カシオ、期間限定で初代G-SHOCKのレストアサービスを提供

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2018.10.31

(左)G-SHOCKのファーストモデルが「DW-5600C-1」。1983年4月発売。販売当時の定価は1万1400円(税抜)。モジュール(ムーブメント)をゴムパッキンで支えてケース内で浮遊させる中空構造を採用したほか、モジュール自体も耐衝撃性能を高めている。

(右)DW-5000Cの後継機が、DW-5600C-1である。1987年6月発売。当時の販売価格は9800円(税抜)。このモデルから防水表示が国内向けは「20BAR」海外モデルは「200M」と区別された。また暗所でも時間を確認できるようライトが追加された。

写真提供:カシオ計算機

光成形技術により、欠品したベゼルを再生産

 耐衝撃ウオッチ”G-SHOCK”の誕生35周年企画として、カシオ計算機(以下カシオ)は、初代G-SHOCKである「DW-5000C」とその後継機である「DW-5600C」を対象に、期間限定でレストレーションサービスを行う。期間は2018年11月1日 の9時から2019年1月31日まで。金額は9600円に配送料などを含めた1万1232円(税込)、交換対象は、べゼル・バンド・電池の3点。色はレギュラーモデルのブラックのみ。受付は専用のウェブサイト(https://casio.jp/support/repair/dw/)で行う。

 1983年に発表された「DW-5000C」と87年の「DW-5600C」は、初出から30年以上が経ったため、修理用の外装部品が欠品していた。中古市場で部品は入手できるが、人気の高まりを反映して価格はかなり高い。対してカシオは、新しい「光成形技術」でベゼルの複製に成功。長らく不可能だったDW-5000CとDW-5600Cのベゼル交換に対応した。なおベゼルの製造はカシオビジネスサービスで行い、部品交換を含む修理はカシオテクノが担う。

 興味深いのは、オリジナルの部品を忠実に再現した点だ。射出成形用の金型を精密に加工にすることで、カシオはG-SHOCKやプロトレックなどに使われる、樹脂部品の完成度を高めてきた。その結果、G-SHOCKのエントリーモデルでさえも、ケースからは金型のつなぎ目が目立たなくなり、エッジが立つようになった。しかし金型は製造費と維持費がかかるため、少量生産には適さない。

 そこでカシオは、修理用ベゼルの新造にあたって、金属製の金型ではなくシリコン型を使う「光成形技術」を採用した。これは大量生産向きではないが、樹脂部品の少量生産には適している。3Dプリンターで作った部品と異なり、部品に積層構造がないため、そのまま製品として使えるほか、金型が不要なため、製造コストも押さえられる。またソフトなシリコン型で成形するため、オリジナルの形状もそのまま複写可能だ。現在、光成形技術の採用を検討するメーカーはあるが、時計業界での導入はカシオが初だろう。

 シリコン型の素材に選ばれたのは、光透過性のある透明なもの。成型したシリコン型に粒上の樹脂ペレットを挟み、そこに光を照射してベゼルを成形する。カシオによると、過去のモデルの修理依頼を受けても、オリジナルの金型がないため、外装部品の提供は不可能だった。しかし「金型を起こすほどの修理数が見込めないため、それ以外で外装部品を復元する手法を探していた」とのこと。同社はさまざまな手法を模索していたが、2年前に新しい「光成形技術」に着目。今回のレストアサービスで採用となった。

 なおオリジナルのベゼルやバンドから型を取ったため、形状はディテールを含めてまったく同じ。また使われる素材も金型で成形するものと変わらない。ただ、成形部品にバリがあるため、手作業で取り除く必要があるほか、機械の調整に時間がかかるため、修理できる個数は、一日に数十個が限界とのこと。

 「あくまで顧客サービスとして開始した」初代G-SHOCKのレストアサービス。他モデルへの対応も期待したいが、今後の予定は未定とのこと。また、現時点では商品の返却も国内に限られているため、海外からの受付には対応していない。今回の結果次第で存続が決まる、カシオの新しいレストアサービス。5000-Cや5600-Cをお持ちの方は、ぜひサービスを受けて欲しい。手間を考えれば、価格もリーズナブルだ。


ベゼル製造の工程

工程1 : キャビ型成型。金型でいうところの凹型である。素材は光透過性のあるシリコン素材だ。
工程2 : コア型成型。金型で言うところの凸型である。


工程3 : キャビ型とコア型の最終硬化過程。これでベゼル成型用のシリコン型は完成となる。
工程4 : 真空ライン成型。シリコン型の内部を真空にするための通り道「ライン」を製作する。


工程5 : 樹脂ペレット充填。キャビ型に黒い樹脂ペレット(粒)を流し込む。
工程6 : 型閉じ。ペレットを充填した後、キャビ型とコア型を合わせる。


工程7 : 光成型。ペレットの充填後、光を照射して成型する。
工程8 : 冷却。シリコン型ごと冷却して、樹脂を固めていく。


工程9 : 脱型。冷却後、ベゼルを取り出す。

工程10 : 仕上げ。手作業でバリを切り取れば完成である。なお、その後、ベゼルの凹部に塗装を施す。



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