ウブロ/クラシックフュージョン

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.05.21

CLASSIC FUSION CLASSICO ULTRA-THIN
クラシックの意匠に寄り添う薄型モデル

クラシック・フュージョン クラシコ ウルトラ-シン キングゴールド ブラックシャイニー Ref.545.OX.1280.LR
2013年初出。前年発表されたスケルトンダイアルをベースに、新規開発された自社製ムーブメントを搭載。その薄さのため取り回しは極めて良い。手巻き(Cal.HUB1301.4)。23石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約90時間。18Kキングゴールド(直径42mm)。5気圧防水。282万円。

 2011年にジャン-クロード・ビバーは「Watch Market Review」誌にこう述べている。「中国の消費者たちは、富裕さとラグジュアリーの分野に対する経験と知識を得つつあるが、総じて彼らは、ベーシックなデザインを探し求めている。(中略)私が見るのは、より控えめでシンプルなデザインだ。今はクラシックなデザインに回帰するときである」

 彼は決して中国だけを見ていたわけではないが、保守的な中国市場のトレンドが、時計市場全体に及ぼす影響力を最も理解していた。そして世界的な景気の悪化は、幸か不幸か、成熟市場の消費者たちにも、控えめな時計にいっそう目を向けさせることとなった。

 エントリーから薄さと控えめな印象を打ち出したコレクションへの転換。12年に加わった「クラシコ ウルトラ-シン」は、ウブロの方向転換を強く反映したモデルであった。

 搭載ムーブメントは、新規設計のHUB1300系。薄さは2.90㎜しかないが、既存ムーブメントのコンポーネンツを巧妙に転用して信頼性を高めたものだ。〝ピューリタン〟たちの好みは分かれるだろうが、一貫して実用性を重視するウブロらしい設計と言える。

 思い切って薄さを強調したクラシコ ウルトラ-シン。著名なジャーナリストであるアレクサンダー・リンツは本作を次のように評価している。

「私たち愛好家にとって、何ら新しいところはないが、ウブロにとっては明らかに新しい試みだ。今やこのブランドは、控えめなケースと見た目を好む人たちをも魅了しようとしている」(「クロノス」ドイツ版より)。以降ウブロはウルトラ-シンの路線を、他のクラシック・フュージョンにもいっそう敷衍させていくことになる。

(左上)104ページ搭載モデルと比べて、ベゼルエッジの面取りは幅広に処理されている。大きく変わっていないように見えるが、時計の立体感は増した。薄さに立体感を盛り込む手腕は、今やウブロのお家芸である。(右上)ウブロの変化を象徴するのがロゴである。2013年まで、ウブロは長体のロゴを用いていた。しかし14年以降は、写真が示すとおりシンプルで小ぶりなものに改められ、「GENEVE」の文字も廃された。ロゴを拡大する会社は多いが、小さくするメーカーは珍しい。ウブロの成熟を示すポイントか。ダイヤカットされたインデックスなどは、104ページのモデルに同じ。しかし文字盤は高級感を出すためか、ポリッシュしたラッカー仕上げである。(中)ケースサイド。時計は薄いが、ベルトの取り付け部は強固だ。(左下)基本的なケースデザインは、2008年の「ビッグ・バン クラシック」を踏襲する。しかし当時に比べてケースの角が立ったほか、面の歪みも小さくなった。とりわけケースの、ベルト方向に向かって一段折れ曲がる部分は、明らかに角が立つようになった。同じように見えるクラシックシリーズだが、各部のディテールは年々改良されている。(右下)搭載するのは自社製のCal.HUB1301.4。香箱をひとつ増やしてパワーリザーブを約90時間に延長している。