1月に発表されたブルガリ、ウブロ、ゼニスとセイコーの新作時計を振り返る(後編)

FEATURE本誌記事
2020.06.11

ゼニス

魅力的な女性用モデル、デファイ ミッドナイト

ブルガリ同様、女性用モデルを前面に押し出したゼニス。メインは小ぶりな「デファイ ミッドナイト」と、新しくなった「エリート」である。前者は完全なインターチェンジャブルストラップ/ブレスレットを、後者は鮮やかな文字盤と新しいケース構造に特徴がある。

(右)デファイ エル・プリメロ 21 カール・コックスエディション
テクノアーティスト、カール・コックスとのコラボモデル。ベゼルとストラップのステッチは暗闇で光るほか、秒針の代わりにレコードが回転する。自動巻き(Cal.エル・プリメロ 9004)。3万6000振動/時(時計部分)、36万振動/時(クロノグラフ部分)。53石。パワーリザーブ約50時間(時計部分)。カーボン(直径44mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定200本。206万円(税別)。(左)「エル・プリメロ A384 リバイバル」。好事家感涙の1本。1969年当時のゲイ・フレアー社製ブレスレットをほぼ忠実に再現しているが、質感などは向上した。自動巻き(Cal.400)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径37mm、厚さ12.6mm)。5気圧防水。88万円(税別)。

 長らくブレスレットにだけは、革新的な変化をもたらしてこなかったゼニス。しかし、2020年の「LVMH ウォッチウィーク ドバイ」に参加した各社は、他社からの遅れを詰めるべく、さまざまなブレスレットモデルをリリースした。ゼニスで言えば、女性用の「デファイ ミッドナイト」と「エル・プリメロ A384 リバイバル」に加わった、昔懐かしいラダーブレスレットだ。前者はブレスレットとストラップを完全に交換できるインターチェンジャブル。重いブレスレットを交換式にするのは理論上難しい。ゼニスは、まず昨年のパイロットで試した後、展開を広げたのだ。接続部の剛性は高く、ブレスレットの遊びも適切だった。なお、このモデルで最も魅力的なのは、ベゼルにダイヤモンドをあしらった仕様である。大ぶりのパヴェを隙間なく詰めたのは、ゼニスの女性用モデルに対する意気込みを証明する。

エリート レディ ムーンフェイズ

エリート レディ ムーンフェイズ
新しくなったエリートは、サイズが36mmと40.5mm(メンズモデル)になった。ラグが短く、ケースが薄いため細腕の女性にも使えるだろう。自動巻き(Cal.692)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS+約0.6ctのダイヤモンド(直径36mm、厚さ9.35mm)。94万円(税別)。
デファイ ミッドナイト

デファイ ミッドナイト
非常に野心的な新コレクション。鮮やかな文字盤と、インターチェンジャブルストラップを持つ。3種類の文字盤と、ダイヤモンドのありなしが選べる。自動巻き(Cal. 670)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径36mm、厚さ10.35mm)。115万円(税別)。

 往年のゲイ・フレアー製を模したレプリカブレスレットを着けた後者は明らかに好事家向け。ただし、コマの調整部分はピンからネジに置き換わったほか、バックルのプレートも肉厚に改められた。不快なカシャカシャ音をよく抑えてあるため、見た目と異なり、今風の印象を与える。ヘッドとブレスレットの重量バランスもまずまずで、軽いクロノグラフが欲しい人にはうってつけだろう。ただし、レザーストラップのモデル同様、文字盤の仕上げもまた70年代風だ。購入を考えている人は、70年代風に太い印字はチェックした方がいいだろう。

 女性用モデルに注力した1月ドバイでのゼニス。個人的には「エル・プリメロ2」の本格的なお披露目を心から期待したい。(広田雅将:本誌)

パイロット タイプ20 レスキュー

パイロット タイプ20 レスキュー
既存モデルのバリエーション違い。定番モデルがベースのため細部の抜けはない。ムーブメントは小さめだが、針合わせの感触も良い。自動巻き(Cal.679)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径45mm、厚さ14.25mm)。10気圧防水。79万円(税別)。
デファイ エル・プリメロ 21 ランドローバー エディション

デファイ エル・プリメロ 21 ランドローバー エディション
ツヤを落としたブラストケースを採用。自動巻き(Cal.エル・プリメロ 9004)。3万6000振動/時(時計部分)、36万振動/時(クロノグラフ部分)。53石。パワーリザーブ約50時間(時計部分)。Ti(直径44mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定250本。147万円(税別)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861


グランドセイコー/セイコー

グランドセイコー誕生60周年を祝う、鬼気迫るラインナップ

早くから2020年のバーゼルワールド撤退を表明していたセイコーは、早くも3月初旬に新作群を披露。今年はグランドセイコーの初代モデル発表から60周年にあたり、GS銘柄の新作展示は鬼気迫るものとなった。6月オープン予定となるGS専門の新工房に関する詳細も同時に発表され、更なる発展に大きな期待が寄せられる。

(右)グランドセイコー エレガンスコレクション 初代グランドセイコーデザイン復刻モデル SBGW259
初代GSをモチーフとしたデザイン復刻版。GSブルーでダイアルを飾ったこのモデルは、2017年にGS専用に開発された新素材ケースを採用する。手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブリリアントハードチタン(直径38mm、厚さ10.9mm)。3気圧防水。85万円(6月下旬発売予定)。
(中)グランドセイコー エレガンスコレクション 初代グランドセイコーデザイン復刻モデル SBGW258
初代GSの14K金張り仕様を彷彿とさせる18KYGケース版。オリジナルと同書体のGSロゴはアプライド仕様。ダイアルのSDマークは貴金属製のインデックスを示す。手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KYG(直径38mm、厚さ10.9mm)。3気圧防水。280万円(6月下旬発売予定)。
(左)グランドセイコー エレガンスコレクション 初代グランドセイコーデザイン復刻モデル SBGW257
初代モデルの発表当時に、ごく少数が生産されたプラチナモデルも復刻。18Kゴールド製のダイアルはPtモデルの専用で、GSロゴは彫刻で再現されている。手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Pt950(直径38mm、厚さ10.9mm)。3気圧防水。400万円(6月下旬発売予定)。

 グランドセイコーの初代モデル発表から60周年を迎え、鬼気迫るラインナップで新作展示を行ったセイコー。早くからバーゼルワールド撤退を表明していた同社は、2月初旬に行われたJWC(国内時計メーカーによる合同展示会)続き、早くも3月には大本命とも言える新作を公表。コロナショックの影響もあって、大々的に……とはいかなかったものの、内容的には大満足のひと言だ。

グランドセイコー マスターピースコレクション スプリングドライブ 8Days ジュエリーウオッチ SBGD205

グランドセイコー マスターピースコレクション スプリングドライブ 8Days ジュエリーウオッチ SBGD205
テーパードバゲットカットされたダイヤモンドとブルーサファイアのインデックスで、諏訪地方で見られる「細氷」を表現。手巻きスプリングドライブ(Cal.9R01)。56石。パワーリザーブ約192時間。Pt950(直径43mm、厚さ13.5mm)。10気圧防水。世界限定10本。2000万円(6月下旬発売予定)。
グランドセイコー エレガンスコレクション 彫金ダイヤル SBGW263

グランドセイコー エレガンスコレクション 彫金ダイヤル SBGW263
雫石町の語源となった「滴石」を、照井清の彫金で表現。インデックスは石に当たって跳ね返る水をイメージ。手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Pt950( 直径39mm、厚さ11.8mm)。3気圧防水。世界限定20本。1000万円(7月発売予定)。

 迫真の出来栄えとなったグランドセイコーの「メカニカルハイビート 36000 80アワーズ」は今号の表紙を飾っているが、他にもGSブランドでの新機軸を展開。特にGS初のメンズ用ジュエリーウォッチとなった「スプリングドライブ 8デイズ ジュエリーウオッチ」は、世界市場におけるGSの新たな立ち位置を占う試金石となるだろう。GS専門の新工房となる「グランドセイコースタジオ 雫石」は6月オープンが予定されているが、これまでGSの最高品質を担ってきた「雫石高級時計工房」と共に、生産能力と製品展開の拡大に大きな期待が寄せられる。また、GSにとって象徴的な土地柄である雫石の伝承をモチーフにした彫金モデルも同時に発表されている。

グランドセイコー スポーツコレクション スプリングドライブ 5Days SLGA003

グランドセイコー スポーツコレクション スプリングドライブ 5Days SLGA003
オフセットマジックレバーとダブルバレルの採用で、薄型化と長時間駆動を両立させた新型スプリングドライブを搭載。自動巻き(Cal.9RA5)。38石。パワーリザーブ約120時間。ブライトチタン(直径46.9mm、厚さ16.0mm)。600m防水。日本限定60本。115万円(8月発売予定)。
セイコー アストロン グローバルライン 時の記念日制定100周年記念限定モデル SBXC071

セイコー アストロン グローバルライン 時の記念日制定100周年記念限定モデル SBXC071
セイコーアストロンに初のオールチタンケースが誕生。先行発売される時の記念日制定100周年の限定モデルのみ、セラミックベゼル仕様となる。GPSソーラークォーツ(Cal.5X53)。Ti+セラミックス(直径42.8mm、厚さ14.9mm)。20気圧防水。世界限定2000本。28万円(7月下旬発売予定)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

 コレクター目線での大本命は、やはり初代GSのデザイン復刻版だろう。ケース径こそオリジナルの35㎜から38㎜に変更されているが、デュアルカーブサファイアガラスなどが織りなす独特の風情と迫力は、決して初代のインパクトにも引けを取らない。また次世代の自動巻きスプリングドライブとなる「キャリバー9RA5」を搭載したプロフェッショナルダイバーズも登場。ムーブメントスペックを含むこちらの詳細は、2020年8月に発売する号(9月号)でお伝えする予定だ。(鈴木裕之)


これでバーゼルワールドは生き残れる!?出展料返還問題決着と2021年1月のフェア開催中止!

https://www.webchronos.net/features/45571/