時計ライターの佐藤しんいちが、注目の2026年新作として、seconde/seconde/(セコンド/セコンド/)とコラボレーションしたシチズンコレクション「TSUYOSA」Ref.NJ0157-81Lを紹介する。ポイントは、TSUYOSAの名称から“力”や“強さ”を想起したセコンド/セコンド/が、デザイン要素として取り入れた刀。TSUYOSAについて振り返りつつ、刀のデザインの分針や一刀両断されたインデックスにつながる本作のテーマについて深掘りしてゆこう。

Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2026年2月XX日公開記事]
シチズンコレクション「TSUYOSA」にseconde/seconde/とのコラボモデルが登場
2026年新作時計のうち、ライターの佐藤しんいちが注目するシチズンコレクション「TSUYOSA」×seconde/seconde/(以下セコンド/セコンド/)のコラボレーションモデル。両者のタッグは今回が初となり、シンプルなTSUYOSAのデザインにセコンド/セコンド/の世界観が落とし込まれている。

自動巻き(Cal.8210)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。5気圧防水。7万3700円(税込み)。
「TSUYOSA」についておさらい
ベースとなるシチズンコレクション TSUYOSAは、元はシチズンが海外で展開してきたメカニカルモデルであった。機械式腕時計としては手の届きやすい価格帯でありながら、シンプルでさまざまなシーンに用いやすいデザインと、信頼性で定評のあるシチズンの自動巻きムーブメントCal.8210が搭載されている点が高く評価され、人気を集めていた。このような評価を受けて、日本での販売を求める声が大きくなったのか、2023年に正式展開が開始され、現在では“手に取りやすい機械式時計”として人気を博している。

2025年にTSUYOSAに加わった、直径37mmケースのコンパクトなモデル。自動巻き(Cal.8210)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径37mm、厚さ11.5mm)。5気圧防水。各6万6000円(税込み)。
そんなTSUYOSAのデザインは、ケースサイドからブレスレットにつながるラインや、4時位置のリュウズ、エッジの効いたケースと円形ダイアルとのコントラスト、そしてバー形状のインデックスおよび時分針で構成されたシンプルな文字盤が特徴である。各部のバランスが注意深く調整されて均整が取れており、コアな時計ファンも魅力を感じる仕上がりだ。シーズン毎に新色が発表されており、カラフルなバリエーションの中から選ぶことができる点もうれしい。
セコンド/セコンド/とのコラボレーションモデルが誕生
そんなTSUYOSAの新作として2026年2月20日に発表されたのが、フランス・パリを拠点とするアーティスト兼時計のカスタマイザーであるロマリック・アンドレが手掛けるセコンド/セコンド/とのコラボレーションモデルだ。セコンド/セコンド/はTSUYOSAの名前から“力”や“強さ”を連想し、その象徴として分針に刀のモチーフを取り入れて表現している。
さて、セコンド/セコンド/は、伝統的な職人技と現代的なデザインのコントラストを際立たせる手法が評価されており、有名ブランドと数多くのコラボレーションを行っている。いずれのコラボモデルも、ユーモアやウィットが効いており、アニメやゲームを思わせるドット絵風にピクセル化されたモチーフが多く用いられる点も特徴だ。
本作でもこのようなデザインアプローチが見て取れる。刀のモチーフはピクセル化されており、どこかノスタルジックで、ポップな印象もある。そして、最大の特徴となるのがインデックスで、分針が回転してインデックスを一刀両断したかのようなデザインとなっている。

本作のテーマと、ブルーを基調としたデザインのディティール
本作のテーマは、“Being smaller has never stopped Minutes from slicing Hours into pieces”であり、翻訳すると「たとえ小さく弱く見えても、大きく立ちはだかる困難を乗り越えることができる」というメッセージである。このメッセージはケースバックにも刻まれている。
セコンド/セコンド/はこのテーマを、小さな存在である“分”を指し示す分針が、大きな存在である時間の象徴として12時間表示のインデックスを斬るというデザインにつなげており、本作は人生の困難にも立ち向かう力や勇気をユーモラスに、そして視覚的に表現している。

斬られたインデックスは、居合斬りのように勢いよく斬られたかのような躍動感がある。ピクセル化された刀はゲームの世界を想起させるもので、インデックスを斬った太刀筋がエフェクトとして描かれていることで、ここでもゲームの世界を感じさせるような仕上がりだ。多くのゲームでは、弱い存在であった主人公が苦難を乗り越えて、大きく立ちはだかる存在を打ち倒すことがストーリーの主軸となるので、本作のテーマと、セコンド/セコンド/が好むピクセル化のアプローチとが呼応しているのだろうか。本作のメインカラーはブルーで、“ジャパンブルー”を想起させる色合いだ。鮮やかさがあり、明るすぎない調色によってシックな印象もある。ビジネスシーンにも取り入れやすそうで、シックでありながら、さりげなく遊び心を加える選択肢として面白そうだ。
標準的なサイズ感と良好な着用感
本作のケース径は40.0mmで、厚さは11.7mm(いずれも設計値)である。現在のインフォーマルウォッチの標準となる直径で、市場で広く受け入れられるものと言えるだろう。着用してみると、コンパクトなモデルを好む筆者はやや大きめと感じたが、ラグが短いこと、ブレスレットの可動範囲が広いことから、手首回りにフィットしたサイズにブレスレットを調整することで、良好な装着感が得られるだろう。リュウズが4時位置に配置されていることから、リュウズが手の甲に当たってしまうことがなく、すっきりとした見た目につながっていて、着用時のコンパクトな印象にも寄与している。
ブレスレットは、かまぼこ状のリンクがつながった形状で、丸みを感じさせるデザインだ。エッジの効いたケースデザインとは対照的で、TSUYOSAの個性となっている。リンク部分には適度に遊びがあり、こちらもフィット感に良い影響を与えていそうだ。
機械式腕時計の魅力を楽しむ入り口として最適な「TSUYOSA」
本作は7万3700円(税込み)で販売される。TSUYOSA自体は本作を含めて7万円台以下となっており、機械式時計の中では手を出しやすい価格帯である。搭載される自動巻きムーブメントのCal.8210は約42時間と、毎日使うのであれば必要十分なパワーリザーブを備え、さらには1種耐磁時計という、磁気を放つ機器が多い現代において心強い性能を備える。パワーリザーブについて筆者の個人的な意見を述べれば、本作くらいのパワーリザーブを備えるモデルを安定して稼働させる経験を積めば──普段の生活と主ゼンマイの巻き上がり量の関係を把握して、巻き上げ不足で止まらないコツをつかめば──機械式時計との付き合い方がうまくなるので、そういった意味で機械式時計の入り口として最適であると提案したい。
本作に限らず、シチズンのTSUYOSAに注目いただき、魅力的な1本を選ぶことができれば幸いである。



