【80点】オリス/ビッグクラウン プロパイロット アルティメーター

FEATUREスペックテスト
2015.06.03

フォールディングクラスプは、見た目だけでなく、機能も飛行機のシートベルトを踏襲する。

コックピットのデザインを踏襲
セスナから見下ろせば、湖の散在するやや起伏のある風景が広がっていた。大地にはまだ雪が残っている。飛行場に到着するまでまだ数分ある。この時間を利用して、もう一度、時計を観察してみよう。ストラップやクラスプ同様、文字盤とケースもひと目でパイロットウォッチと分かるデザインである。ステンレススティール製ケースは全体的にサテン仕上げが施され、ベゼルにはタービンのような刻み目が付いている。高度計用のリュウズには、コックピットの「Altimeter Setting(高度計規正)」用操作エレメントのように「ALT SET」とエングレービングされ、刻まれた部分には赤い塗料が流し込まれている。ねじ込み式リュウズはふたつとも扱いやすく、操作も簡単である。ストップセコンド機能と日付早送り調整機能が装備されていることから、時刻合わせと日付調整は正確かつ素早く行うことができる。加工品質も高く、加工の痕跡はまったく確認できなかった。
ビッグクラウン プロパイロット アルティメーターは、時刻の視認性が素晴らしく、コックピット内の計器類と見比べると、蓄光塗料を塗布した針やマットブラックの文字盤のデザインがコックピットの雰囲気に溶け込んでいることに気づく。
ビッグクラウン プロパイロット アルティメーターを駆動するのは、セリタSW220をベースとするオリスの自動巻きキャリバー733である。セリタSW200系は、特許権の期限の切れたETA2824の代替ムーブメントで、ETA2824同様、堅固で信頼性の高いムーブメントである。着用時の日差はわずかプラス2秒/日と、納得の高精度。歩度測定機で行ったテストでも結果は優秀で、計算上の平均日差はプラス3・8秒/日であった。最大姿勢差が7秒/日というのも、それほど大きな開きではない。振り角も安定しており、水平姿勢(文字盤上・文字盤下)から垂直姿勢(3時上・3時下・3時左・3時右)に変わる時に若干、振り落ちが観察されたに過ぎない。
セスナはゆっくりと下降の準備を始めた。ビッグクラウン プロパイロット アルティメーターは新しい高度を表示するのに少し時間がかかり、セスナに備え付けられた高度計よりも500フィート分遅れて表示されたが、数秒後にはコックピットの計器と同じ正しい高度を示した。高度計のレスポンスがやや遅いこの時計は、スカイダイビングにはあまり向いていないと言える。

残念ながら、空を飛ぶことは贅沢な遊びである。セスナ182で1時間飛ぶのに会員価格で235ユーロ支払わなければならない。それに比べ、ビッグクラウン プロパイロット アルティメーターは慎ましい。39万円(テキスタイルストラップ)という価格は、高度な技術を要する機械式高度計を搭載した腕時計としては驚きの低価格である。また、オリスの新型パイロットウォッチのエントリーモデル、ビッグクラウン プロパイロット デイトは17万円(テキスタイルストラップ)と、これも極めて手頃な価格である。これに、22万円を追加で支払えば、6㎜大きいケースの中に機械式高度計を載せた自動巻きムーブメントを内包した独創的なパイロットウォッチを入手することができる。

次第に飛行場へと近づき、管制塔に無線で着陸の連絡を入れた。管制塔からは、着陸用滑走路の入り口にいる鳥の群れに注意するよう、指示が届く。カラスが飛び立ち、我々は無事に滑走路に着陸した。セスナから見た美しい眺望と、パイロットのための比類なきコンプリケーションを備えた、フライトのお供にぴったりなパイロットウォッチの印象は、脳裏にまだ鮮明に焼き付いている。