ヴァシュロン・コンスタンタン、レ・キャビノティエの技術を結集させたポケットウォッチを披露

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2021.10.08

ヴァシュロン・コンスタンタンのユニークピースを手掛ける部門「レ・キャビノティエ」が、依頼主の希望を具現化した、ひとつの特別なポケットウォッチを製作した。ウエストミンスターのチャイムを鳴らすグラン・ソヌリやトゥールビヨンを搭載した、豪華絢爛な芸術作品である。

レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ

ヴァシュロン・コンスタンタン「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ - ヨハネス フェルメールに敬意を表して」
手巻き(Cal.3761)。58石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約80時間。18KYGケース(直径98mm、厚さ32.6mm)。非防水。ユニークピース。


ひとりのオーナーに捧げるユニークピース

 ヴァシュロン・コンスタンタンが、2021年のハイライトを飾る新作を披露した。今回発表された「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ - ヨハネス フェルメールに敬意を表して」は、依頼主の要望に沿ってコンプリケーションやユニークピースを製作を行うための特別な部門である「レ・キャビノティエ」によって製作されたものだ。

レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ

 レ・キャビノティエに属するウォッチメーカーは、熱心な時計コレクターの夢を実現するための挑戦に取り組んだのだ。この作品の製作を依頼した人物が望んだのは、時計製造技術と美的デザインの双方が傑出していて、18世紀の高貴な時計製作の伝統的な要素を反映したポケットウォッチだった。

 2013年にこのプロジェクトが始まり、約8年間の歳月をかけて完成した「レ・キャビノティエ・ウェストミンスター・ソヌリ - ヨハネス フェルメールに敬意を表して」は、依頼主の「理論上は入手不可能なものを絶えず求めることに情熱を注ぐ」という大きな期待に応えた。そして新しい挑戦や、それによって得られた研究結果や、絶え間ない意見交換に満ちあふれた、オート・オルロジュリーの傑作とも言える作品である。

キャリバー 3761

 本作に搭載されているキャリバー 3761は、806個ものパーツから構成された、複雑さを極める新開発の手巻きムーブメントだ。1万8000振動/時というロービートで1分間に1回転させるトゥールビヨンで調速し、グラン・ソヌリとプチ・ソヌリにミニッツリピーターを組み合わせている。ヴァシュロン・コンスタンタンが2015年に発表した、史上最も複雑なポケットウォッチである「リファレンス 57260」を手掛けた時計師のチームによって開発され、ウエストミンスター・チャイムを奏でるという音楽性も要求された。

「グランおよびプチ・ソヌリを搭載し、5本のハンマーによって5本のゴングが連なるミニチュア・エナメルで装飾した、本物のウエストミンスター・チャイム・ポケットウォッチを自分のコレクションに加えることを長らく夢見ていた」という依頼主の意向は、見事に反映されたのである。

グランソヌリ

完璧な美しい音を生み出すため、ゴングのチューニングは特に入念に行われた。5つのゴングで鳴らすすべてのゴングが正しい音階で鳴らすように、ヤスリによる修正が行われた。

 毎正時の時間数とクォーターを打ち鳴らし、15分、30分、45分の時に時間数を打ち鳴らさない「プチ・ソヌリ」モードと、クロック同様に15分、30分、45分の際に自動的に打ち鳴らす「ソヌリ・モード」を切り替えることができ、どちらの場合でも毎時を告げるカリヨンを鳴らすようになっている。

 また本作は「ナイト・サイレンス・モード」という特別な機能を搭載しており、依頼主が設定した午後11時から午前9時の間にはチャイムが作動しないようになっている。これによって依頼主は夜を静かに過ごすことができると同時に、動力の節約にも役立つ。加えて「サイレンス」モードは、すべてのチャイム機能を停止させることが可能だ。

 搭載する機能はもちろんだが、細部にまで施された仕上げも傑出している。あらゆるパーツが手作業で仕上げられ、エングレービングで植物を描いたテンプ受けをはじめ、ダイヤモンドペーストやバフで鏡面に磨かれたブリッジ、コート・ド・ジュネーブ仕上げを入れガルバニック処理を施したプレートなど、贅を尽くした装飾が目を見張るほどの美しさである。

グランドソヌリ

入念な手仕上げの例は、角穴車やふたつの香箱車に施された装飾だ。歯車の表面にサンドブラスト処理とサンバースト仕上げを加え、その後に歯先の艶出しが行われた。これは古くから時計製造で取り入れられてきた手法であり、この仕上げだけでも約1週間の根気強い作業が求められたという。

アニタ・ポルシェ作「真珠の首飾りの少女」

 本作を製作するプロジェクトの当初から、依頼主は「オフィサータイプのケースバックにエナメル職人のアニタ・ポルシェにミニチュア・エナメル(細密画)を描いてもらうこと」を希望していた。直径98mmのケースに収まるキャンバスに描かれたのは、1665年ごろに完成したヨハネス フェルメールの代表作「真珠の首飾りの少女」だ。

細密画

 通常の腕時計に比べて、大型のポケットウォッチである本作に細密画を描くのは、極めて困難なことである。大きいぶん、ごくわずかな違いも明白に目立ってしまうため、より一層厳密に描く器用な技が求められる。少女のターバンの部分に、エナメルを1層描くだけで、少なくとも2週間を要するということからも、この作業の難しさが分かるだろう。

アニタ・ポルシェ

この難題に挑戦したのは、著名なエナメル職人のアニタ・ポルシェ。完璧なまでの細密画を完成させることができる職人はひと握りしかおらず、技術力と忍耐力が必要不可欠だ。

絵画の額縁となる彫金

 18Kイエローゴールド製のオフィサーケースに施された彫金装飾のスタイルは、フェルメールの絵画との調和を図るため、ヴァシュロン・コンスタンタンの彫金職人によって入念に研究された。依頼主との複数回にわたるディスカッションを経て、渦巻きを成すアカンサスの葉と、中心にパール状の模様を添えた花だった。この装飾は、クラシカルで女性的な装飾が「真珠の首飾りの少女」に見事に調和している。

エングレービング

 立体的なエングレービングは、ケースの表面にケガキ針で装飾モチーフの輪郭を描くことから始まる。おおよそのデザインを描いた後は、モチーフの周囲を平たく掘り下げ、ビュランと呼ばれる彫刻刀で立体的に形を作り出してゆく。鏡面とマットな質感を使い分けることで、よりモチーフを際立たせ、陰影を強調させている。

エングレービング

ポケットウォッチのケースで象徴的な“ボウ”を飾るのは、咆哮する2頭のライオン。18Kイエローゴールドのブロックから彫り出された驚くほどリアルなモチーフには、類まれな職人技が表れている。


Contact info: ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755


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