普通のクロノグラフでは満足できなくなったあなたへ。+αの計測機能を持ったモデル5選

FEATUREその他
2024.05.07

クロノグラフ機構に加えて、その計測機能に何かしらの付加価値を持った、5本のモデルを紹介する。お馴染みの複雑機構をプラスしたモデルから、各社ならではの特徴を盛り込んだモデルまで、それぞれの個性にスポットを当てて見ていこう。

野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2024年5月7日公開記事]


クロノグラフ機構+αで個性が際立つ、傑作5本を紹介

 数ある複雑機構の中でも高い人気を誇るクロノグラフ。手軽に経過時間を測定できるという実用性の高さはもちろん、複数のインダイアルと針を備えたデザイン性、磨き上げられたレバーをはじめとするムーブメントの審美性は、シンプルな3針モデルでは味わうことができない要素だ。加えて言えば、昨今のクロノグラフはより耐久性を重視した設計を持つようになり、扱いやすくもなった。

 今回は、そんなクロノグラフウォッチの中でもさらに、何かしらの付加価値をプラスしたモデルをピックアップして紹介する。フライバックスプリットセコンド等のより複雑なクロノグラフ機構を搭載したモデルから驚異の薄型モデルまで、各社の知恵と技術が盛り込まれた傑作たちを見ていこう。


ブレゲ「タイプ XX 2067」Ref.2067ST/92/3WU

ブレゲ「タイプ XX 2067」Ref.2067ST/92/3WU
自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211

 1950年代にブレゲがフランス空軍へ供給した「タイプ 20」。本作は、その民生機にあたるモデルのデザインを復刻したパイロットクロノグラフ「タイプ XX 2067」だ。オリジナル同様にフライバック機構を搭載している。

 ステンレススティール製のケースには、12時間までの目盛りが配された両方向回転ベゼルが備わり、ブラックのダイアルにはアルファ型の時分針とアラビア数字インデックスを組み合わせている。3時位置に大型の15分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンド、4時半位置にデイト表示を配し、機能性も抜群だ。

Photographs by Eiichi Okuyama
新しいタイプ XXは、着想源が異なるふたつのモデルが展開されている。本記事で紹介している「タイプ XX 2067」は民生版がオリジナルであり、搭載ムーブメントはCal.728だ。もうひとつは軍用モデルがオリジナルとなった「タイプ 20 2057」で、搭載ムーブメントはCal.7281。なお、後者はスモールセコンドと30分積算計の、ふたつのインダイアルを備えている。

 特筆すべきは、新規に開発された自動巻きフライバッククロノグラフムーブメントのCal.728だ。瞬時に帰零と再スタートを行うフライバックを前提に設計した頑強な構造を持つだけではなく、高い携帯精度を実現する毎時3万6000振動のハイビートや、シリコン製ヒゲゼンマイと脱進機を採用したことによる、優れた耐磁性を備えている。ムーブメントは、シースルーバックから鑑賞することが可能。


IWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ・ヨットクラブ」Ref.IW390702

IWC「ポルトギーゼ・クロノグラフ・ヨットクラブ」Ref.IW390702
自動巻き(Cal.89361)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約68時間。SSケース(直径44.6mm、厚さ14.3mm)。10気圧防水。182万6000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

「ポルトギーゼ」コレクションの優雅なデザインを踏襲しつつ、よりスポーティな要素を取り入れた「ポルトギーゼ・クロノグラフ・ヨットクラブ」。直径44.6mmの大型のケースにはリュウズガードが追加され、防水性は10気圧に高められている。

 縦にふたつのインダイアルを配したダイアルは、「ポルトギーゼ クロノグラフ」を象徴するレイアウトだ。一般的にツーカウンターのクロノグラフは、30分積算計とスモールセコンドを備え、最大30分までしか計測できないことが多い。しかし本作は、12時位置のインダイアルに60分積算計と12時間積算計を同軸で配することで、最大12時間まで計測することを可能としている。クロノグラフにはフライバック機構を搭載されており、計測途中でも瞬時にリセットと再スタートを行うことができる。

シースルーのケースバックからは、金色のプレートがあしらわれたローターや、クロノグラフ機構がのぞく。ブリッジの金色のエングレービングも特徴的だ。

 自社製の自動巻きムーブメントCal.89361は、約68時間の実用的なパワーリザーブを備えるほか、セラミックス製パーツを採用することによって耐久性を高めた、ぺラトン式の巻き上げ機構を搭載している。


ゼニス「クロノマスター スポーツ チタン」Ref.95.3100.3600/39.M3100

ゼニス クロノマスター スポーツ チタン

ゼニス「クロノマスター スポーツ チタン」Ref.95.3100.3600/39.M3100
自動巻き(Cal.エル・プリメロ3600)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径41mm、厚さ11.9mm)。10気圧防水。155万1000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861

 ゼニス「クロノマスター スポーツ」に追加された、2024年新作。その名の通り、ケースやブレスレットの素材に、グレード5チタンを採用している。既存のラインナップでは、ベゼルやインダイアルも含めてカラフルな色合いのモデルが多かったが、本作は落ち着いた色味に統一されている点も特徴だ。ガルバニックニッケルグレーカラーのダイアルに、アンスラサイト、グレー、シルバーの3つのインダイアルを組み合わせている。

ゼニス クロノマスター スポーツ チタン

2019年、エル・プリメロ誕生50周年の節目に誕生した、次世代ムーブメントCal.エル・プリメロ3600。50年の間、大きく設計を変えてこなかったエル・プリメロに初めて加えられた、大型アップデートである。

 搭載するCal.エル・プリメロ3600は、最初期の自動巻きクロノグラフムーブメントのひとつ、エル・プリメロの最新型。その特徴は、毎時3万6000回の高振動を生かしたクロノグラフ機構にある。一般的なクロノグラフの場合60秒で1周するセンターのクロノグラフ秒針は、本作の場合10秒で1周するのだ。これによって、1秒未満の計測値を正確に読み取ることができる。インダイアルは、3時位置が60秒積算計、6時位置が60分積算計、9時位置がスモールセコンドとして機能する。


ブライトリング「プレミエ B15 デュオグラフ 42」Ref.AB1510171C1P1

ブライトリング「プレミエ B15 デュオグラフ 42」Ref.AB1510171C1P1
手巻き(Cal.B15)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径42mm、厚さ15.3mm)。10気圧防水。139万7000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707

 現行の「プレミエ」は、1943年に登場した同名のクロノグラフウォッチをモチーフとした、エレガントなコレクションだ。優雅なケースラインや立体的なアラビア数字インデックス等のデザインは、マッシブな印象の強いブライトリングのほかのコレクションではなかなか見られないものだ。

「プレミエ B15 デュオグラフ 42」は、スプリットセコンドクロノグラフを搭載したモデルである。センターには2本のクロノグラフ秒針が重なっており、クロノグラフ起動中にリュウズと同軸のプッシャーを押下することで1本のクロノグラフ秒針が停止し、ふたつの異なる時間を同時に計測することができる。

手巻き式ムーブメントはローターを持たないため、シースルーバックからの眺めは見応えがある。審美性とユーティリティを兼ね備えたムーブメントといえるだろう。

 搭載するムーブメントは、手巻きのCal.B15。自社製自動巻きスプリットクロノグラフムーブメントのCal.B03をベースとしており、本作もその堅牢性とメンテナンス性を引き継いでいる。

 ケースバックはシースルー仕様であり、ストライプ装飾が施されたムーブメントを鑑賞することが可能だ。自動巻きローターがないため、テンプのほか、コラムホイールやレバー等のクロノグラフ特有の機構を存分に楽しむことができる。


ブルガリ「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」Ref.103661

ブルガリ「オクト フィニッシモ クロノグラフ GMT」Ref.103661
自動巻き(Cal.BVL318)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径43mm、厚さ8.75mm)。100m防水。267万3000円(税込み)。(問)ブルガリ ジャパン Tel.0120-030-142

 薄型時計の代名詞である「オクト フィニッシモ」をベースとして、クロノグラフとGMT機能を搭載したモデル。3つのインダイアルは、3時位置が第2時間帯表示、6時位置が30分積算計、9時位置がスモールセコンドである。第2時間帯表示は、9時位置のプッシュボタンによって1時間単位で調整することが可能だ。

 クロノグラフには、レバーやバネを多数組み込む必要があるため、厚みが出てしまうことが一般的だ。しかし本作の場合、さらにGMT機能を搭載しながらも、ケースの厚さは8.75mm。ムーブメント自体の厚さはわずか3.3mmに抑えられている。自動巻き機構に外周式のペリフェラルローターを採用することで中央のスペースを確保し、そこにまるでパズルのようにパーツを組み込んでいる。クロノグラフの作動は、水平クラッチとコラムホイールによって制御されている。

本作に搭載される自動巻きCal.BVL318はローターをペリフェラル式にしたほか、キャリングアーム式水平クラッチを採用し、かつこのクラッチの先端を薄くしてブリッジの下に潜り込ませるなど、薄型化のためのブルガリの創意工夫が見られる設計となっている。

 シースルーバックからは、ストライプ装飾が施された受けや歯車を鑑賞することが可能。薄型ケースでありながらも100m防水を備えていることも魅力のひとつだ。


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