【89点】ロレックス シードゥエラー4000

FEATUREスペックテスト
2006.03.03

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ヘリウムガス排出バルブは、カプセル内蔵式とは異なる仕組みを採用する。デイト部分の風防は、サイクロップレンズ(拡大鏡)になっていない。高い水圧にも耐えるため、このような構造となっているのだ。

「余剰物質を外へ出す」ダイバーズウオッチの進化

 そして1967年からはフランスの潜水探査専門企業コメックスと共同開発したヘリウムガス排出バルブを搭載、これは後に発売されたシードゥエラーにも装備された。海亀の体には体内の余剰な塩分を排出する塩類細胞という組織があり、太古からの進化の過程でこれが発達したが、ダイバーズウォッチも「余剰物質を外へ出す」という同様な進化をたどったのは興味深いところだ。シードゥエラーは長い間、比類なきプロフェッショナルダイバーズウォッチとして君臨してきた。

 その外観はさながら海中を舞う亀のごとき気品が漂い、中身は奥ゆかしく白黒でまとめられた装甲ボディにより、あらゆる危険から護られている。そしてやはり海亀と同じく水陸両棲。このモデルの進化はさすがに生物の進化ほどは時間がかかっていないが、それでもかなりゆったりしたテンポで歩み続けている。長い年月を越えてもなお変わらぬスタイルが、ロレックスの人気のキーポイントであることは間違いないだろう。

不変のスタイルをキープしつつ、各部をアップデート

 しかしことさら大きく話題にはならないものの、不変のスタイルをキープしつつも主要部分は絶えず改良が進められてきた。シードゥエラーについていえば、近年は技術的な質の高さのみならず、時計全体の気品がどんどん向上している点に注目したい。文字盤の夜光インデックスはホワイトゴールドで縁取りされ、ベゼル上の夜光ドットはガラスでガードされるようになった。また、“壊れない”といわれる従来のドーム型プラスチック風防は、フラットで傷に強いサファイアガラスに替えられている。

 そうこうしているうちに、ケース側面だけではなくブレスレットの側面まで鏡面仕上げになった。併せて、この2~3年でブレスレットのエンドピースも改良されマッシブになった。ロレックスのファンがいうところのSEL(ソリッドエンドリンクス)というものだ。今回の最新モデルではラグに手が加えられたのがポイントだろう。バネ棒の通し穴を貫通させていないため、気品がより高められている。

高い評価の自動巻キャリバー3135

 さらに、今までよりも長い潜水が可能になったのは、ブレスレットが改良されたことも一因である。留め具の端に被せてロックするパーツが加わり、不意に開くことなくしっかり固定されるようになっている。もちろん、スチールとガラスの甲羅の下も着実に進化してきた。1989年以降、シードゥエラーの内部では、赤くアルマイト加工されたおなじみの自動巻きキャリバー3135が動いている。

 多くの時計師から最良の構造と高く評価されているムーブメントだ。キャリバー3135はムーブメントのサイズ、テンプ受け、ブレゲヒゲゼンマイ、マスロットリングによるテンプの歩度調整システムなど、丁寧な作りが随所に見られるが、これらはどれも長年の精度維持に文字どおり役立っている。そして快適な使用感は、ストップセコンドや日付が瞬時に切り替わる構造にも支えられていることを、見過ごすわけにはいかない。