TASAKIの新章

FEATURE本誌記事
2018.08.11

(右)奥に立つ人物が、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエの開発・製造責任者と副社長を兼任する浜口尚大氏。
(中)組み立て途中のTASAKI専用ムーブメント。地板全面にペルラージュ装飾が施されているのが見える。繊細なコート・ド・ジュネーブ仕上げのブリッジをつまむピンセットは、表面を傷付けない特別製。
(左)外装の製作まで一貫してヴォーシェが担い、ケーシングや針付けまで行った完成品として日本に届けられる。

(右)高性能なCNCマシンと金型を使い分けて製作された各パーツは、伝統的な手仕事によって優れた美観が与えられる。写真は、ブリッジのエッジのポリッシュ仕上げの様子。複雑な形状のブリッジのエッジに合うよう、丁寧にポリッシャーを当て、完璧な鏡面を得る。
(左)レディス用自動巻きローターのエッジも専用マシンを手作業で操作し、ポリッシュ仕上げされる。この後、表層にはTASAKI専用の装飾仕上げを施し、独自の美観を与える。

日本の美意識を形にするスイスの名門ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ

 これら美しく精巧なムーブメントの作り手は、スイスのヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエ(以下ヴォーシェ)。本誌読者にはなじみ深い、高級機に特化し、技術力に長けたムーブメントメーカーである。名だたるスイスのウォッチメゾンやフランスのクチュールメゾンが採用してきた同社のムーブメントが、日本の腕時計に搭載されたのは本作が初だ。

 2015年にスタートしたTASAKI TIMEPIECESは、これまで〝ジャパンメイド〞をひとつのコンセプトとしてきた。日本人独立時計師、浅岡肇氏製作による球体ムーンフェイズを備えるトゥールビヨンやスケルトンモデルを擁する「オデッサ」シリーズは、その代表。今回、ヴォーシェとパートナーシップを組んだのは、機構的にシンプルな腕時計における、より高い完成度を目指したから。ヴォーシェの開発と設計を統括する責を担うのが、日本人技術者の浜口尚大氏であることも、TASAKIの感性を形にするのに大いに役立ったであろう。その浜口氏は、以前の取材で「高度な工業化と手仕事とを組み合わせ、ベースキャリバーを顧客のニーズに合わせてカスタマイズできるのが強み」だと語っていた。

 前述したように、バランスが積むふたつのムーブメントが、いずれもTASAKIが望む美観を備えていることが、彼の言葉を証明する。多軸のCNCマシンと伝統的な金型とを使い分け、量産と高精度加工を両立。そして仕上げには、徹底した手仕事を駆使することで隅々まで美を整える。こうして出来上がったヴォーシェ製ムーブメントを包み込む外装もまた、スイスで製作されている。ヴォーシェは、グループ企業にダイアルメーカーとケースメーカーも擁し、外装を含むトータルな腕時計製作も請け負っているのだ。洗練されたミニマルな外装まで一貫してヴォーシェが担ったバランスは、TASAKI TIMEPIECES初のスイスメイドのシリーズとなった。

 下に並ぶのは、メンズのラインナップ。ダイアルのカラーは、白、黒、グレーのモノトーンにネイビーと、どれも日本的な色調が採用されている。直線状のラグはストラップとブレスレット、いずれとも端正に調和し、実にドレッシーである。日本のジュエリーとスイスのウォッチメイキング、それぞれのトップメゾンが手を組んで生まれたバランスは、シンプルな外観と機構との完成度を極め、日本人の感性と美意識とを刺激する。


前出の2モデルを含め、メンズラインは全9モデルをラインナップ。SSモデルのダイアルは、ホワイトとブラック、ネイビーの3色展開。それぞれにアリゲーターストラップ仕様と5連のSSブレスレット仕様が選べる。直線状のラグは、裏側のくぼみに据えたバネ棒でストラップやブレスレットを留める仕組み。下段左端は、ケースとブレスレットのいずれもがSAKURAGOLD™とSSのバイカラーである。ベゼルとラグの色の対比により、デザインコンセプトがより明確になった。マイクロローターを採用した自動巻きムーブメントは、厚さ2.6mmの超薄型設計。それを包むケースもすべて6.85mmと薄く、ドレッシーな印象をより高める。いずれも自動巻き(Cal.TPW 808)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。3気圧防水。直径39.5mm。上段の3本はSS×アリゲーターストラップで各90万円。下段の右3本はSS×SSブレスレットで各105万円。下段左は18K SAKURAGOLD™×SSで181万円。