気エネルギーに変換して、蓄えながら運針する仕組みを採用する。内部の二次電池に電力を蓄えるため、一定量の光が当たれば長期間の連続稼働が可能だ。定期的な電池交換を必要としない点も特徴である。

MRG-B2000JS

Photograph by Masanori Yoshie
カシオ G-SHOCKの最高峰ラインである「MR-G」から2024年にリリースされた限定モデル、「MRG-B2000JS」の文字盤。ソーラーセルの受光のためにポリカーボネートを用いているが、裏面に蒸着処理を施すことで艶感を出しており、時計のパッケージとして見ると従来のソーラーウォッチとはまったく異なる質感に仕上がっている。

 電波時計は標準電波(日本は福島局と九州局)を受信し、時刻情報を解析したうえで基準時刻に合わせる腕時計を指す。標準電波自体が原子時計によって作り出された正確な周波数と時刻情報を発信しているため、正確な時刻表示が可能だ。電波を受信できる環境では毎日自動で時刻修正が行われるため、手動操作の必要がない。ただし、建物内部や高電圧下、あるいは電化製品の近くでは受信感度が低下する場合があることには注意したい。

標準電波を発信する電波塔を持つ、九州の「はがね山標準電波送信所」の写真。

 GPSウォッチは、GPS衛星電波からの信号を受信して時刻情報や位置情報を取得する。GPS衛星には原子時計が搭載されているため、時計がある場所のタイムゾーンを特定のうえ、どこにいても極めて正確な時刻を表示するのだ。GPS信号は世界的に運用されているため、海外でも時刻補正が可能となっている。ただし、衛星信号は上空から届くため、屋外での受信が安定しやすい。時差のある地域を移動する際にも、受信すれば自動で地域に合わせた時刻に調整されるのがうれしいポイントだ。

 このような違いによって、腕時計が想定する使用シーンや価格に違いが生まれる。もっとも、電波時計やGPSウォッチのほとんどには、ソーラー充電式が採用されている。

ソーラーウォッチを深掘り

 ソーラーウォッチはその特性上、文字盤下にソーラーセルを配置して、光を電気エネルギーに変えている。太陽光だけでなく蛍光灯などの室内光でも充電できるため、日常環境で継続的に電力を確保しやすい。ボタン電池などといった一次電池を動力源とする時計だと、定期的な電池交換が必要となるが、ソーラーウォッチは充電・発電が可能であるため、繰り返し使うことができる。時間はモデルにもよるが、一度充電されれば長期間にわたって動いてくれるので、スマートフォンのように毎日充電器に接続する……などといった必要もない。ただし使い続けていく中で、バッテリーが劣化したり、容量が低下してしまったりするので、メンテナンスは必要だ。

 ソーラーウォッチはソーラーセルに光を通さなくてはならないため、文字盤にはポリカーボネート等の透過素材を使わなくてはならないという課題もある。しかし近年は国産時計ブランドを中心に、この文字盤の制約を乗り越えて独創的な装飾を与えたり、金属素材を使ったりする進化が目覚ましい。

PRC100ソーラー

ティソ「ティソ PRC 100 ソーラー」Ref.T151.422.11.031.00
ティソが2025年にリリースしたソーラーウォッチ。サファイアクリスタルの風防直下にソーラーセルを配置した「ライトマスター ソーラー テクノロジー」によって、文字盤を従来通り真鍮で製造することを実現している。光発電クォーツ(Cal.F06.615)。フル充電時約14カ月駆動。SSケース(直径39mm、厚さ9.22mm)。10気圧防水。7万4800円(税込み)。(問)ティソ Tel.03-6254-5321

電波時計を深掘り

 電波時計は日本国内で送信されている標準電波を受信するという特性もあってか、国内でメジャーな機能である。日本以外で標準電波を発信する基地局を持っている場所だと、アメリカ、イギリス、ドイツ、中国が挙げられ、メーカーやモデルによって日本国内のみの標準電波を受信するもの、世界6局に対応するものとがある。

 電波が受信できる環境にあれば、1日に数回決まった時刻に電波を受信したうえで自動的に時刻補正を行ってくれるため、日常的に時間やカレンダーを修正する手間はほとんどないだろう。ただし、鉄筋コンクリートの建物内部や高圧線下などでは、電波を受信しにくくなる時がある。もっとも受信できる環境にない時は、クォーツ式時計として時刻を刻む。

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セイコー アストロン「Nexter」Ref.SBXY061
2022年、セイコーウオッチが展開するセイコー アストロン「Nexter(ネクスター)」に加わった、シンプルな3針モデル。八角形のベゼルも特徴的だ。光発電クォーツ(Cal.7B72)。フル充電時約2年稼働(パワーセーブ時)。Tiケース(直径39.6mm、厚さ9.5mm)。10気圧防水。16万5000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

GPSウォッチを深掘り

 GPSウォッチはGPS衛星からの信号を受信すると前述した。GPS衛星は地球を周回しているため、受信できる環境にさえあれば、どこにいてもその場所のタイムゾーンに合わせた時刻情報を取得し、修正される。

 ただし受信時の電池消費が激しかったり、アンテナの配置や大きさによって、意匠に制約が出てしまうという側面もある。また、電波時計のみのモデルと比べて、高価格帯に位置付けられることが多い。

 なお、標準電波も受信するハイブリッド型なども発売されている。

CC4105-69E

シチズン アテッサ「Act Line」Ref.CC4105-69E
チタン素材に独自の表面硬化技術であるデュラテクトを施したスーパーチタニウム™製のシチズン アテッサ「Act Line」。DLC加工も施されているため傷に強いだけでなく、精悍なオールブラックに仕立てられていることも特徴だ。光発電エコ・ドライブ(Cal.F950)。月差±5秒(非受信時)。スーパーチタニウム™ケース(直径44mm、厚さ13.7mm)。10気圧防水。33万円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807


ソーラー・電波・GPSの違いを理解して最適な1本を

「ソーラー」「電波」「GPS」の、3つの技術の違いを解説した。ソーラー方式は光を電気エネルギーに変換して蓄え、長期間の連続稼働に対応する。電波時計は基地局から発信される標準電波を受信して時刻を修正する。GPSウォッチは衛星信号を利用し、海外を含む幅広い地域で時刻修正を行う。

 これから腕時計を購入しようと思った時、自身のライフスタイル、好み、そして予算に最適な1本を選ぶ際の参考になれば幸いだ。


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