海軍スペックの“大人な”ダイバーズ。チューダー「ペラゴスFXD」を実用レビュー

FEATUREインプレッション
2022.12.25

インプレッション時計として今回届いたのは、チューダーの本格ダイバーズウォッチ「ペラゴスFXD」。チタン製で自動巻きダイバーズという使いやすいスペックを備え、幅広い服装にもマッチする実用時計だ。

長谷川剛:文・写真
Text & Photograph by Tsuyoshi Hasegawa
2022年12月25日掲載記事

時計初心者がまず選ぶべきは、自動巻きのダイバーズ!?

 ある雑誌の編集者と話す機会があった。機械式時計のメカニズムを解説するというページの企画趣旨を、筆者がライターとしてその編集者から説明を受けたのである。

 解説ページのサンプル時計が自動巻きのダイバーズだったので「コレはなんでダイバーズなの?」と尋ねたところ、編集者いわく「機械式時計を1本買おうとしているウォッチビギナーがいるとするじゃない? 彼等がショップで出会うモデルって今のご時世、だいたい自動巻きになるでしょ? で、そういう人ってオンオフ使えるものを欲しがるじゃない。とすると防水性や堅牢性に優れつつ、オフの装いもオフィススタイルもカジュアルかつスポーティに寄せてる昨今、いちばん合理的であるのは三針のダイバーズってコトになるでしょ? そういう人向けのページにしたいから」とのこと。

 なんだか一足飛びだなぁと思うフシもあったが、確かにそういうニーズはあるだろうと最終的には納得した。以上のロジックも含め、ルックスや使い勝手に優れつつ、値段にもリアリティある自動巻きダイバーズは、これからさらに注目されるだろうと思った次第である。

 そんな感慨を軽く反芻していたとき手元にやってきたのが、チューダーの「ペラゴスFXD」だ。ここはひとつウォッチビギナーのひとりとなって、自動巻きダイバーズとやらのポテンシャルを再検証したいという気が俄然わき起こったのである。

チューダー ペラゴスシリーズの新作であるペラゴスFXD。フランス海軍とのコラボから生まれた爽やかなカラーリングが印象的なダイバーズモデル。自動巻き(Cal.MT5602)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。Tiケース(直径42mm、厚さ12.75mm)。47万4100円(税込み)。

フランス海軍お墨付きの由緒正しき実用時計

 ペラゴスと言えば、チューダーにおけるダイバーシリーズとしてブラックベイとともに人気を誇るモデルだ。なかでもペラゴスは当初500mの防水性を誇る本格ダイバーとして登場し、注目を浴びたことが記憶に残っている。

 チューダーのダイバーズを語るうえで外せないポイントとして、各国海軍に採用されてきた歴史的事実がある。世界中の過酷な環境下でトライアルを繰り返し完成したモデルであり、特にペラゴスはそのノウハウを詰め込んだ優良ダイバーズだと聞いている。

 そして新作のひとつであるペラゴスFXDは、フランス海軍の特殊部隊「コマンドー・ユベル」からのオーダーを受けて製造された特別な1本とのこと。定番のペラゴスが500m防水であるのに対し、このペラゴスFXDは200mであり、ヘリウムエスケープバルブを排すことでスマートなケース厚に改められている。

 またノンデイトであることや、ベゼルも両方向回転式かつカウントダウン方式の表示にアレンジされているところもこのモデルならでは。そしてケースバックにはフランス海軍ロゴとフランス海軍のダイビングウォッチを示す「M.N.21」のエングレービングがあしらわれており、所有欲を巧みに煽るディテールもしっかり兼備している。

ケースバックに刻まれたフランス海軍ロゴとフランス海軍のダイビングウォッチを示す「M.N.21」のエングレービング。ちなみに「21」は採用年である。

 さて実際に、ケース径42㎜にして美丈夫な防水ケースを擁する注目のダイバーズを腕に着け、インプレッションを開始していこう。いつもは34㎜径くらいの小振りヴィンテージ時計ばかりを偏愛する筆者にとって、この大きさやゴツさがネックになるだろうと当初は思われた。

 しかし装着してみて早速感じたのは、実に軽くて快適だということ。チタンケースに加えファブリックストラップという組み合わせも原因だろうが、まったくヘビーさやストレスを感じさせないところは意外であった。ストラップも折り返し用の金具こそ付属するものの、ベルクロ留めのためPC作業等でバックルが手首に当たって違和感になるということもない。

ペラゴスFXDにはラバーストラップも用意されているが、今回試したのはファブリックストラップ。フランスの老舗リボンメーカー、ジュリアン・フォール社のもの。海軍お墨付きのスペックでありながら、非常にソフトな着け心地。

 ただ実用的には問題ナシであるものの、このベルクロのベリベリ感はどうだろうか? 前回のG-SHOCKのインプレッション(GM-B2100BD-1AJF)でも言及した事柄だが、高感度な女子達がベルクロ開閉の財布を持つ男子に対し、嫌悪感をまったく隠そうとしないというネット風説を信じる筆者にとって、このディテールは、ちょっと不安材料に感じたのである。

 さて、期待を上回る着用感の良さから連日このペラゴスFXDを着け続けて過ごしたのだが、やはり特に印象に残ったのは、大きなサイズかつインデックスも針もボールドなため、非常に時刻が見やすいということ。

チューダーダイバーズの祖となるのが1950年代にリリースされた「サブマリーナー」。特徴的なイカ針も当時に生みだされたデザインだ。

 分針と瞬時に見分けがつくチューダーダイバーを象徴する“イカ針”の存在など、チラ見でもだいたいの時刻が把握できるところは非常に好印象だ。さて、本題である自動巻きダイバーズの汎用性をファッションライターらしく吟味していこうと思う。

 まず注目したのはこのペラゴスFXDがフランス海軍に由来し、ネイビーというカラーをまとっているところ。ちなみにペラゴスは当初からブルーモデルがラインナップされているのだが、それよりもややダークなネイビー系カラーであり、ファッション的に爽やかかつシックに見えるところがひとつの特徴だと気に留まっていたのだ。