新作時計ベスト5! スイス取材歴30年越えのベテラン時計ライターが選ぶ珠玉のモデルたち

FEATUREその他
2025.12.24

2025年に発表された新作時計の中から、時計のプロがベスト5を選ぶ年末恒例企画。今回は時計ライターの名畑政治が心にひっかかったモデルを挙げてくれた。ポルシェデザインのファースト復刻やミラネーゼブレスレットのジャガー・ルクルト「レベルソ」など、通好みの選出は流石のひと言だ。

名畑政治 ベスト5


ゼニス「G.F.J.」

ゼニスのCal.135といえば時計マニア垂涎の傑作キャリバーであり、いつか手に入れたい見果てぬ夢であった。それがまさか復刻されるとは、夢にも思わなかったが、現実となったことを素直に喜びたい。ただし、その価格ゆえ、夢のまた夢であることに変わりないのだが……。

ゼニス 2025年新作 「G.F.J.」Cal.135

ゼニス「G.F.J.」Ref.40.1865.0135/51.C200
手巻き(Cal.135)。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。Ptケース(直径39.15mm、厚さ10.5mm)。5気圧防水。695万2000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861


1970年代のポルシェデザイン「ミリタリー・クロノグラフ」を愛用している私としては、そのデザインのままでチタニウム・バージョンを製作したことを称賛したい。それにしても何十年を経過しても色褪せない外装デザインが素晴らしい。

ポルシェデザイン「クロノグラフ1 –1975 リミテッドエディション」

クロノグラフ1 –1975 リミテッドエディション

ポルシェデザイン「クロノグラフ1 –1975 リミテッドエディション」
自動巻き(Cal.WERK 01.240)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径40.8mm、厚さ14.15mm)。10気圧防水。(問)ドイツ時計 Tel.03-6277-4139


ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド」

この時計はピンクゴールドの使い方が秀逸。ケースはもちろん、ダイアルからインデックス、針、ブレスレットに至るまで、すべてをピンクゴールドで統一しつつ、決して華美すぎることなく品格高くまとめている手腕に脱帽だ。特に細かなメッシュのミラネーゼブレスレットが素敵だ。

ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド」
手巻き(Cal.822)。19石。2万1600振動/時。18KPGケース(縦45.6×横27.4mm、厚さ7.56mm)。3気圧防水。660万円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833


ショパール「L.U.C クアトロ‐マーク IV」Ref.161954-9001

極めてシンプルなスモールセコンドの3針モデルと思わせつつ、実は6時位置のスモールセコンドと同軸にポインターデイト表示が搭載されているという小技がきいたカレンダー・ウォッチ。緻密な質感が伝わるペールブルーのダイアルも良い。

ショパール L.U.C クアトロ マーク IV

ショパール「L.U.C クアトロ‐マーク IV」Ref.161954-9001
手巻き(Cal.L.U.C 98.09-L)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約216時間。Ptケース(直径39.00mm、厚さ10.40mm)。30m防水。751万3000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922


パルミジャーニ・フルリエ「トリック パーペチュアルカレンダー」Ref. PFH952-2010002-300181

パルミジャーニ・フルリエの新作永久カレンダーは、たったふたつのインダイアルにすべての暦表示を集約し、極めてミニマムな要素で永久カレンダーを成立させている。この時計を眺めていると、自然と「静謐」という言葉が心に浮かんでくる。

トリック パーペチュアルカレンダー

パルミジャーニ・フルリエ「トリック パーペチュアルカレンダー」Ref.PFH952-2010002-300181
手巻き(Cal.PF733)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ptケース(直径40.6mm、厚さ10.9mm)。30m防水。世界限定50本。(問)pfd.japan@parmigiani.com


総評

 なんとなくだが近年、高級時計というものの在り方が変わってきているように思う。具体的にどうとは表現しにくいのだが、高額化がどんどん進み、我々一般人が「ちょっと頑張れば買える」というモデルが減少し、一部の富裕層の方々が資産のひとつやマネーゲームの対象として手に入れるようなものになってきたことによって、時計を紹介する立場の人間としても、これまでと同じように接することが難しくなってきたような気がしてならないのである。

 そうなると我々のような時計の評論や紹介を生業とするライター、ジャーナリストが果たすべき役割とは一体何か? という素朴な疑問が湧いてくるし、そこにある種の虚しさも感じてしまうのだ。とはいえ時計界では気になるモデルや「もしも手に入れることが可能ならば手に入れたい」と感じる素晴らしいモデルも、それなりに登場してくるから、気を抜いているわけにもいかない。そのあたりが自分としては結構、ストレスになっているのである。

 ここに挙げた5つのモデルは、2025年に発表されたモデルの中で、いくらかでも私の心にひっかかったというか、強い印象を残したもの。もっと深く考えると、到底、5モデルでは足りなくなってくるのだが、ひとまず「ベスト5」という縛りに従って5モデルを選んで見たが、多分、あとから「あれも紹介したかった!」と後悔するに違いない。



選者のプロフィール

名畑政治

Kaori Yoshioka(asterisk-agency)
Directed  by Yuko Kikuchi

名畑政治

ブランド腕時計の正規販売店紹介サイトGressive編集長にして、日本における時計ジャーナリストの第一人者。1994年よりスイスの大規模時計展示会を取材し続け、得た見識は業界随一だ。クロノス日本版では特集記事の執筆のほか、巻末の「Chronos Top10 Ranking」で選考委員を務める。近年は犬派から猫派に転向(もちろん犬も好き)。共著に「カルティエ時計物語」。


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