ユリス・ナルダンの創業175周年記念モデル「マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ」をレビュー

FEATUREWatchTime
2022.01.26

ユリス・ナルダンは創業175周年を記念して、過去のアイコニックなモデルを元にした「マリーン トルピユール」シリーズを発表した。今回は、このシリーズより発表された年次カレンダー搭載クロノグラフモデル「マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ」のレビューをお届けする。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

ユリス・ナルダン「マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ」
自動巻き(Cal.UN-153)。53石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。SS(直径44mm、厚さ13.66mm)。50m防水。世界限定各300本。146万3000円(税込み)。
Originally published on watchtime.com
Text by Roger Ruegger
2022年1月26日掲載記事

端正な機能美を湛えた、年次カレンダー搭載クロノグラフモデル

 トルピユール(torpilleur)とはフランス語で、戦場において大型で重武装の軍艦に対し、魚雷を仕掛けるために設計された小型のボートのことを意味する。2017年にユリス・ナルダンはこの名を取り込み、自社製ムーブメントを搭載した野心的な価格の時計に与えた。2021年、ユリス・ナルダンは自社の175周年に際し、19世紀から20世紀にかけて世界中の海軍に対してクロノメーターを納めてきた輝かしい過去へのオマージュとして、トルピユールシリーズを拡大させている。

 ユリス・ナルダンのアメリカ社長、フランソワ=グザヴィエ・オティエは、「クロノメトリーは175年にわたって、私たちが常に唱えてきたものです。今回の新しいマリーンの限定モデルは、世界中の友人そしてコレクターのために設計されました。世界のほとんどの海軍に時計を供給してきた私たちの過去に敬意を表します。この展開はブランドの一章を紹介する素晴らしい方法であり、過去2年間に投入してきた多くの先鋭的な作品にふさわしいものです。つまり、このコレクションで過去にタイムスリップしたり、現在に注目したり、あるいはブランドの未来を垣間見るということが可能となったのです」と解説する。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

直径44mmというサイズ感にも関わらず、手首における着用感は比較的コンパクトな印象だ。

 タイムトラベルについて少し触れると、1846年に23歳のユリス・ナルダン(1823年1月22日~1876年2月20日)は、最高レベルの精度で時間を計測できる懐中時計とマリンクロノメーターに対する需要の高まりに注目し、結果としてその後数十年にわたり18の金メダルを含む4300以上もの賞を受賞する栄誉に輝いている。その顧客には、アメリカ海軍も含まれていた。1905年、ワシントン海軍天文台は優れたクロノメーターを魚雷艇の乗組員に対して供給できる時計メーカーを求めてコンペを開催。ユリス・ナルダンは数年にわたってこのコンペを勝ち抜き、1950年代までアメリカ海軍公式サプライヤーとして継続的な関係を築き上げた。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

大きなねじ込み式リュウズには、ユリス・ナルダンのシンボルである錨とブランドのイニシャルがあしらわれている。

 今回「マリーン トルピユール」シリーズより発表された7モデルは、ユリス・ナルダンの現在の実力をさまざまな側面から見せている。自社製ムーブメント、シリコン製パーツ、トゥールビヨン、ムーンフェイズ、エナメル文字盤、そしてここで取り上げたクロノグラフに見られる経過時間の計測や年次カレンダーなどである。自動巻きキャリバーのUN-118(ブルーエナメルとパンダモデル)とUN-119(ムーンフェイズ)にはC.O.S.C.クロノメーター認定が取得されている。

 オティエは、「シリコンなど新素材の採用にあたり、実際に着用できる状態でのテストによるパフォーマンスの検証がより重要になってくると思います。つまりケーシング後の、オーナーの方が着用されるものと同じ条件で行うということです。そのため弊社ではブランド独自の認定『ユリス・ナルダン・クロノメーター&パフォーマンス証明』を発行しているのです。ムーブメントのパフォーマンスをテストするだけでなく、カレンダーやクロノグラフ、パワーリザーブ表示などの追加機能も含めます。ユリス・ナルダンの時計の中にはC.O.S.C.認定を取得しているものもありますが、弊社の認定はそれを上回る安心感をコレクターの方々に与えていると信じています」とコメントしている。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

バランスの取れた文字盤はふたつのサブダイアルから構成されている。3時位置は30分積算計、9時位置はスモールセコンドに加えて赤色の針で月表示が示される。

「マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ」は、ラッカー塗装の白色またはマットブルーの文字盤が用意されており、自社製自動巻きキャリバーUN-153が搭載される。文字盤には9時と3時位置にシルバーのカウンターがあり、年次カレンダーは9時位置の月表示と、6時位置のデイト表示が連動して自動的に切り替わる。このムーブメントは大きなリュウズを使って前進・後退の調整ができる。つまり便利なことに、誤って行き過ぎた場合にも月と日付は前進・後退方向共に調整が可能ということである。キャリバーUN-153はサファイアクリスタル製ケースバックから鑑賞でき、一部にオープンワークが施されたローターには、表面のフロスト加工と合わせて錨のモチーフがあしらわれている。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

クロノグラフムーブメントUN-153は、2016年にブランド設立20周年を迎えたマリーンコレクションで初めて発表された。2014年に発表されたUN-150をベースに、リュウズで前後両方向に調整可能なアニュアルカレンダーを搭載している。

 ここで紹介しているモデル(Ref.1533-320LE-0A-175/1A)は、すっきりした白文字盤にローマンインデックス、青焼きのステンレススティール針を備えた均整の取れた横ふたつ目のクロノグラフのレイアウトである。組み合わされているのは大ぶりのホワイトステッチが施されたレザーストラップで、別売りのブルーストラップと取り替えも可能だ。

 50m防水のステンレススティール製ケースの直径は44mmあるが、ラグのコンパクトなデザインのため手首において大きすぎる印象はない。それに加え、白文字盤にブルーの針という組み合わせは幅広いシーンで使いやすく、エレガントとスポーティーの垣根を難なく潜り抜ける。白文字盤の視認性は(おそらくブルー文字盤よりも)全体的に高いが、針と文字盤に蓄光処理が施されていないため、日没後のクルーズには不向きである。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

サテン仕上げのサイドプレートは2本の青焼きネジで留められ、個々の時計のシリアルナンバーが入っている。

 このモデルの最大の利点は、パワーリザーブ表示に次ぐ、使いやすさと利便性を兼ね備えた年次カレンダー機能を備えていることだろう。さらに自社製ムーブメント、特徴的な海に関連したデザイン、限定された生産本数など、ユリス・ナルダンとともに時計クルーズに出掛けたくなる理由を多く秘めている。

マリーン トルピユール アニュアルカレンダー クロノグラフ

クラシックな腕時計の雰囲気を醸し出すフルーテッドベゼル。



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