独創性際立つパネライ8選。ラジオミールとルミノールのおすすめ紹介

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2021.04.12

パネライの腕時計は軍用ダイバーズウォッチをルーツとし、イタリア軍のシビアな要求に応えてきた来歴がある。タフで視認性が高く、クッション型ケースのラジオミールやブリッジ型リュウズプロテクターも個性的なルミノールを紹介しよう。

ルミノール 1950


ダイバーズが出発点 パネライの成り立ち

パネライのコレクションは豊富なバリエーションを取りそろえているが、ほぼすべてのモデルはマッシブな軍用ダイバーズウォッチをルーツとする。腕時計の基準サイズを変えたとも評価される、パネライの成り立ちを見ていこう。

一目でわかる「デカ厚」デザイン

ラジオミール

1938年に生産されたラジオミール。クッション型ケースや丸みを帯びたアラビアインデックスは、現在にも引き継がれている。

イタリアの高級スポーツ時計メーカー「パネライ」は、ケース径45mm前後のクッション型ケースが特徴的な、いわゆる“デカ厚”デザインの腕時計を多数リリースしている。

現在ラインナップされるコレクションの大部分は、1936年に誕生した軍用ダイバーズウォッチ「ラジオミール」や、その改良型として50年に登場した「ルミノール」が基になっている。

これらは第2次世界大戦中にイタリア海軍のフロッグマン(第1潜水隊特殊部隊工作員)が作戦中に着用したモデルであり、現代のコレクションも防水性・耐久性・視認性・夜光性・パワーリザーブに優れる。

そのデザイン性・機能性や特殊な来歴から、ミリタリーファンや時計愛好家はもちろん、個性的な腕時計を求める層からも高い人気を誇る。

海軍とともに歩んだパネライの歴史

1860年、パネライの創業者ジョバンニ・パネライは、イタリア・フィレンツェに時計店をオープンした。この店は時計工房を兼ね、さらにフィレンツェ初の時計学校であった。

イタリア海軍へ手首装着型水深計やフラッシュライトなどを納入していた同社は、さらなる要望に応えるためラジウムベースの自発光塗料「ラジオミール」を開発し、1916年にフランスで特許を出願した。

36年にはイタリア海軍のフロッグマンに向けた腕時計を試作。これのモデルが現在のラジオミールの祖である。

転機となったのは、東西冷戦の集結。それまで軍用時計として民間への販路が禁じられていたパネライは、93年には軍需契約を終了し、民間向けモデルの製造を開始。

97年にはヴァンドームグループ(現リシュモングループ)の傘下となり、翌年には国際的デビューを果たすとともに、デカ厚ブームの火付け役となったのだ。


パネライの魅力

オフィチーネ パネライ

2014年に移転したオフィチーネ パネライの新しいマニュファクチュール。

パネライはラジオミールから続く個性的なデザインを継承しながら、さまざまな独自技術を開発して品質向上に努めている。

2005年にはパネライ初となる自社開発ムーブメントを完成させ、14年にはスイス・ヌーシャテルに新たなマニュファクチュールをオープンさせた。

軍用として使われた高い視認性

パネライの初期モデルは、暗い海中での視認性を最重視して設計された。1938年製作の初代ラジオミールのケース径47mmというビッグサイズや、2針仕様などもそのためである。

また、ダイアルが2重構造だったのも特徴。当時の自発光塗料が体積が大きいほど強く発光する性質を持っていたため、全面に自発光塗料を塗布した下段プレートに、インデックス部分をカットオフした上段プレートを重ねるという方法を採用した。

ただし、自発光塗料は放射線を含んでいたため、近年では視認性とともに安全面を追求し、新世代夜光塗料「スーパールミノバX1」を採用している。

ほぼ変わらない安定したデザイン

1993年、パネライはイタリア海軍巡洋艦の船上で民間向けコレクションの発表を行なった。以来、軍用ダイバーズウォッチの製造メーカーという来歴が、同社のブランディングの中核を担っている。

このため、製造する腕時計はラジオミールまたはルミノールの派生モデルに絞っているのだ。

また、1940年代に生まれた「LEFT-HANDED(レフト・ハンデッド)」モデルも同社の伝統だ。特殊潜水隊員はコンパスや水深計を左腕に装着していたため、腕時計は右腕に装着する想定でブリッジ型リュウズプロテクターを左側に配する。

自社製のムーブメント

Cal.P.2002

2005年に発表された、パネライ初の自社製手巻きムーブメント、キャリバーP.2002。約8時間のパワーリザーブとGMT機能を備えている。

パネライはかつてアンジェリュス製やロレックス製のムーブメントを使用していたが、現在では設計・部品製造からケーシングまで一貫生産を行うマニュファクチュールに成長した。

パワーリザーブは軍用ダイバーズウォッチ仕様の約8日間を基準として、最短でも約3日間、最長で約10日間を誇る。さらに、時計愛好家を唸らせる独自機構も豊富だ。

たとえば「Cal.P.3001/C」は、カーボンやタンタルによる低摩擦の複合素材を用い、液体の潤滑油を必要としない前代未聞のムーブメントである。石数はわずかに4石で、それらにもDLCコーティングを施して注油が不要という仕様だ。


パネライの選び方ポイント

パネライの腕時計はほぼすべてがラジオミールかルミノールをルーツとし、正面から見たフォルムは総じてクッション型だ。モデルの差をロジカルに把握するための、3つの視点を確認しておこう。

自動巻きか手動巻きか

パネライのムーブメントは自動巻きか手巻きで、クォーツ式は採用しない。自動巻き式は装着する限り自動的に主ゼンマイが巻き上がるため、動力の安定性という面で優秀だ。

手巻き式よりローター分の厚みは生じるが、マイクロローターを採用した薄型自動巻きムーブメントの用意もある。

手巻きは主ゼンマイを巻き上げる手間がかかるが、パネライでは約8日間や約10日間のパワーリザーブを誇る手巻きムーブメントが豊富だ。

パネライの腕時計の特徴であるブリッジ型リュウズプロテクターを備えたモデルなら、腕時計を操作する感覚は魅力として作用するだろう。

デカ厚を楽しむためのケース径

パネライの腕時計は、デカ厚であることが魅力のひとつである。個性的なスタイルとマッシブなボリューム感は、他ブランドの腕時計とは大きく異なる存在感を示し、アクティブかつパワフルな印象を演出する。

ラジオミールのケース径は45mmを基準とし、さらに大きな47mm、48mm、49mm、やや小さい42mmというラインナップだ。

ルミノールでは44mmを基準とし、40mm、42mm、47mm、スペシャルエディションの50mmというサイズもある。

同様のデザインでサイズ違いというモデルも多いため、腕や手とのバランス、主張の強さを加味してベストなサイズを選択しよう。

従来のデザインと違うものもある

ラジオミール 1940

ワイヤラグから一体型ラグへの変更が「ラジオミール 1940」の最大の違い。

ラジオミールとルミノールには随時新作が追加されていくが、復刻モデルのリリースもある。それが「ラジオミール 1940」「ルミノール 1950」だ。

ラジオミール 1940は、ステンレススティールの塊から一体成型されたケースとラグ、シリンダー型のリュウズなど、1940年代のラジオミールの特徴を備える。

ルミノール マリーナ 1950

「ルミノール マリーナ 1950」は、自社製ムーブメントを搭載したハイエンドライン。デイト窓部分に拡大レンズがなく、リュウズプロテクターに特許取得を示す「REG.T.M.」の印字が配される。

ルミノール 1950は、ラジオミールからルミノールへの過渡期に生まれた、初期ルミノールを忠実に再現したモデルだ。

2020年はルミノール誕生70周年にあたり、70年保証をうたう「ルミノール マリーナ(PAM01117)」や、44mmゴールドテックケースを初採用した「ルミノール マリーナ ゴールドテック(PAM01112)」などもリリースした。