「腕時計のある人生 Channel」RYは今年もブレなし! 「『純粋に欲しい』と心から思えた」新作BEST5

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2025.12.20

2025年に発表された新作時計の中から、その道のプロがベスト5を選ぶ年末恒例企画。今回は、「腕時計のある人生 Channel」を展開する腕時計系ユーチューバーのRYが、実際に自身が使う姿が想像できる5本をピックアップ。この基準を下にした、ブレのない選定理由も必見だ。


1位:ブレゲ「クラシック 5177」

2025年の新作を振り返ったとき、「今年の顔はブレゲだった」と素直に思えた。創業250周年という大きな節目にふさわしく、話題作が次々と登場した中で、ある意味ひっそりと現れたのが本作である。しかしその完成度は圧倒的だった。より製作難易度が高いとされる黒いグラン フー エナメル文字盤は、深いブラックの奥にエナメル特有の艶をたたえ、その上をローズゴールドのブレゲ針が静かに旋回する。派手さはないが、視線を奪われ、思わずため息が漏れる美しさ。一見すれば極めてシンプル。しかし細部にはブレゲが積み重ねてきた伝統と誇りが確かに宿っている。実に静かで豊かな1本である。

ブレゲ 5177

ブレゲ「クラシック 5177」Ref.5177BR/2N/9V602
自動巻き(Cal.7775)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KRGケース(直径38mm、厚さ8.8mm)。3気圧防水。422万4000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211


2位:ブランパン「フィフティ ファゾムス オートマティック」Ref.5007 1130 B64A

このモデルの発表を待ち望んでいた人は、世界中にどれほどいただろうか。思わず「待ってました!」と声を上げたくなる、伝説的ダイバーズウォッチの小径モデルである。ケース径は38.2mm。ダイバーズとしては控えめなサイズだが、これが実に絶妙。無骨でゴツゴツした印象になりがちなダイバーズウォッチというジャンルにおいて、本作は曲線的で流麗なフォルムを持ち、どこかエレガントですらある。通気性に優れたラバーベルトの装着感も良好で、アクティブなシーンから街中まで違和感なく使える万能性を獲得。伝統と実用性、そしてクラシカルなサイズ感。そのすべてが高次元で融合した、非常に完成度の高い1本。

ブランパン フィフティ ファゾムス オートマティック

ブランパン「フィフティ ファゾムス オートマティック」Ref.5007 1130 B64B
自動巻き(Cal.1150)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SSケース(直径38.2mm、厚さ12mm)。30気圧防水。233万2000円(税込み)。(問)ブランパン ブティック 銀座 Tel.03-6254-7233


3位:ベル&ロス「BR-05 36MM」Ref.BR05A-S-GR-ST/SST

もはや“金属ブレスレットを備えたドレスウォッチ”と呼んでも差し支えないほど、洗練されたプロポーションを持つ1本。ケース径36mmというサイズ自体は珍しくないが、金属ブレスレット仕様で厚さ8.5mm、さらに10気圧防水を実現しているモデルは意外なほど少ない。完成度の高さが際立つ理由は、数字以上のバランス感覚にある。特にグレースティール文字盤は、丁寧に仕上げられた外装との一体感が素晴らしく、控えめながら確かな存在感を放つ。ノンデイトの3針というベーシックな構成ながら、見た目の美しさ、軽快な装着感、実用的なスペック、そして価格設定まで含めた総合力は非常に高い。

BR-05 36 mm

ベル&ロス「BR-05 36 mm」 Ref.BR05A-S-GR-ST/SST
自動巻き(BR-CAL.329)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径36mm、厚さ8.5mm)。100m防水。64万9000円(税込み)。(問)ベル&ロス 銀座ブティック Tel.03-6264-3989


4位:ノモス「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー シルバー」

ワールドタイマーを腕に着けて海外を旅することは、筆者にとって長年の夢のひとつ。しかし実際には、価格、サイズ、厚み、防水性能などを考えると、実用的な選択肢は驚くほど少ない。そんな中で登場したのが本作である。ケース径40mm、厚さ9.9mm、10気圧防水というスペックは、かなり理想に近い。都市リングを操作する2時位置のプッシュボタンは、プチプチと心地よいクリック感があり、操作するたびに所有欲を満たしてくれる。清澄なシルバーダイアルに配された差し色も旅情をかき立てる。ついに“本当に旅で使える”ワールドタイマーが誕生したと感じさせる1本だ。

ノモス グラスヒュッテ クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー

ノモス「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー シルバー」Ref.791
自動巻き(Cal.DUW 3202)。37石。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ9.9mm)。10気圧防水。77万2200円(税込み)。(問)大沢商会 Tel.03-3527-2682


5位:A.ランゲ&ゾーネ「1815」Ref.220.028

「1815」誕生30周年という節目の年に、新たに加わった34mmケースのモデル。厚さはわずか6.4mmと、極めてクラシカルなプロポーションを持つ。従来の38.5mmモデルを単純に縮小したわけではなく、全体のバランスを緻密に再設計している点がいかにもランゲらしい。もともとデザインバランスがとても巧いブランドだが、その本領が存分に発揮されている。搭載されるCal.L152.1は、実に10年前から開発が始まっていたというから驚き。サイズダウンだけでなく、パワーリザーブは約72時間へと進化している点も素晴らしい。ブルーとホワイトゴールドの組み合わせも爽やかで、性別を問わず使えるシェアウォッチとしても非常に優秀なモデルである。

A.ランゲ&ゾーネ 2025年新作

A.ランゲ&ゾーネ「1815」Ref.220.028
手巻き(Cal.L152.1)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KPGケース(直径34.0mm、厚さ6.4mm)。3気圧防水。要価格問い合わせ。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845


総評

 今年も例年同様、筆者自身が「純粋に欲しい」と心から思えたモデルを基準にベスト5を選出した。2025年を象徴する個人的なキーワードは、「薄く、小さく、軽く、美しい」。その言葉通り、サイズや重量、装着感といった日常的な使いやすさと、時計としての美しさを高い次元で両立したモデルに強く惹かれた1年だった。

 複雑機構には今も変わらぬロマンを感じる。しかし最終的に心を掴んだのは、日常の中で自然に腕に載せたくなるシンプルな時計だった。結果として、今回のベスト5はいずれも“リアルに購入対象になり得るかどうか”という現実的な視点を通過したモデルばかりである。
また、2025年はとりわけミドルクラスが充実した1年だったと感じている。ジンの「104 Classic 12」、ロンジンの「レジェンドダイバー」白文字盤、レイモンド ウェイルの「ミレジム」“広田編集長スペシャル”、そして「トッカータ」など、価格以上の満足感を与えてくれる時計が数多く登場した。

 さらに上の価格帯に目を向けても、オメガの第4世代「シーマスター プラネットオーシャン」、グランドセイコーの「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A.」、ジャガー・ルクルトの「レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド」(黒&シルバー文字盤)なども、とても心揺さぶられた。

 結局のところ、金額やスペック、芸術性だけでなく、「実際に使う姿が想像できるかどうか」。その一点が、ベスト5に残るかどうかの決め手になった。来年はどんな時計が出てくるのか、今からとても楽しみである。



選者のプロフィール

腕時計のある人生 RY

1990年生まれ。本業は外国船の“船長”。初めて購入した機械式時計をきっかけに腕時計の魅力に取り憑かれる。腕時計好きの人口を増やすため、2019年にブログ「腕時計のある人生」を開設。20年にはYouTube「腕時計のある人生Channel」を開設した。webChronosへのインプレッション記事の寄稿やForza Stayleの人気動画シリーズ「ロック福田の腕時計魂」への出演なども行う。


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