アメリカのビンテージシューズマニアに捧げる「アーチケリー パンチドキャップトウ S-811」/コニサーズ・チョイス

2021.07.03

アメリカのビンテージシューズに魅せられた靴好きにとって、忠実にディテールを再現する靴ブランド「アーチケリー」は実にありがたい存在だ。信念を持って取り組むことで見えてくる靴の世界を堪能してほしい。

倉野路凡:文 Text by Rohan Kurano
吉江正倫:写真 Photograph by Masanori Yoshie
[クロノス日本版 2021年7月号 掲載記事]

アーチケリー パンチドキャップトウ S-811

アーチケリー パンチドキャップトウ S-811
基本モデルは7種類。デザインやディテールの多少の変更は有料オプションで対応。革はレージングカーフ、バックスキン、コードバンなどがある。ちなみにレージングカーフは、ブラック以外の色は大東ロマンに特注で作らせている。製法はグッドイヤーウェルテッド製法。価格は13万5300円~。


遠かったアメリカが好き!〝ビン靴〟マニアに捧げる一足

 アメリカのビンテージシューズ(以下“ビン靴”)が好きという人たちが存在する。そんな彼らを夢中にさせているのが2020年に誕生した「アーチケリー(ARCH KERRY)」だ。ディレクターの清水川栄さんは自らも“ビン靴”のコレクターであり、数多くの靴を見てきた人物。そんな清水川さんが1950~60年代のアメリカの“ビン靴”を彷彿とさせるオリジナルシューズを、受注によるパターンオーダーというかたちで実現した。靴を手掛けているのは靴職人の舘篤史さん(オリジナルの靴ブランド「サンターリ(SANTARI)」を展開)。「例えば1950年代のフローシャイムのペンフィールドという靴はコレクターの間でも人気が高く、アッパーの革質の良さ、細かいピッチで縫われたアッパーステッチとコバの出し縫いのステッチ、ピッチに合った目付けなど、現在の既製品では出せない端正な雰囲気を漂わせています」と清水川さん。

 この「パンチドキャップトウ S-811」は、そんな“ビン靴”要素を盛り込んだ、アーチケリーを代表するフラッグシップモデルである。木型は70年代の“ビン靴”をベースに、甲を低く、踵を小さくした。色はタンカラー(赤茶)で、内羽根の7アイレット、アッパーに施された三重ステッチ、一文字の部分の革を折り込むカールエッジ、アッパーとライニングの間にフェルトを挟むなど、“ビン靴”に見られる仕様を採用。他にライニング側面に配された青地に金のブランドタグやオリジナルのラバーヒール(パターンオーダーで選べる)など、アメリカ的なディテールを追求した傑作だ。

 黄金期の“ビン靴”に負けない柔らかな革を見つけるのに苦労したと、清水川さんは語る。「2019 年末に東京レザーフェアという革の見本市があり、鞄の中に1950年代の“ビン靴”をそっと忍ばせ、各ブースの革と見比べて回りました。そこで出合ったのがタンナーの『大東ロマン』のレージングカーフでした。肌理が細かく、厚さ1.1mm程度で、柔らかな質感が特徴です」。当時の“ビン靴”を忠実に再現するアーチケリー。昨今注目のクラシックなウェアにも似合いそうだ。



Contact info: アーチケリー Tel.050-5875-6446
https://archkerry.com/


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