パテック フィリップ/年次カレンダー

FEATUREアイコニックピースの肖像
2019.02.05

ANNUAL CALENDAR[Ref. 5146]
指針表示を継承する現代スペック機

年次カレンダー Ref.5146

年次カレンダー Ref.5146
最もベーシックな指針表示式の年次カレンダー。Ref.5035、5036、5056に比べてケースは2mm拡大した。自動巻き。36石。自動巻き(Cal.324 S IRM QA LU/399)。36石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径39mm)。30m防水。452万円。

 大ヒット作となったRef.5035の改良版である5036と5056。その後継機にあたるのがRef.5146である。初出は2005年。ベースムーブメントがキャリバー315からキャリバー324に進化したほか、6時位置の24時間表示がムーンフェイズに改められ、12時位置にはパワーリザーブ表示が備わった。

 パワーリザーブこそ短いものの、キャリバー324は傑出した自動巻きだった。もともとの基本設計は、1981年のキャリバー335。91年には改良版の315となり、2001年には324となった。315から324への改良点は主に5つ。主ゼンマイのトルクを増やすことで、振動数が2万1600から2万8800振動/時に向上した点。結果、動態精度は改善された。また、シリンバー製のスピロマックスヒゲゼンマイの採用により、耐磁性能と耐衝撃性も向上した。細かい改良だが、自動巻きのベアリングはセラミックスに、輪列の4番車も、通常のNIHSから抵抗の少ないSPYR歯車に置き換えられている。針合わせの感触をいっそう滑らかにするため、筒カナの歯数を増やしたのも、見逃せないモディファイだ。

 年次カレンダーに加えられた改良も妥当である。324の巻き上げ効率は高いが、パワーリザーブは48時間しかない。そのため2日間置くと時計は止まってしまう。止まるたびにプッシャーを押してカレンダーを調整するのは手間だ。そのためパテック フィリップは、主ゼンマイの残量を確認できるよう、12時位置にパワーリザーブ表示を設けた。

 筆者の私見を言うと、Ref.5146は最も望ましい年次カレンダーのひとつだ。使い勝手の優れたメカニズムに、高い視認性、そしてパテック フィリップらしい良質な外装の組み合わせは、実用時計の枠を超えた魅力に満ちている。

年次カレンダー Ref.5146

(右)ケースの拡大に伴い、文字盤の面積もわずかに広がった。そのためインデックスは長くなり、視認性は一層良くなった。文字盤はサテン仕上げ。下地の処理は密でスレートの発色も鮮やかだが、銀の印字は、黒ほど優れてはいない。針はダイヤカット、インデックスはポリッシュ仕上げの18Kゴールド製だが、文字盤のツヤのコントロールが上手いため、強い光源下でも、時間を容易に読み取れる。(左)筒車から中間車を介して駆動される6時位置のムーンフェイズ。その下には日付表示がある。Ref.5035と5146の大きな魅力は、日付表示と文字盤のクリアランスの狭さ。日付表示が文字盤ギリギリにあるため、日付が読み取りやすい。

年次カレンダー Ref.5146

ケースサイド。直径が拡大したほか、内側をへこませたコンケーブベゼルは、標準的な形状に変更された。

年次カレンダー Ref.5146

(右)ミドルケース。Ref.5035と比較すると、裏蓋にかけて立体感がわずかに強調された。加工精度が上がった結果、ケースの鏡面には、歪みがほぼない。(左)Ref.5146に優れたパフォーマンスをもたらすのが、自動巻きのCal.324である。パワーリザーブは短いものの、姿勢差誤差は小さく、磁気帯びもしにくい。リュウズを回したときの感触は緻密で、ローター音も高級機らしく抑えられている。