創業50周年を迎えた2024年を起点に、ペキニエはブランド戦略の再構築に乗り出した。そのアップスケール戦略を主導しているのが、同年にマネージングディレクターとして加わったパトリック・ジングである。今回、最新作を携え、初来日を果たした。
Photograph by Yu Mitamura
髙井智世:取材・文
Text by Tomoyo Takai
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]
私たちの使命はフランス時計産業を再び花開かせること

1972年、スイス・ビエンヌ生まれ。スウォッチ グループで約16年間、スウォッチやハミルトン、ラドーに携わり、トップチームの一員として改革を主導。その後、米投資会社にてSIGG 社の再建を成功させる。2015年からはグラハムの経営責任者としてコスト削減や米中子会社設立を推進し、4年で黒字化を達成。2024年にペキニエへ入社し、マネージングディレクターに就任。
披露されたのは、刷新された「ロワイヤル」コレクションの新作2モデル。手巻きの「ロワイヤルパリⅡ マニュエル」と、自動巻き「ロワイヤルパリⅡ」のコーラルカラー文字盤だ。いずれもブランドの代名詞である自社製ムーブメント「カリブル ロワイヤル」を搭載する。
デザインの方向性について、ジングはこう説明する。「ベースは以前と変えていません。ただしケース径は40mm未満に抑え、かつ立体感を強調しました。ミドルケースやラグ、文字盤外周、リュウズにまで“グージュ(溝)”の造形を用い、複数の仕上げの対比によって、光の反射でも奥行き感を表現しています」。伝統的なレイアウトの踏襲は、初期モデル「ロワイヤル オリジン」へのオマージュだ。「これはレボリューション(革命)ではなく、エボリューション(進化)。まったく違うことをするのではなく、優れたものを正しい方向に磨き上げる」。

8つの特許を取得した自社製ムーブメント、カリブル ロワイヤルCal.EPM02を搭載。デザイン刷新後の第1弾モデルとなる。シルバーオパリン文字盤は、外周にグージュ(凹み)を設け、バーインデックスを架けることで立体感を演出。ケースは後付けラグの意匠を残しつつ、ベゼル幅を絞ることで視認性を高めている。カーフレザーストラップ。手巻き。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ11.5mm)。88万円(税込み)。
コレクションの整理についても明確に説明する。名称が混在していたロワイヤルのラインを「ロワイヤル オリジン」と「ロワイヤルパリⅡ」に集約し、前者を出発点、後者を進化形と再定義。今後は進化型ロワイヤルパリⅡと、スポーティーな「コンコルド」をブランドの両輪として展開していく方針だ。「ペキニエのムーブメントは非常に高いレベルにある。今回の再構築は、その底力を再発信するための是正です」。
ペキニエは完成品ブランドであると同時に、ネジ1本から自社設計するマニュファクチュールでもある。現在、カリブル ロワイヤル(EPM01、02)のムーブメントでは60%以上、カリブル イニシャル(EPM03)では約80%がフランス製部品で構成されている。針やブレスレットに至っては、すでに100%フランス国内調達が可能だという。一方で、文字盤やヒゲゼンマイなど一部の基幹部品は依然スイス製に頼らざるを得ないのが現状だ。だからこそ、フランシュ・コンテ地方を中心に国内サプライヤーを育成し、長期的視点でフランス時計産業の基盤強化を図ることがペキニエの使命だとジングは語る。
かつて「時計の都」と呼ばれたフランスの再興を目指し、ペキニエは「フランス時計文化の継承者」としての立場を明確にしている。その旗手たらんとする意思が、今回の再編と新作に表れている。



