カシオから発表された機械式腕時計「EDIFICE オートマチック」Ref.EFK-110D-7AJFをインプレッションする。本作は、カシオとして初めての機械式腕時計として登場した「EFK-100」シリーズのケースを小径化したモデルだ。ケースの造形やディテールに注目しつつ、本作の高い完成度とポテンシャルに迫ってゆく。

エッジの効いたデザイン、サテンとポリッシュの仕上げの使い分けが、この写真の角度から見ると分かりやすい。自動巻き。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)。
Photographs and Text by Shin-ichi Sato
[2026年4月10日公開記事]
機械式のEDIFICE オートマチックに小径モデルが早くも登場
今回インプレッションするのは、カシオが展開するEDIFICEの「オートマチック」Ref.EFK-110D-7AJFである。本作は、カシオ初の機械式腕時計として2025年6月に誕生したEDIFICE オートマチック「EFK-100」シリーズのデザインコードはそのままに、わずかにコンパクトに仕立てた新作となる。
EFK-100シリーズの発表の際には、世界トップクラスと言って差支えないクォーツ技術を持つカシオが、機械式腕時計に参入することについて(批判的な意見もありつつ)話題となった。なお、EFK-100シリーズの完成度の高さについては、クロノス日本版編集部が大いに語っているため、こちらも参照いただきたい。
カシオ EDIFICEについておさらい
カシオのEDIFICEは、モータースポーツの世界観を取り入れたモダンスタイルがコンセプトで、レーシングチームとのコラボレーションモデルやチーム運営をサポートする機能を備えたモデル、レーシングカーのサスペンションアームやメーター類から着想を得たモデルなどを擁する。ラインナップは、シンプルな3針モデルのほか、ブランドコンセプトを反映したスポーティーさがあり、近未来的なテクノロジー感や、デジタルガジェットを思わせる先鋭的な造形が魅力のモデルが多く並ぶ。
価格帯は5万円台以下が多く、カシオの技術力が発揮された多機能なクォーツムーブメントを搭載し、独自性のあるデザインにまとめられたモデルが、手に取りやすい価格で提供されていることは大きな魅力となっている。また、近未来的、先鋭的な造形と記したデザインを形にできている点は、カシオの優れた加工技術によるものであることも付記しておこう。
EDIFICE オートマチックRef.EFK-110D-7AJFのデザイン
さて、レビュー対象となるEDIFICE オートマチックは、機械式ムーブメントを搭載し、時分秒表示と日付表示を備えるシンプルなモデルである。本作を手に取った際の第一印象は“EDIFICEらしいデザインだな”というものだった。そう感じた理由は、直線とエッジを効かせたケースおよびブレスレット、視認性の高い緻密な秒スケール、これらから醸し出されるスポーティーでモダンなテイストだ。何かベースとなったモデルはあったのだろうかと、改めてEDIFICEのラインナップを見回してみたが似たデザインがない。そこで、オシアナスの方も念のため確認したところ、曲線を効果的に取り入れたオシアナスと本作はコンセプトが大きく異なっているのは明白だった。このあたりの“ブランド毎にデザインコンセプトを確立し、使い分ける手腕”は、カシオのうまさだろう。

文字盤はフォージドカーボンの特徴的なテクスチャーを再現したデザインだ。このデザインは、EDIFICEがモータースポーツの世界観を取り入れ、Ref.EFK-100XPB-1AJFがフォージドカーボンをケースと文字盤に採用したことと連動している。シルバーカラー文字盤の本作は、浅い凹凸によって特徴的なテクスチャーを再現しており、光が入射する角度によって、表情が大きく変わる点が魅力である。
搭載されるのは、なんと“ミヨタ製”ムーブメント
搭載されるのは、ミヨタ社による日本製ムーブメントで、カシオの表記ではモジュール番号が“5766”。スペック比較、片巻き上げ式であること、外観からミヨタCal.8215相当のようだ。ミヨタ製ムーブメントであれば、低価格でありながら信頼性が高く、安心して使用できそうだ。なお、ケーシングは中国であること(CASED IN CHINA)が記載されている。

注目は、EFK-100シリーズではTMI(セイコーの関連会社であるタイムモジュール)製のCal.NH35Aを搭載しており、本作とは異なることだ。モデルによってムーブメントを使い分けることは多いが、同じデザインコンセプトであり、わずかなサイズ違いのモデルにおいて異なるムーブメントメーカーを採用するというのは珍しい。
引き締まったデザインと、高い視認性で満足度が高い
本作のケースサイズは直径38mm、厚さ11.8mmであり、Ref.EFK-100YD-7AJFが直径39mm、厚さ12.5mmであったのに対してコンパクト化されている。残念ながら従来モデルに触れたことがないので明言できないが、小径化よりも薄型化の影響の方が大きいのではなかろうか。店頭で比較できる場合は、厚さに注目することをおすすめする。
着用してみると引き締まったデザインで好印象だ。直線を基調としたケースは、面の境界のエッジがくっきりとしている。ケース外側に向かって飛び出すような造形がない点は、引き締まった印象に大きく影響していそうだ。また、やや粗めのサテン仕上げとポリッシュ仕上げのコントラストも効いたデザインで、メタリックな魅力を引き立てている。

時分針は、中心線上にスリットが設けられた「ホロー形状」で、立体感もあり、凝ったデザインだ。従来のEDIFICEからの系譜が感じられる針形状だが、ここまでエレガントさに振った、細身のデザインは初めてではないだろうか? インデックスは細い仕立てで、こちらもエレガント。天面がサテン仕上げで、エッジ部にポリッシュを施した手の込んだ仕立てだ。
シンプルな文字盤デザインに加えて、ムーブメントの振動数に合わせた秒スケールが斜めから見た際にも視認しやすく、判読性は良好である。さらに、分針、秒針ともに外周のスケールにしっかりと届いている。機械式ムーブメントは、クォーツムーブメントに比べて針を動かす出力トルクが大きく、長い針を採用しやすいことから、カシオの中では機械式の本シリーズならではのデザインと言える。
優れたパッケージングで着用感が良い
本作は、手首への収まりが良い優れたパッケージングによって、着用感が良好だ。ラグは長めだが腕に沿って曲げていて、手首周長約18cmの筆者では手首から飛び出す様子もないし、ブレスレットの可動域が広くてフィット感が良い。もう少し腕の細い方でもマッチしそうだ。厚さ11.8mmに抑えられているため、シャツの袖への収まりが良い。今回はカジュアルなワークシャツに合わせたが、ビジネス向けのブロードシャツにも合いそうだ。


筆者の考えるカシオ EDIFICE オートマチックの魅力
EFK-110シリーズは、シルバーのRef.EFK-110D-7AJFのほかに、ブラックのRef.EFK-110D-1AJF、ネイビーのRef.EFK-110D-2AJFがラインナップされている。いずれもビジネス向けインフォーマルウォッチの王道と言えるカラーで魅力的だ。
本作のディテールに着目すると、仕上げの違いのコントラストとエッジの効いた外装、立体的な針、ポリッシュの面取りの入ったインデックスは、しっかりとコストをかけて製作されているのが分かる。文字盤外周のスケールまで届いた分針と秒針は機械式ならではの見どころだ。これらを、手に取りやすい4万9500円(税込み)でまとめ上げて提供している点は、カシオがこれまで磨いてきた加工技術が発揮されている。着用感なども総合的に勘案して、筆者は本作の完成度は高いと評価した。
本作の完成度を根拠に、“カシオが良質な機械式時計を提供している”と言って間違いないが、これが市場に広く認知されるには、もう少し時間がかかるだろう。ただ、認知を広げるための足掛かりとして、EDIFICE オートマチックは十分なポテンシャルを持っていると筆者は感じた。
インプレッションの最後に、文字盤縁まで届いた分針と秒針を見て、カシオはクォーツに真剣に取り組んできたが故に、クォーツの弱みと機械式時計の強みを深く理解しているのだろうと筆者は思った。だからこそ、ギリギリまで長く作られた針には、これまでクォーツ式に取り組んできた設計者の“これがやりたかった”という強い思いが込められているのではないだろうか、と。よって、この長い針が、本作の存在意義のひとつであると、筆者は結論付けた。




