ロンジンの歴史を現代に伝える、ヘリテージコレクションの探求(前編)

FEATUREWatchTime
2022.07.18

WW2以降のアーカイブで復刻モデルの主役となったダイバーズウォッチ

 航空系の豊かな歴史を背景に、ヘリテージコレクションは十分なバリエーションを実現していた。しかしロンジンは、長い間支持されている他のカテゴリーにもメスを入れたのだ。それがダイバーズウォッチである。ここでもフォン・カネルと彼のチームは、インスピレーションを得るのに十分な、歴史的に重要性のあるミュージアムピースに不足することはなかった。

 1960年に発表され、ロンジンの他にもウィットナー、エニカ、アルピナなどが採用したクラシカルな「スーパーコンプレッサー」スタイルを取り入れたモデルこそ、2007年に発表された「ロンジン レジェンド ダイバー」のお手本となった時計だ。

 ブランパンの「フィフティ ファゾムズ」が先駆けて採用した、現在では一般的と言える逆回転防止ベゼルの代わりに、ロンジン レジェンドダイバーではインナー式回転ダイビングスケールを採用。42mm径のケースの2時位置に設けられたリュウズにて、インナーベゼルの操作を可能としている。ブラックの文字盤にホワイトのディテールは、間違いなくレトロなレイアウトであり、スキューバダイバーのレリーフがエングレーブされたケースバックもまた、オリジナルにならったものである。

 ケースバックの内側ではロンジンのCal.L633が稼働し、約38時間のパワーリザーブを保持している。初出の10年後である2017年に、ロンジンはこのモデルをヴィンテージ風のミラネーゼブレスレットを与えたパッケージにて発売し、より時代感を演出した。その後、モダンなエッジを加えたブラックのPVDコーティングバージョンを投入している。また、同時にムーブメントもシリコンヒゲゼンマイを採用し、パワーリザーブを約72時間に延長したCal.L888に順次切り替え始めた。

ロンジン レジェンド ダイバー

ロンジン「ロンジン レジェンド ダイバー」
1960年代のダイバーズウォッチを復刻したモデル。これまでケースサイズや素材、ムーブメントなど、さまざまなバリエーションが展開されてきた。自動巻き(Cal.L888)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径42mm、厚さ12.7mm)。30気圧防水。31万4600円(税込み)。

 1967年のアーカイブに目を移したロンジンは、そこで第二幕を飾るにふさわしい別のダイバーズを見つけ出した。それはバイコンパックスのクロノグラフであり、印象的なバーガンディカラーのベゼルを備えたモデルであった。「ロンジン ヘリテージダイバー 1967」の発表は2015年。

 オリジナルに対し忠実に敬意を払ったディテールに満ちていた。バトン型の針、シルバーカラーのサブダイアルや3つ目のインダイアル、そして純正マニアも納得のデイト表示、ケースの拡大も僅か2mmに抑え、直径42mmとした。

ヘリテージ ダイバー 1967

ロンジン「ヘリテージ ダイバー 1967」
1967年のクロノグラフ搭載ダイバーズを復活させたモデル。ケースバックには他の復刻ダイバーズウォッチ同様、ダイバーの絵がエングレービングされる。販売終了。

 ダイバーズウォッチの人気が継続している状況を考慮し、ロンジンはより歴史あるヘリテージピースで、海に関連し活躍したモデルを探し求めた。大きく話題をさらった「ロンジン スキンダイバー」は、ロンジンを含むスウォッチ グループが最後に参加したバーゼルワールド2018年において、そのデビューを飾ることとなった。

 300m防水を備えた直径42mmのステンレススティール製ケースを持つ、ロンジン スキンダイバーのヒントとなったのは1958年製の「T910」である。ロンジンはオリジナルが持つレトロ調の魅力を失わぬよう、極力忠実な復刻に努めたのだ。デザイナー達はマットブラックの文字盤にデイト表示を加えることさえも憚りながら、非常にヴィンテージテイストに富んだ6時位置に描かれた「Automatic」の筆記体表記は残したのであった。

 黒色のラチェット式ダイバーズベゼルが、オリジナルのベイクライトからコーティングされたスティール製へと交換されたことが、容認された数少ない現代風の改良点である。時刻表示のみのスキン ダイバーが搭載するムーブメントはキャリバーL888。よりコンテンポラリーなダイバーズウォッチのファミリーである「ハイドロクエスト」に搭載された機械と同様の、小さなエンジンである。

 フォン・カネルは「小売店からはいつも、もっとダイバーズウォッチが欲しいという声が上がっていました」と語る。そして「今年(2020年)は1920年に販売した本数の、200倍ものダイバーズウォッチを売り上げる見込みです」と付け加えた。かくして「ヘリテージ ダイバーズ」は、二重の意味でマーケットからの要望に応える形となった。

ロンジン スキンダイバー

ロンジン「ロンジン スキンダイバー」
1958年のT910をよみがえらせたモデル。カレンダーすらも採用しない、非常に忠実な復刻がされた。自動巻き(Cal.L888)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径42mm、厚さ13.7mm)。30気圧防水。34万3200円(税込み)。

Contact info: ロンジン Tel.03-6254-7350


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