サイラス 独立したクロノグラフが示すブランドの独自性

FEATURE本誌記事
2023.04.30

1本の時計に独立したふたつのクロノグラフ。複雑なムーブメントを搭載しながらも、その操作系は驚くほどに洗練されている。サイラスの独創性と、クロノードの技術力が光る意欲作だ。

クレプシス DICE

クレプシス DICE
モデル名に入った「DICE」は、“Double Independent Chronograph Evolution”の頭文字を取ったもの。複数の仕上げを使い分けられた立体的なクッションケースには、同社の独創性が垣間見える。自動巻き(Cal.CYR718)。パワーリザーブ約60時間。Ti(直径42mm、厚さ16.5mm)。10気圧防水。世界限定50本。594万円。
Photographs by Masanori Yoshie
Text by Tsubasa Nojima
Edited by Kouki Doi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年5月号掲載記事]


ふたつのクロノグラフ機構を備えた「クレプシス DICE」

クレプシス DICE

ふたつのクロノグラフ機構は、3時側のリュウズで操作する「赤」系統と、9時側のリュウズで操作する「青」系統に分かれている。これによって、直感的にふたつのクロノグラフを使い分けることが可能となり、誤操作も防ぎやすい。針と同様にコラムホイールも色分けされており、オープンワークされたダイアルを通して、歯車やレバーの動きを鑑賞することができる。レイアウトに余裕を持たせることができる、ダイアル側に配置するクロノグラフ機構のメリットを生かしたモデルだ。

 独創的な複雑機構を得意とするサイラスが、本格上陸を果たした。同社を牽引するディレクターは、2010年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで「最高の独立した時計職人」と評されたジャン=フランソワ・モジョンだ。傘下には彼が設立したムーブメントメーカー、クロノードを擁する。

 そんな同社を代表するコレクションが「クレプシス」だ。特徴はケースの左右に配されたふたつのリュウズ。それぞれに異なる機能が割り当てられており、搭載した複雑機構の直感的かつ安全な操作を可能としている。「クレプシス DICE」は、ひとつの時計にふたつのクロノグラフ機構を搭載する。センターにはクロノグラフ秒針、3時位置には30分積算計が配され、どちらも12時側を起点とした赤い針と、6時側を起点とした青い針が取り付けられている。3時側の赤いリュウズを押すと、赤い針が計測を開始し、9時側の青いリュウズを押すと、青い針が計測を開始するという仕組みだ。

 本作のムーブメントは、ダイアル側にクロノグラフ機構を配している。これによって、レイアウトに余裕を持たせているだけではなく、オープンワークされたダイアルとの組み合わせによって、計測しながらコラムホイールやレバーの動きを鑑賞することができるのだ。ミドルケースとベゼルには、軽量なグレード5チタンを用いている。ボリューム感のあるケースながら、サイドの一部に梨地を取り入れることで、立体感のある造形に仕上げられている。

 同社の時計作りは、時計を単なるタイムキーパーではなく、芸術品として昇華させることに主眼を置いている。本作を見れば、人々の叡智と独創性に懸ける情熱を感じずにはいられないだろう。



Contact info: 大沢商会 Tel.03-3527-2682


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