ウブロ/ビッグ・バン[ウニコ&コンプリケーション編]

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.02.18

BIG BANG ALARM REPEATER
実用性に富むプチコンプリケーションの充実

ビッグ・バン アラームリピーター チタニウム セラミック
GMT表示とアラームを搭載した実用的なプチコンプリケーション。アラーム機構はミニッツリピーターのメカニズムに酷似しており、大きなハンマーと調速機構を備える。そのため16秒間、澄んだ音色で時間を知らせることが可能だ。手巻き(Cal.HUB5003)。49石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミック×Ti(直径45mm)。3気圧防水。世界限定250本。469万8000円。

 筆者は以前ジャン-クロード・ビバーに「なぜウブロには限定モデルが多いのか」と訊ねたことがある。彼の答えは明快だった。「バリエーションがあまりないので、限定モデルを増やす他ない」。

 しかし旧BNBコンセプトの吸収により、ウブロはさまざまなムーブメントの開発が行えるようになった。ビッグ・バンの5日巻きトゥールビヨンなどは好例だろう。当初こういった開発はハイエンドに集中していたが、近年はプチコンプリケーションの数が増えてきた。代表例が2015年発表の「クロノ パーペチュアルカレンダー」や「アラームリピーター」だろう。とりわけ面白いのは後者だ。アラームなのにリピーターと銘打ったのは、ハンマーがゴングを叩く構造のため。巻き上げ残量が最大の場合で、最長16秒の間、澄んだ音色でチャイムが鳴り続けるのだ。

 この開発にあたってウブロは外部の開発メーカーに協力を仰いだ。ビバーはその理由をギスベルト・L・ブルーナーに対して「今やウブロの開発リソースは消費されつくしているため」と説明している。しかし見たところ、アラームリピーターの設計はウニコに通じる合理性を備えている。つまりウブロは、外部と協力してこれだけのムーブメントを設計できるほど、開発のノウハウを蓄積したということだろう。

 今や優れた外装に加えて、興味深いプチコンプリケーションも擁するに至ったウブロ。ビバーはブルーナーに対してこう続けている。「2015年は、バーゼルワールドの期間中だけで約1億6000万スイスフランの受注を得た。今後の目標は5億スイスフランだ」。正直に言えば、既存モデルのコスメティックチェンジだけでその売り上げを実現するのは難しいだろう。しかし本作を含む、プチコンプリケーションの充実を考えれば、彼の目標は決して不可能ではなさそうだ。

(左上)左側に見えるのは第2時間帯表示付きのサブダイアル。右はGMT表示ではなくアラーム設定用のサブダイアルである。12時間ではなく、24時間単位で設定できる点が新しい。そしてアラームのオンオフは、7時位置のインジケーターで確認できる。インデックスや針には、視認性の高い白いスーパールミノヴァが採用されている。同蓄光塗料は、7時位置のオンオフ表示にも施された。夜間視認性を重視したのは、この時計が旅行でも使われることを考慮したためか。(右上)セラミックベゼルと、それを留めるビス。立体感を増した45mmモデルは、ビスの形状も44mmモデルに比べて立体的に改められた。また現在のセラミックベゼルは、以前のものに比べてクラックが入りにくいとされる。(中)45mmモデルの構造に準じたケースサイド。なお左に見える赤いスリット入りのプッシュボタンは、アラームのオンオフを司るもの。コラムホイールが回転して、アラームのオンオフを決める。(左下)ケースの質が優れていることは、鏡面に映ったプッシュボタンの影を見れば明らかだ。(右下)興味深い設計を持つCal.HUB5003。16秒もの間、一定の間隔でチャイムが鳴り続けるのは、リピーターと同様の調速ガバナーを内蔵しているためである。